ハウツーが満載のコラム
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砂漠に横たわるこの植物の名を知っていますか?

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1989年、『フィールド・オブ・ドリームス』という映画がヒットした。ケビン・コスナー主演で、アカデミー賞の作品賞、脚本賞などにもノミネートされた作品だ。
私はケビン・コスナーが好きなので、ストーリーも知らないままに観にいったが、実に不思議な内容で、アメリカ映画というより、日本のお盆を描いたかのような作品だった。

トウモロコシ畑の真ん中で

アイオワの片田舎でトウモロコシを作って生活するレイ・キンセラ(ケビン・コスナーが演じた)は、ある日、不思議な声を聞く。「それを作れば、彼が来る」と。その声に従おうと決めた彼は、周囲にあざけられながらも、トウモロコシ畑に野球場を建設する。そして、ある日、夕闇の中、思いがけない人々がそこに姿を表す。奇跡が起きたとしか言えない出来事が、一人の農夫によって、トウモロコシ畑の真ん中で起きるのだ。

主人公はちょっと惜しい小学生

ひみつの校庭』(吉野万理子・作、 宮尾和孝・絵/学研プラス・刊)にも、レイ・キンセラならぬ葉太くんが、トウモロコシ畑で起きた夢の世界をしのぐ不思議さを私たちに見せてくれる。
葉太くんは、ごく普通の小学生5年生だ。
勉強にもあまり熱心ではなく、同級生の女子たちには「葉太くんて、惜しいよね」などと、噂されている。
背が高く、駆け足も早く、性格はおだやか。そこは素敵とほめられながら、最後の最後で「あと少し勉強ができたらねぇ」と、強烈なダメ出しをくらう。
まったくもって、男子も楽ではない毎日を生きている。憧れの女の子もいるのだが、もじもじと思うだけの日々だ。

「ハカラメ」という植物を知っていましたか?

そんな葉太に思いがけないことが起こる。
国語の授業の最中、女子からのラブレターがないかと、机の引き出しを探っていたとき、緑色の葉っぱが手に触れた。
何かと思ったら、それは「ハカラメ」という名の植物だった。
それは「セイロンベンケイソウ」とも呼ばれるもので、日本では沖縄や小笠原諸島に生えている。
葉を切り離しておくと、葉のふちに芽が出てくることで知られる不思議で珍しい植物だ。
しかし、なぜ? 珍しいハカラメがよりにもよって葉太の机の中にあったのだろう。
ひみつは、子供たち一人ひとりに決められた「自分の木」にこめられていた。

ハンカチノキ? アオノリュウゼツラン? 奇想天外?

穏やかで夢見がちなお話は、最初のうちは、明るい日差しの中にある校庭を思わせる。
ところが、次第に霧に包まれた不思議な世界にワープしていく。
そして、私は知ったのだ。
自分が今まで、植物について、あまりにも無知であったことを。植物園にだって、何度も行っていたはずなのに、私は私の木を持とうとはしなかった。
けれども、『ひみつの校庭』の登場人物たちは知っている。
この世には、珍しい木がたくさんあることを。
ハンカチノキ、アオノリュウゼツラン、ナツツバキ、奇想天外などなど、現実世界にこのようなものが存在するなんてと、驚かないではいられない。
冒頭の写真は「奇想天外」、またの名を「ウエルウィッチア」である。

あなたの木をあなたのひみつの校庭で育てよう

『ひみつの校庭』は、植物について詳しく語りながら、死について、深く掘り下げていく。

つまり、植物って、『生』と『死』の境目があいまいなんだ。もしかして、実は植物じゃなくて人間も、本当はそうなのかもしれない。

(『ひみつの校庭』より引用)

トウモロコシ畑にも学校の校庭にも、小さな植木鉢が置いてあるだけのベランダにも、毎日、奇跡が起きていると信じたい。
あなたにもあなただけの「ひみつの校庭」があるはずだ。

(文・三浦暁子)

ひみつの校庭

著者:吉野万理子 絵: 宮尾和孝
出版社:学研プラス
葉太たちの学校では、入学したときに「自分の木」が決められる。その観察ノートが終わったとき、秘密の庭への鍵が手渡される。庭には、不思議な植物たちと、不思議な人々が集まる場所だった。人間が成長して別れがあることの意味を、植物たちが教えてくれる。

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