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『Xファイル』の原点は、さえない中年記者だった!?

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あの『Xファイル』が帰ってきた。1993年から2002年まで10シーズンにわたって全202エピソードが放送され、2本の映画が製作され、さらには本編と並行して13エピソードから成るスピンオフ作品が放送されたメガヒットドラマだ。

『Xファイル』から『ミレニアム』へ

アメリカでは、10年以上続くドラマは決して珍しくはない。ただ、『Xファイル』はテーマの特異性ゆえ、異質な存在と言っていいだろう。今さら触れるまでもないが、UFOとか都市伝説とか、突然変異したモンスターとか人体自然発火現象とか、いわゆる〝ムー的〟なものばかりだからだ。
新シリーズのタイトルは『Xファイル2016』。2016年6月にデジタル配信が開始され、7月にはブルーレイおよびDVD版が発売されている。
『Xファイル』のプロデューサー、クリス・カーターは『ミレニアム』というシリーズも製作していて、こちらは全67エピソードが1996年から1999年にかけて放送された。 同じジャンルではあるものの、『Xファイル』と比べるとはるかにダークなイメージのドラマである。
さて、『ミレニアム』のセカンドシーズンのとあるエピソードで、とても懐かしい顔を見つけた。主人公である元FBI捜査官フランク・ブラックの父親役を演じたダレン・マクギャビンという俳優だ。クリス・カーターが『Xファイル』の大成功の後に手がけたドラマの主人公の父親役にこの役者を持ってきたことには、大きな意味がある。

〝ムー的〟スクープハンター:コルチャック

ダレン・マクギャビンは、『Xファイル』や『ミレニアム』の源流とされることがきわめて多い『事件記者コルチャック』というドラマの主人公を演じていた俳優である。カーターは、『ミレニアム』でのキャスティングを通じ、おそらくは若い頃見ていた大好きな作品へのリスペクトを込めたのだろう。
日本では1976年に放送された『事件記者コルチャック』(原題:『KOLCHAK: The Night Stalker』)は、シカゴの新聞社インディペンデント通信社の中年記者コルチャックが次から次へと遭遇する怪奇現象を描いていくドラマだ。
〝ナイトストーカー〟という原題には、夜の街を徘徊してネタを拾い歩くコルチャックの姿、そして闇に蠢く魔物の姿という響きが込められている。取材対象は狼男やゾンビ、魔女、インドの邪神と盛り沢山だ。
それまでのテレビドラマになかったテーマと、びびりな性格の普通のおじさんであるコルチャックのキャラ設定が斬新だったが、製作サイド内の権利闘争が原因でわずか20エピソードが放送されて終わってしまった。

『事件記者コルチャック』が生んだ新しい流れ

『事件記者コルチャック』があり得ない理由で打ち切りになってから7年後。カナダで制作され、アメリカのケーブルテレビ局HBOで放送された『The Hitchhiker』という30分もののオムニバスドラマがあった。日本では、1991年になってテレビ東京で『怪奇ゾーンへようこそ』というタイトルで放送された。何とも言えない不条理さが独特だった。ジーン・シモンズ(KISSのベーシスト)のような大物ゲストの出演も売りのひとつだった。
6シーズン続いた『The Hitchhiker』も加えて進化の系譜を作るなら、『事件記者コルチャック』→『The Hitchhiker』→『Xファイル』と『ミレニアム』という並びになるだろうか。そう言えば、ダレン・マクギャビンは『The Hitchhiker』の1エピソードにも吸血鬼役で出演していた。いずれのドラマにも熱狂的なファンがいて、サイトも盛り上がっている。

世代を超えて共有できるもの

その後のオカルト系ドラマのあり方に大きなインパクトを与えた『事件記者コルチャック』には〝カルト〟という形容がついてまわる。2012年には、ジョニー・デップ主演でリメイク映画が作られるという話が持ち上がった。この原稿で紹介する書籍版『事件記者コルチャック』(ジェフ・ライス・著/早川書房・刊)の出版には、リメイクの話が大きく影響しているに違いない。
シリーズ化される前に作られたテレビ用映画『魔界記者コルチャック/ラスベガスの吸血鬼』、そして翌年に作られた続編『脳髄液を盗む男』の原作とコメンタリーを収録した一冊だ。2本のテレビ映画の原作もさることながら、コメンタリーで詳細に語られる『事件記者コルチャック』誕生物語は読みごたえがある。
日本テレビで日曜日の夜10時半から放送されていた時代を知っている人にはとても懐かしく、『Xファイル』のファーストシーズン第1話を見て衝撃を受けた世代の人たち、そして『Xファイル劇場版』を見てファンになったという世代の人たちとも共有できるものを提供してくれる一冊だ。
話が出てからすでに4年以上が経過しているが、ジョニー・デップ主演のリメイク版も楽しみだ。それを起点に新しい世代のコルチャック・ファンが生まれていくことは間違いないのだから。ダレン・マクギャビンは、もちろん『Xファイル』にもゲスト出演している。どのシーズンのどのエピソードか、ぜひご確認いただきたい。

(文:宇佐和通)

事件記者コルチャック

著者:ジェフ・ライス(著)、尾之上浩司・真崎義博(訳)
出版社:早川書房
わたしの名はカール・コルチャック。新聞社に勤める事件記者だ。ボスのビンセントとやりあいながら、カメラとテープレコーダーを武器に、今日も事件の渦に飛び込んでゆく……1970年代に熱狂的な人気を得ながら、わずか1シーズン放送されただけで終了し、しかし現在に至るまで多くのコンテンツに影響を与えてきたカルトTVシリーズ。その幻といわれた原作小説を発掘。

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