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硫黄島の戦いから生還したおじいちゃんの話

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硫黄島の大激戦に私が関心を持ったのは2006年に公開された映画『硫黄島からの手紙』を観たときだった。

学生時代、歴史はあまり得意ではなかったし、また、かなり昔のことだが、学校の授業では硫黄島の戦いはさらりと習った程度の記憶しかなかったのだ。

クリント・イーストウッド監督のこの映画はフランスで大ヒットした。フランスで暮らしていた時期なので、娘と一緒にフランス語吹き替え版で観たのだが、とてもいい映画だと思ったし、また感動もした。

パリジェンヌは二宮君に夢中になった

『硫黄島の手紙』の公開のあと、パリの地下鉄の中や街角で、私は“嵐”の写真集を頬を染めながら見入るパリジェンヌを何人か目撃した。映画の中で西郷陸軍一等兵を演じた嵐の二宮和也君に多くの若きパリジェンヌたちが恋してしまったのだ。実在した兵隊ではなかったそうだが、渡辺謙さんが演じた栗林中将と共にこの映画の要の人物として描かれていた。

馬術の金メダリスト・バロン西と愛馬ウラヌス

馬好きの娘が注目したのは、伊原剛志さんが演じた西竹一陸軍中佐だった。映画の中では硫黄島に愛馬を連れて行ったように描かれているが、実際には、彼の愛馬ウラヌスは東京の馬事公苑で余生を送っていたそうだ。

バロン西こと西竹一が1932年のロサンゼルスオリンピックの馬術障害飛越でウラヌスと共に金メダルを取ったのは実話で、現在に至るまで日本人がオリンピックの馬術競技でメダルを獲得した唯一の記録だ。

西中佐は硫黄島で戦死したが、その1週間後にウラヌスも西の後を追うように息を引き取ったのだいう。西中佐が肌身離さず持っていたというウラヌスの鬣(たてがみ)は、北海道中川郡本別町の歴史民族資料館に今も大切に展示されているというから、いつか是非、見に行きたいと思っている。

硫黄島から生還した日本兵がいた!

ひいじいちゃんは硫黄島の兵隊だった』(かなわ静・構成、画 山口周一・原話学研プラス・刊)は、映画よりももっと詳しく、もっとリアルに硫黄島の戦いを教えてくれる貴重な本だ。

小学4年生、10歳のゆきおは、先生から日本が戦争をしていた時、どんなだったかを聞いてくるという宿題が出たため、お母さんのお父さんのお父さんで、94歳になるひいじいちゃんに話を聞くことになった。

ひいじいちゃんこと、山口周一氏は栗林中将の直轄部隊の兵隊として昭和19年に硫黄島に送られた。南洋の小島には22000人もの日本兵が送り込まれたそうだ。

ひいじいちゃんは一日中、手堀で岩を削り、壕をつくった苦労話をゆきおに聞かせる。

「硫黄島は、東の日の出浜から、西の釜岩まで三キロ、たった三キロしかねえ。北海岸から摺鉢山までは、南北六キロだ。こんな小せい島に、こんなに大勢の兵隊を送りこんだなんて、普通には考えられねえ」

(『ひいじいちゃんは硫黄島の兵隊だった』から引用)

ひいじいちゃんは捕虜となりアメリカへ行った

昭和20年の2月になると硫黄島はアメリカの軍艦に包囲され。逃げることも出来なくなった。2万を越す日本兵は地面の下で死を覚悟し、決戦の秒読みをしていたそうだ。

「兵隊はみな、腹がへって、のどがかわいて、ほんとのところ戦どころではなかった。」

(『ひいじいちゃんは硫黄島の兵隊だった』から引用)

ひいじいちゃんは、のどの渇きに耐えられず、勇気を出して、ひとりで真夜中に皆の水筒を下げて海の水を汲みに行った。が、そこで、米兵に銃を突きつけられしまった。武器は何も持たず、自決用の手榴弾も壕に置いてきてしまったひいじいちゃんは、当時はいちばん不名誉とされた捕虜になってしまったのだという。

捕虜となった山口氏はその後、グアム、ハワイ、サンフランシスコ、カリフォルニアへと順に送られたそうだが、拷問に合うこともなく、食事もきちんと与えられ、労働すれば賃金ももらえるという捕虜生活だったと語っている。

ふるさとへの帰還

「海の向こうに富士山がぼんやり見えて、初めて、日本に向かっているってわかった。日本に本当に帰れるんだって信じられた。『ばんざい! 生きて日本に帰れた!』って胸が熱うなった。夢みてえだった」。

(『ひいじいちゃんは硫黄島の兵隊だった』から引用)

山口氏は出兵から4年ぶりに、ふるさと千葉の千倉へと戻ったが、すっかり戦死したものと思われていて、そこには自分の墓も戒名もあって驚いたそうだ。

「戦争に、勇ましいことなんか、なんもねえ。戦争なんかやるもんじゃねえよ」

(『ひいじいちゃんは硫黄島の兵隊だった』から引用)

ひいじいちゃんの、この言葉を私たちは、今一度、噛みしめなければいけない。

(文:沼口祐子)

ひいじいちゃんは硫黄島の兵隊だった

著者:かわな静(構成・画)、 山口周一(原話)
出版社:学研プラス
太平洋戦争末期、硫黄島で中迫撃砲兵として闘った山口周一氏。彼の貴重な体験を、ひ孫に語り継ぐ形で綴られた小説が登場。
硫黄島での本当の戦いが明らかになる。同名エピソードのほか、意外な捕虜生活を語った「ひいじいちゃんは硫黄島から生還した」を収録

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