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老いた親は「同居を望まない」という調査結果

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6割以上の人が、介護が必要になっても「自宅にとどまりたい」と考えている。内閣府による「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」によって明らかになった。

東京都福祉保健局でも、高齢期の同居にまつわる意識調査をおこなっている。「子や親族の家に移りたい」と考えている65歳以上の高齢者は、一人暮らし世帯では全体の5%、夫婦の二人世帯では1%だった。

「子の負担にはなりたくない」という親心だけではない。老親が自宅暮らしを望むのは、「住み慣れた生活圏でこそ幸せに暮らし続けることができる」という、ごく当りまえの心情によるものだ。同居した場合、子や孫たちとの価値観や生活リズムのちがいに悩むことが少なくない。

親とは「遠距離恋愛」が理想

親には一人暮らしをさせなさい』(三村麻子・著/永岡書店・刊)によれば、老いた親が元気なうちは「遠距離恋愛」が理想の関係だという。毎日は会えないけれど、でも毎日相手のことを愛しく想っている。老親と適切な距離をたもっておくことで、やがて介護や看病をするときに十分な愛情をもって接することができる。

「老親とは遠距離恋愛であるべし」というポリシーは、実感としてうなずける。わたしの親世代が実践しており、確かにうまくいっているからだ。

わたしの母は次女であり、わたしの伯父伯母にあたる長男と長女がいる。シベリア抑留経験のある祖父は10年ほど前に亡くなった。3人の子を立派に育てた80代後半の祖母は、山林や田畑に囲まれた過疎の村で、今も一人暮らしをしている。

祖母が別居を選んでいる理由のひとつとして、息子や娘たちの「つれあい」との関係が良くないことがある。だが、いちばんの理由は先祖から受け継いだ山林や田畑、土地付きの屋敷を守りたいという強い思いによるものだ。(家は築100年以上であり過疎地なので評価額はタダ同然です)

わたしの親世代は、知ってか知らずか『親には一人暮らしをさせなさい』で紹介されている介護や死後にまつわる必要な備えをおこなってきた。母と伯母が、ふたりとも介護支援専門員(ケアマネージャー)として働いているせいかもしれない。勤め先で多くの具体例を見ているわけで、その知見が実生活で活きている。

親の大切な交友関係を知っておく

わたしの伯父は、長男であるにもかかわらず実家に寄り付こうとしなかった。結婚したあとは、あからさまに妻の実家を優先していた。そのくせ、戸建てを新築するときや息子が進学するときだけは数百万円のお金をせびりに来ていた。親族のなかではえらく評判が悪かった。

ダメ長男の烙印を押されていた伯父だが、なぜか実家の年賀状作業だけは代行を続けていた。ワープロやパソコンのない時代は「プリントごっこ」を駆使していた。じつは、伯父の「年賀状代行」には意味があったのだ。

唐突に「交友関係を教えて」などと言うと、「なんだ、葬式の準備でもするのか」と疑われかねませんので、たとえば親に代わって年賀状の表書きをパソコンで印刷してあげるのはいかがでしょうか。
(中略)
喪中はがきなどと照らし合わせて年末ごとにアップデートさせていけば、交友関係の変化にも気付くでしょう。また、いざ親が亡くなった際に訃報を作成するときも、このリストをそのまま使えば良いので、「誰に連絡すればいい?」などと慌てずにすみます。

(『親には一人暮らしをさせなさい』から引用)

わたしの伯父は、老親の交友関係リストを把握するために年賀状代行だけは欠かさなかったというわけだ。真意を本人にたずねたことはないが、いずれにせよ長期的視点からすれば正しい。

60歳以上の年輩の人たちですら年賀状を辞めてしまったという話を、わたしの周りでも見たり聞いたりする。しかし、人のつながりほど大切なものはない。高齢期には認知症によるもの忘れがあるし、闘病生活において友人や親しい知人のお見舞いは生きる励みになるはずだ。

週1、2回は電話で連絡を取り合う

たとえ遠くに住んでいても、親に対して関心を持っていれば、心配には及びません。たとえば、週に1、2回は電話で連絡を取り合うことで、コミュニケーション不足はある程度解消できるでしょう。
(中略)
認知症の初期症状を見逃さないためにも、最低でも年に3、4回以上は顔を合わせましょう。

(『親には一人暮らしをさせなさい』から引用)

わたしの祖母は80代後半だが、がんばって携帯電話(ガラケー)のメール機能を習得した。毎日かならず1回、子どもたち3人に電子メールを送信している。「おはよう」「きょうも元気です」「ちょっと疲れています」「カゼをひいたかもしれません」など、わが子たちに簡単なメッセージを送ることによって生存報告をおこなっている。

消防白書によれば、住宅火災による死者の7割は65歳以上だという。高齢者の一人暮らしにおいて「火事」は大きなリスクだ。わたしの祖母が住んでいるのは築100年ちかい木造住宅だが、オール電化への置き換えを完了している。

火事と同じく、夏の熱中症も高齢者に多い。ケアマネージャー職に従事している2人の娘たちは「暑い日にはかならずエアコンの冷房をつけてね!」と、祖母に言い聞かせている。むかし気質の祖母にとって「電気代」は可能なかぎり節約すべきものだから、猛暑の日にも扇風機で済ませようとするからだ。

冬にも「エアコンの暖房をケチってはダメだよ」と言ってある。祖母が住んでいる村で、むかし凍死した老婆がいたからだ。野菜くずもムダにしない倹約家として有名だったが、大雪が降った2月のあるときに部屋のなかで凍死しているのが見つかったことがあった。寒い夜なのに暖房を使わなかったせいだ。

当コラムでは紹介しきれなかったが『親には一人暮らしをさせなさい』には、超高齢化社会における実践的なアドバイスがたくさん書いてある。「絶対に介護離職をしてはいけない」「親のお金は遺産ではなく介護費用と考える」「親が元気なうちに任意後見契約を結ぶ」など、できるだけ「つらい介護」にしないためのノウハウを学ぶことができる。

(文:忌川タツヤ)

親には一人暮らしをさせなさい

著者:三村麻子
出版社:永岡書店
“看取りの水先案内人”として、高齢者を支える多くの家族の相談にのってきた著者の「70歳を過ぎた親の生活をサポートする」本。読めばふっと心が軽くなり、今後への心構えができます。
第1章 なぜ「親に一人暮らし」なのか?
第2章 親が元気なうちにしておくべきこと
第3章 離れて暮らす親との付き合い方
第4章 “ちょっと困った親”の処方箋
第5章 親の体が不自由になったら
第6章 早めの“介活”で家族みんなが幸せに

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