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ガズィラじゃなくて、ゴジラね。ゴジラ。

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2016年7月29日。約12年ぶりのゴジラ映画最新作『シン・ゴジラ』が公開される。この原稿を書いている時点で伝わってきている話を総合すると、今回の作品のゴジラは着ぐるみではなく、CGで登場するようだ。身長の設定も118.5メートルと、ハリウッド版2作も含めたシリーズ全30作の中で最大になるらしい。

怪獣総進撃

1960年代終わりから70年代はじめにかけて小学生時代を送った筆者にとって、ゴジラという言葉には真夏の空気の匂いに直結するイメージがある。
ゴジラは東宝の〝チャンピオンまつり〟というイベントのメイン作品としてフィーチャーされることが多く、こうしたイベントが行われていたのは春先の時期のほうが多かったのだが、なぜか夏のイメージが強い。
よく考えてみたら、もうすぐ6歳になるという夏休みに見た『怪獣総進撃』(1968年8月公開のシリーズ第9作)のインパクトが強烈だったからだと思う。この映画、ゴジラはもちろん、ラドンやアンギラス、モスラの幼虫といった東宝のスター怪獣に加え、キングギドラというスーパースターが出演していた。
そしてこのキングギドラという怪獣は、後にハリウッドで活躍する映画監督となるアメリカやメキシコの子どもたちの心にも深く刻まれたようだ。キングギドラは欧米のKaijuファンたちの間でも神級の扱いを受けていて、King Gidorahという英語表記も定着している。

デル・トロ監督が愛したカネゴン

2013年に公開された『パシフィック・リム』の監督を務めたギレルモ・デル・トロ監督は、子どもの頃に見た『ウルトラQ』で日本の怪獣カルチャーの洗礼を受けたという。
とある映画ライターさんから聞いた話によれば、『パシフィック・リム』のプロモーションで来日した時、おみやげにカネゴンのフィギュアを持って行ったら、一目見た瞬間に「カネゴーン!」と叫び、予定時間をオーバーしてもノリノリでインタビューに答えてくれたという。
そのデル・トロ監督、コンサルタントとして参加した『ホビット:竜に奪われた王国』(2013年公開)の中で、キングギドラに酷似したモンスターを登場させている。とても気になったので調べてみたのだが、キングギドラが特に好きだといったコメントは見つからない。
でもね、お気に入りなんでしょ? わかってますって。

怪獣を学問する

来日中のデル・トロ監督は、スケジュールの合間を縫ってキディーランドに行き、さまざまな種類のフィギュアを爆買いしたという。
そういえば、元ジャーニーのスティーブ・ペリーも、エアロスミスのスティーブン・タイラーも来日時には必ずキディーランドを訪れ、お気に入りのフィギュアを買うのがオフのメインイベントだったようだ。
デル・トロ監督も含め、Kaijuファンのみなさんが英訳されることを心待ちにしているに違いない一冊が『怪獣学 怪獣の歴史と生態 KAIJU ANALYZE BOOK』(レッカ社・著/カンゼン・刊)である。構成を見てみよう。まず〝怪獣学の掟〟から始まる。

・怪獣の存在を疑うな
・怪獣の存在を信じろ
・すべての怪獣は等価
・怪獣の知識をひけらかすな
・怪獣対策は命がけで考えろ
・怪獣学と怪獣記録映像に終わりはない

といったお約束を踏まえて、

第1章:怪獣の行動原理
第2章:怪獣の発祥と生態
第3章:怪獣への対抗策
第4章:怪獣談話

という章立てで各論が展開されていく。ゴジラに代表される東宝系怪獣だけではなく、大映のガメラやギャオス、日活のガッパ、松竹のギララ、そして通好みのサンダとガイラ(こちらも東宝系)といったラインアップに、昭和時代に少年だった人々はひたすら心躍らせるにちがいない。

モンスター・ムービーと怪獣映画の違い

〝モンスター・ムービー〟とはちょっとニュアンスが違う怪獣映画を軸にした比較文化論的なテイストの文章はとても興味深く読める。〝ガズィラ〟と〝ゴジラ〟の違いがはっきりつけられている、と言ったらいいだろうか。
この本では先にちょっと触れた『パシフィック・リム』についても詳細な考察がなされている。たとえば、人類がKaijuと闘うために開発した巨大ロボット、イェーガーの操縦システムがエヴァンゲリオンやガンダム、さらにはマジンガーZまで遡ることができることが示されているが、このあたりは自分が子どもの頃に触れた数多くの作品に対するデル・トロ監督のリスペクトみたいなものを感じる。パクリじゃない。リスペクトだ。
上質なポップカルチャー考察本としてとらえて読み込むのもよし。好きな怪獣がどのくらい取り上げられているのかを確かめるのもよし。ボーナストラック的な感覚で収録されている佐野史郎さんとみうらじゅんさんのインタビューも読み応え十分。
これで準備はできた。『シン・ゴジラ』は公開当日に見に行こう。小学生だった頃のあの夏のように、むせ返るような熱気の中で並んで、涼しいロビーに入ったらまっさきにプログラムを買おう。そして席についたら、ブザーが鳴って照明が落ちる瞬間を静かに待とう。
今度のゴジラはかなりでかいぞ!

(文: 宇佐和通)

怪獣学 怪獣の歴史と生態 KAIJU ANALYZE BOOK

著者:レッカ社
出版社:カンゼン
2014年大怪獣時代の怪獣学分析本! 「パシフィック・リム」を入口に「ゴジラ」(1954ー2014)へと到る、もしくは「ゴジラ」を入り口に「パシフィック・リム」へと到る、怪獣を楽しむための“怪獣学”の知識が詰め込まれた濃厚研究本。「怪獣」を語るには欠かせない存在!佐野史郎氏みうらじゅん氏超ロング、スペシャルインタビュー掲載!

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