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料理の鉄人・陳健一レシピで作った麻婆豆腐で、この夏を乗り切ろう

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大学生の頃、一人の中国人留学生と仲良くなった。
中国人といっても、中華人民共和国出身ではなく、マレーシアに生まれ、マレーシアで育った華僑のお坊ちゃまだ。
名前を一部変えて、仮にチェン・ポーポーさんとしよう。
ポーポーさんは、頭がよく、日本語・英語に堪能だった。それなのに、故郷であるはずのマレー語はうまくない。
イギリス系の学校に通ったためだという。
中国語はもちろん上手だったのだろうが、私の方に知識がなく、私たちはいつも日本語と英語とマレー語のちゃんぽんで話をした。

日本料理では何が好き?

ポーポーさんを「私にとって初めてできた外国人のボーイフレンドです」と、言いたいところだが、彼とは食べ物の話しかしなかった。
日本で即席ラーメンの美味しさにとりつかれたとのことで、毎日、毎日、昨夜食べた「出前一丁」や「サッポロ一番」の話ばかりする。
日本食は刺身でも天ぷらでもなんでも好きだが、一番、好きな日本食は「煮ないでラーメンを食べることです」と、よくわからないことを言っていた。
乾麺をそのままかじるのが好きだったのだ。
私が眉をひそめて、「体に悪いわよ。いくら好きだって、毎日はよくない。病気になる」と、諭しても、「今日は出前一丁にしますから大丈夫です」と、私の話など聞いてはいないのだった。

麻婆豆腐の謎

ある時、ポーポーさんが言った。
「あなたは中華料理で何が一番、好きですか?」と。
私は即座に答えた。
「麻婆豆腐」
当時、私は炊きたてのご飯に麻婆豆腐をかけて食べるのに凝っていたのだ。
すると彼は顔をゆがめ「麻婆豆腐?ただ、辛くて、苦くて、口がしびれるだけ!あんなものが好きですか」と、叫び、「あなたはグルメじゃありませんね。どうすることもできません」と、怒る。
辛いのは辛いけれど、苦い?しびれる?
一体、何を言っているのだろう?

日本の麻婆豆腐はちょっと違う

ずっとその言葉が胸に引っかかっていたのだが、大学を卒業して35年後、私は中国の成都に行くことになった。
成都は四川省の省都だ。本場の麻婆豆腐を食べるチャンス到来である。
飯店に入るや、もちろん、麻婆豆腐を頼んだ。
他のメニューがわからなかったこともあるが、四川料理ならやはり麻婆豆腐でしょう、それ以外にないでしょうと、思ったのだ。
ところが、すぐに私はポーポーさんの言葉を実感した。
辛いのは本場だから覚悟していたが、確かに苦く、食べた後、口がしびれる。
花椒というのか、赤い胡椒のようなものがたっぷりかけてあって、口がビリビリする。
そして、豆腐が堅く、もそもそしている。
不味いとは思わなかったが、私が知っている日本の麻婆豆腐と本場の麻婆豆腐は異なる料理だと感じた。

日本人への愛情が陳家の麻婆豆腐を生み出した!

陳建一の絶対おすすめ中華のおかず』(陳健一・著/PHP研究所・刊)を読むと、日本の麻婆豆腐がなぜ口がしびれないかがわかる。
料理の鉄人としても有名な陳建一さんのお父さん陳健民さんが、日本風にアレンジしたからだ。
健民さんは本場の四川料理のコックだ。
彼は四川料理は日本人の口にはあわないことをよく知っていた。
四川地方は盆地で、夏は暑く、冬は寒い。
当然、唐辛子のきいた料理で夏は汗をかき、冬は体を温めるようにする。それはそれで、素晴らしいことながら、日本人には辛すぎるし、花椒をたっぷりきかせるのにも慣れていない。
そこで、日本人に合う麻婆豆腐を模索した。
「料理は愛情だ」という信念のもと、口がビリビリしない麻婆豆腐を考え出し、広めようと頑張ったのだ。

日本人が好む四川料理の数々

今では、多くの日本人が麻婆豆腐を好むようになり、辛さにも慣れた。花椒がきいた本場の麻婆豆腐を注文する人もたくさんいるし、若者たちは激辛を好む。
今回、陳建一のレシピに従って、麻婆豆腐を作ってみて、丁寧で繊細な作り方に驚いた。
お豆腐を一度茹で、ザルにあげてから中華鍋に入れたり、水どき片栗粉を少しずつ入れてとろみをつけ、最後は強火で仕上げるなど、細かな作り方が披露されている。
他にも、スペアリブのコーラ煮や鶏手羽先の醤油煮込み、いかとアスパラガスの炒め物など、「へぇ」とうなるようなレシピが満載で、読んでいて楽しい。
もし、今、ポーポーさんに会えたら、「日本の麻婆豆腐はちょっと違うのよ。口がしびれたりしないのよ。料理はやっぱり愛情が大事ね」と、教えてあげたいのだが、彼が今どこで何をしているのかわからず、果たせないのが残念だ。

(文・三浦暁子)

陳建一の 絶対おすすめ! 中華のおかず

著者:陳建一
出版社:PHP研究所
料理の鉄人・陳建一氏が、家庭でも手軽に美味しく作れる「名人のワザ」を紹介!
●本書の内容
「1/みんな大好き定番おかず」
「2/ヘルシーでシンプル野菜料理」
「3/手軽にできるいろいろスープ」
「4/お酒のつまみにもぴったり 小皿料理
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