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ダムライター/ダム写真家・萩原雅紀さんに聞く「ダムマニアって何して楽しんでるの?」

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学研プラスから発売されているダム写真集『ダムに行こう!』を作られたダムライター/ダム写真家である萩原さんのインタビュー後編です(前編はこちらから)。前編ではダムの魅力についてお聞きしましたが、今回は、ディープなダムマニアの世界についてお聞きします。

筆者である萩原さんは、日本屈指のダムマニア。しかし、我々ダムマニアではない人間にとって、マニアはいったいどういう活動をしているのか、想像もつきません。

僕たちの知らない世界が、そこにある!

ダムが発行する「ダムカード」。コレクターは数万人も!

――現在、ダムマニア人口ってどれくらいいるものなのでしょうか。

いろいろな濃さの人がいますからね。一概には言えませんが、ものすごくコアで、休みがあればしょっちゅうダムに行って写真を撮って、SNSなどで発表しているという人は、数十人といったところでしょうか。

でも、ダムに行くともらえる「ダムカード」というものがありまして、それを集めている人は、何万人という規模でいると思います。

――ダムカード!? それは、どこが発行しているのですか?

ダムの管理者ですね。国土交通省、市町村といった自治体、電力会社がダムを所有していますが、そこが発行しています。統一規格は国土交通省が作っています。

これがダムカード。色、フォント、記載事項などの統一規格がある。自治体などが独自で発行しているカードもあるが、それは公式ダムカードとは認められない。

これがダムカード。色、フォント、記載事項などの統一規格がある。自治体などが独自で発行しているカードもあるが、それは公式ダムカードとは認められない。

――ダムカードはどういう経緯で作られたのでしょうか。

ダムには、パンフレットが置いてあるんです。しかし、規格がダムごとに違っていて、50枚、100枚と集めていくと結構かさばるんですよね。
そこで、「プロ野球チップス」についているプロ野球カードのような統一されたフォーマットで、ダムに行けばもらえるというものがあれば、ダムを訪れる人が増えるのではないか、そして、カードをもらう際にダムの管理者の方と直接話す機会が生まれるのではないかという話を、100人くらいのお客さんが入ったトークイベントでしたんです。

そうしたら、たまたま会場にいらっしゃった国土交通省のダム関係者の方に興味を持っていただいて、その1年ちょっと後にダムカードができあがりました。僕は、製作段階でデザインや内容などについてアドバイスをさせていただきました。

――ダムカードを発行しているダムは全国でどのくらいあるんですか?

400ちょっとですね。毎年増えています。実は、僕は全部は持っていないんですよ。ダムカードの企画を自分で提案したんですけど、僕自身がコレクター気質じゃないもので(笑)。行ったダムにあればもらいますけど、カードを集める目的でダムへ行くということはありませんね。

――トレーディングカードのようですね。これでカードバトルとかできたら楽しそうです。

最初は、カードバトルの要素も入れようとしたんですよ(笑)。しかし、そのときカードバトルに詳しい人がいなかったので、その要素はなしになりました。まあ、そもそもダムをどうやって数値化すればいいのかよくわからないですしね。高さで戦うと勝敗は最初から決まってしまいますし。

ダムマニアはダムの実況中継がお好き

――ダムマニアが集まってオフ会のようなものを開いたりすることもあるんですか?

よくありますよ。

――そのとき、どんな話をするんでしょう? 自分のお気に入りのダムの話とか、あのダムの放流がすごいとか、そういう話になるんですか?

もうそのレベルの話は終わっているかもしれないですね(笑)。二周りくらいしていて、誰々があそこのダムでカメラ落としたとか、そういう失敗談ですね(笑)。

――知り合いのダムマニアで、萩原さんから見てもすごいとか、マニアックだなと思う方はいらっしゃいますか?

最近は結構すごい人が多いですよ。今は、ネット上でダムにどのくらいの水が流れ込んでいて、どのくらい放流していて、水位がどれくらいというのがリアルタイムで見られるんです。大雨のときなどにそれを見ながら、現在どういう状況で、このダムは何のために放流しているのかを、数値から読み取って、SNSなどで「今このダム、ピークだね」とか、ちょっと放流量を絞ったりすると「調節に入った」とか実況をして盛り上がっています(笑)。

広がり続けるダムカレーのバリエーション

――ダム好きが集まる店というのはあるんですか?

ありますよ。ただ、群馬にいったらあそこ、というように、おいしいとかそういう理由ではなくて、立ち寄りやすいからという理由からですけど。

それとは別に、東京の墨田区にある日本料理のレストランがあるんですが、そこの若旦那が相当濃いダムマニアで、そこに集まることはわりとあります。

――萩原さんが「相当」だというくらいですから、かなりのレベルなんですね。

自分のレストランのメニューにダムカレーがあったり。そのダムカレーも、丼にライスできちんとダムを作って、片側だけにカレールーを入れて、もう片側は福神漬だけというように、忠実にダムを再現している完成度の高いものですね(笑)。

――黒部ダムにあるダムカレーは、お皿の上にダムの形をしたライスがあって、周囲にカレールーがあるという感じですよね。

最近はダムカレーもバリエーションが増えてきていまして。ライスで作ったダムにソーセージが刺さっていて、それを抜くと下穴(水門)からカレーが放流されたり(笑)。ルーをライスの上からかけて越流させたりするダムカレーもあります。

――越流(笑)。こだわってますねー。

食べるときに、ライスを崩すとルーが流れるので「決壊だ!」と言って食べていたんですけど、ダム関係者の方に「決壊はやめてくれ」と言われまして(笑)。今は放流と言っています。

――ダムグッズのようなものはあるんですか?

