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ライダーの次は、ガンダムの脚本を書いてほしい。その人の名は……

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虚淵玄(うろぶち・げん)という名前をご存じだろうか? 日本人の男性シナリオライターだ。2013年から2014年にかけて、TVシリーズ『仮面ライダー鎧武』の脚本を担当している。

この人物を一躍有名にしたのは、2011年に放映されたTVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』だ。作品の核となるアイデアを着想して全話の脚本を担当した。目が離せないストーリー展開によって『まどマギ』はアニメ愛好者だけにとどまらないたくさんの視聴者を熱狂させた。

じつをいうと、虚淵玄には「もうひとつの顔」がある。アダルトゲーム業界の有名シナリオライターなのだ。

虚淵玄という漢(おとこ)

以下は、東京都主催の国際イベントにおいて『魔法少女まどか☆マギカ』が「脚本賞」を受賞したときのコメントだ。

この度の受賞を大変栄誉に思います。潔癖を是とする社会からは汚泥とも映るであろうアダルトゲーム業界ですが、そこで培った感性があってこそ、本作の脚本は成立しました。私を評価して頂いた皆様には、汚泥の養分があってはじめて蓮の花も咲くのだとご理解頂けたものと、喜びを新たにしています。憲法に保障された表現の自由の盤石であると信じるすべての表現者が、憚ることなく創作の翼を広げられる社会の実現を願って止みません。
(虚淵玄 東京国際アニメフェア2012受賞コメント)

コメントからもわかるように、虚淵玄はアダルトゲーム業界出身であることをいっさい隠していない。それどころか、むしろ誇りをもって語っている。

シンデレラ・ボーイ!?

アダルトゲーム業界に10年以上どっぷり漬かっていたシナリオライターが、子供たちに大人気の『仮面ライダー』の脚本を手がける――異例の抜擢だ。

ポルノ映画を10年以上撮り続けていた滝田洋次郎が『おくりびと』や広末涼子主演の『秘密』を手がけたことに似ている。そうは言っても、虚淵玄がたずさわった『仮面ライダー鎧武』は子供が観る作品なのだから、たとえるならベテランAV監督がフジテレビの月9ドラマを手がけるようなものだろう。常識的に考えれば、ありえない。

だが、アダルトゲーム業界をよく知る者にとって驚きは少なかった。虚淵玄の近年における「日の当たる場所での活躍」は、けっして想定外ではなかったからだ。

身内びいきによるものではない。『おくりびと』の滝田洋次郎をはじめ『Shall we ダンス?』の周防正行や『平成ガメラシリーズ』の金子修介などが日活ロマンポルノからキャリアをスタートしたように、アダルトゲーム業界は知られざるエンターテイメントの実験場であり、それゆえに人材の宝庫でもあるからだ。

アダルトゲームとは何か

ひとくちに言えば「エッチなコンピュータゲーム」のことだ。あるいは「エッチなデジタル紙芝居」と言ったほうがピンとくる世代もいるだろう。アダルトビデオとの違いは、性行為をおこなっている当事者が「イラストで表現された架空のキャラクター」である点だ。

マウスをクリックするとストーリーが進行する。若い男性主人公がおなじ年頃の女性たちと親密になっていく。
アダルト「ゲーム」であるゆえんは、表示される選択肢の組み合わせによって最後に結ばれる女性が異なるからだ。ハッピーエンド・バッドエンドと称される結末が用意されているが、誤った選択肢を選んだ場合はゲームオーバーになる。

名作紹介

超エロゲーハードコア』という本がある。前述した、虚淵玄のロングインタビューも収録されている。

アダルトゲームとひとくちに言っても、ジャンルは多岐にわたる。本書で取り上げられている作品の中から、いくつか紹介しよう。

『キラ☆キラ』
本作のシナリオライター瀬戸口廉也(せとぐち・れんや)も、虚淵玄に勝るとも劣らない優れた書き手だ。
特筆すべきは、2005年にシナリオを担当した『SWAN SONG』というアダルトゲーム。内容は、大災害で壊滅した日本における男女たちのサバイバルだ。2011年3月11日を経た我々にとって見過ごせない作品であり、アダルトゲームでありながら18禁シーンは極力抑えられている。叙情的な文体とあわせて、もはやアダルトゲームの枠を超えた地点に到達した一作だ。

ちなみに、瀬戸口廉也は現在、小説家「唐辺葉介」名義でも活動している。

『車輪の国、向日葵の少女』
ジャンルは、学園もの&ミステリ。日本によく似た独裁国家を舞台にした学園もの(プラトンの「哲人政治」がモデル)。この国の刑罰は「懲役制」ではない。犯した罪にふさわしい「義務」をもって刑罰としている。

「大人になれない義務」を課せられた少女は、母親の命令にそむくことができない。「恋愛できない義務」を課せられた少女は、男性にふれることを禁止されている。我慢できず「義務」をおろそかにした者は、終身強制収容所に送られる。

主人公の男子学生は「特別高等人」を目指している執行官見習いだ。義務を課せられた3人の少女たちを矯正するために転校してくる。それが「特別高等人」になるための最終試験だった。物語終盤にはあっと驚く展開が用意されており、シナリオを担当したるーすぼーいは、この1作だけでエロゲー界のレジェンドになった。

忌まわしき豊穣

超エロゲーハードコア』では、ほかにも30作品以上の名作アダルトゲームがくわしく紹介されている。

たとえば、ヒロインが全員100kg超の美少女という『デブプラス(のち、デブトピアに改称)』。現代日本の男子学生がむかしの中国っぽい場所へ時空跳躍したら、関羽も曹操も諸葛亮孔明もみ~んな美少女だった!という『恋姫†無双』など。

あぁ……残念だ。マイナーな良作も紹介したいのだが、そろそろ紙幅が尽きつつある。

小説やマンガ、それどころか映画にも匹敵するエンターテイメント性を備えており読み終えたあとにカタルシスを存分に味わうことのできるアダルトゲームは数多く存在する。残りは、ぜひ本書で確認してほしい。

(文:忌川タツヤ)

超エロゲーハードコア

著者:阿部広樹(著) 箭本進一(著) 多根清史(著)
出版社:太田出版
かつて「エロゲー」は楽園だった!?あの“クソゲーハンター”がハードコアに一皮むけて“エロゲーハンター”にトランスフォーム!!爛熟のゼロ年代リリースから最新作まで、エロゲーの名作・怪作・奇作を徹底レビュー!!さらにニトロプラス・虚淵玄、『School Days』のメイザーヌぬまきち、元『カラフルピュアガール』編集長・加野瀬未友を独占ロングインタビュー!! そして明らかになる、禁断のエロゲー裏の歴史とは……?全原稿書き下ろし、これぞ永久保存版!!さらに表紙は話題の美少女絵師・片倉すみれ、描き下ろしイラスト!!

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