「合成着色料」よりも「天然着色料」のほうが、実は怖い!?

「食品添加物」「合成着色料」が入っていると聞けば、誰もが「食べたくない」「体に悪い」と思うだろう。書店に行けば「発がん性がある」「食べてはいけない!」と、危険性を煽る書籍も並び、食品添加物は人体にとって“悪者以外の何ものでもない”という考えは、もはや常識に。もちろん、私自身も子どものころから「添加物の入った食べ物は、ダメ!」と言われ続けてきたし、ずっとそう思ってきた。しかしながら、そんな常識をガラリと覆されてしまったのだ、この本に。

 

否応が無しに悪者にされている食品添加物だが、“危険、危険”と言われ続けるにも関わらず、消えることがないのはなぜだろう。そして、得体が分からない化学的な名前ゆえに不気味だが、その正体と効果を知れば実はそれほど恐ろしいものでもないし、存在し続ける理由も納得なのだ。

防腐剤を使わないほうが、よっぽど危険

確かに、食品添加物の中には大量に摂取をすれば体に害を及ぼすものもあるという。では、なぜ使用するのか。それにはやむを得ない理由があるからだ。
例えば、ハムやソーセージの類は加工時にボツリヌス菌という細菌が入り込む危険性がある。万一この菌が混入してしまい中毒が起これば、かなりの確率で人を死に至らしてしまうのだ。現在、ハムやソーセージには、保存料としてよく使われる「亜硝酸ナトリウム」が1㎏あたり最大70㎎使われているが、その量はハムやソーセージを生涯毎日食べ続けても体を蝕む量ではない。
本書によると食品添加物の安全基準はかなり厳しく、たとえ基準値の100倍を摂取しても、体に影響が出るとは到底考えられないレベルで安全域を設定しているのだという。つまりボツリヌス菌による食中毒のほうがよっぽど致死性が高く、比にならないほどに恐ろしい。もし、食品保存料がなければ、私たちがハムやソーセージを食べることはなかっただろう。

化学調味料は、アミノ酸サプリメント!?

食品ラベルに「防腐剤」「pH調整剤」などと書かれていれば、言葉だけでなんだか怖い印象を受けてしまう。化学調味料(※現在は「うま味調味料」という言い方を推奨)もまた、なんだか得体の知れない粉に思えるが、その正体は実はアミノ酸だ。同じアミノ酸を使った食品でも「アミノ酸サプリメント」と聞けば、たちまち健康に良い食品になってしまうから不思議。このように、名称に惑わされていることも多いのだ。

「天然着色料」のほうが、実は怖い!?

「人工的なものは有害だけど、天然なら無害」と思っている人は少なくない。しかし、「そんな考えは真っ先に捨ててほしい」と著者は言う。実は、過去に問題があったのは天然のほうが多いのだとか。理由はアレルゲンとなる物質が除去しきれなかったり、農薬が混入してしまうリスクがあるから。例えば、以前、ハムやソーセージに使われていたアカネ色素という天然色素は「安全性に問題があり」ということで、現在は使用禁止になっている(※禁止になったとはいえ、実際に人体に被害がでたわけではない)。食べ物だけでなく、私たちは「天然は安心」「植物由来は安全」と認識する傾向にある。その先入観が、真実を見落としてしまう可能性があることも覚えておきたい。

悪者ではないが、決して正義でもない

著者によると、食品に使われている添加物そのものが体を蝕む可能性はまず、ない。しかしながら、危険が潜んでいない、というわけではない。もちろん、尋常でない量を摂取すれば体に害を及ぼす可能性があるのは当然だ。そして、万能な保存料のおかげで安全で美味しい食品が手軽に手に入るようなったり、化学調味料をひとふりするだけで、栄養がさほどない食品が抜群に美味しく食べられるようになったことで、低栄養やカロリー過多な食生活を手助けしてしまっていることも否定できない。その結果が肥満を招き、大病を発症させてしまうこともあるのだ。

本書は食品添加物などを非難するわけでもなければ、推奨するわけでもない。「食」に関する正しい知識を分かりやすく教えてくれる。真実を知ったうえで、食べるか、食べないかを判断するのはもちろん自分次第だが、「添加物は絶対口にしない!」と神経質になっている人や「少々高いが、健康のためには仕方ない」とストレスを感じながら無添加食品を選んでいる人には、ぜひ一度読んでもらいた一冊だ。

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