ダムならではのおみやげがあるのは、黒部ダムくらいじゃないでしょうか。ただ、ダムマニアの方が自分で作って商品化しているというのはありますよ。たとえば、このTシャツも僕の知り合いのデザイナーが作ったものです。ダムの形式をアルファベットで表したものをデザインしています。

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ダムの形式を表したダムTシャツ。A=アーチダム、E=アースダム、G=重力式コンクリートダム、GA=重力式アーチダム、GF=重力式コンクリート・フィル複合ダム、HG=中空重力式コンクリートダム、MB=可動堰、R=ロックフィルダム、B=バットレスダム

頑張ったダムをたたえる「ダムアワード」が毎年開催!?

――萩原さんは日本ダムアワードを主催されていますよね。「1年間を振り返って活躍したダムをノミネート」とありますが、ダムの活躍とはどういうことを指しているんですか?

ダムアワードにはいくつか部門があります。洪水調整賞は大雨と戦ったダム、低水管理賞は渇水と戦ったダム、放流賞は印象的な放流をしたダム、イベント賞は印象的なイベントを行ったダムというのをノミネートして、選考委員会で決めています。

ちなみに洪水調整や低水管理というのは、台風などのときにそのダムがどう頑張ったのかをデータから読み取って評価しています。

――頑張ったというのは、放流の回数とか、そういう感じでしょうか。

その辺は判断が難しいのですが。下流に被害を出さなかったとか、最小限にとどめたという、相対的なものですね。絶対値だと大きいダムが有利になってしまうので。

――放流賞とイベント賞というのは?

この2つは、ダムアワード全体でいうと、一般の人の興味を引くために設定された賞です。いきなり洪水調整賞とか低水管理賞といっても、一般の人が理解できないと思うので。放流写真をたくさん見てもらおうというような意味も込めています。また、ダムに対してはもっとチャレンジングな放流をしてほしいという期待を込めて賞を贈るという意味合いもあります。普段開けたことのない水門を開けるとか、立入禁止の区域を開放して見学会をするとか。

――この賞に刺激されて、ダム側の意識が変わったということもあるんですか?

去年、それが結構ありましたね。放流するダムも増えましたし。大きい声では言えないんですが、イベント賞を狙いますと公言しているダムの職員さんもいるんですよ(笑)。

高さ15m以上あればダムマニアの訪問対象になる

――萩原さんは日本のダムはほとんど行かれているんですか?

行っていないところのほうが多いと思います。日本には小さいものも含めるとダムが3000弱もあるんですよ。ダムは高さ15m以上と決まっているので、逆に言えば15mあればダムになるんです。山奥の小さな集落にある溜池的なものでも、堤防が15mあったらダムになるので、我々の訪問対象になるんです(笑)。

――萩原さんは大きいところはだいたい回っていると思うのですが、今度はそういう小さなダムを回るといった計画はあるんですか?

そういうところに行き始めると、時間がいくらあっても足りなくなるんですよ。なので、僕は大きいダムをメインに、時間的に余裕があったらその近くの小さなダムにも寄るというスタンスです。

――小さなダムを中心に巡っている方もいらっしゃるんですか?

いるんですよ、それが(笑)。そういうところに行くことに生きがいを感じている人も結構います。そのダムが見られれば満足みたいな。

 

ダムのフィギュアを作りたい

――萩原さんが今後やってみたいなと思っていることはありますか?

ダムのフィギュアを作りたいんですよ。なんとかここ1、2年で実現できないかなと思っているんですが。僕のイメージとしては、ダム本体をメインとしつつ、貯水湖と下流もちょっと入っているといった感じで。2500円くらいならいいんじゃないかと思っています。日本の名城シリーズのようなイメージです。ダムはプラモデルもないんですよね。

――フィギュア化するとなったら、第1弾はどこにしますか?

一発目が売れないと話にならないということを考えると、黒部ダムですかね。ただ、黒部ダムは日本で一番大きなダムなので、次から発売するフィギュアがどんどん小さくなってしまうというのが、難しいところですね。

――建造物の美しさという観点で、萩原さんが一番美しいと思うダムはどこですか?

黒部ダムもすごく美しいんですけど、個人的に好きなのは岩手県の湯田ダムですかね。美しいというか、無骨な感じがとても気に入っています。

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萩原さん一押しの湯田ダム。

休日にダム巡りなんていかがですか?

ということで、萩原さんへのダムインタビューはここまで。長時間お付き合いいただきありがとうございました。

さすがダム界の第一人者だけあり、ダムにまつわる話が豊富な萩原さん。断然ダムに興味が出てきました。

僕も、黒部ダムは行ったことがありますし、偶然ダムを通りかかったことはあります。しかし、知識がなかったせいかあまり意識したことはありませんでした。「ダムだなー」って思う程度です。

しかし、萩原さんのお話をお聞きしたあとは、もっとダムをじっくり見たいと思うようになりました。

みなさんも、ダムに興味が出てきたのではないでしょうか。今度の休日は、ダムに行ってみようかな。みなさんも、ダム、いかがですか?

(文:三浦一紀)

03萩原雅紀
ダムライター、ダム写真家。
1974年東京生まれ。偶然たどり着いた宮ヶ瀬ダム(神奈川県)の崇高な姿に魅了されてダムに目覚め、以後ライフワークとして「ダムめぐり」を続けている。これまでに訪れたダムは国内外合わせて500か所以上。2007年に配布開始されたダムカードの発案にも携わる。

ダムに行こう!

著者:萩原雅紀、庄嶋與志秀
出版社:学研プラス
ダムの第一人者・萩原氏とプロ写真家・庄嶋氏が厳選した「今、見ておくべきダム」の魅力を詰め込んだ、マニアも初心者も必見のダム写真集。放流シーンを満載した全86基の写真集&ガイド!

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