ハウツーが満載のコラム
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あなたはどこまで耐えられますか? この猟奇的な世界に・・・

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いや、いや、びっくりした。
「ようこそ」の言葉に誘われ、怖いもの見たさもあって、お招きを受けたつもりだった。
それなのに・・・。
ここまで異次元の世界へ持って行かれるとは・・・。
招かれた先は「猟奇博物館」。
実際に現場に踏み込んだわけでもないのに、私は今、呆然としている。

猟奇世界からの1000本ノック

私たちは時に、読む前と読んだ後では、目の前に広がる世界が異なって見える本に出会うことがある。
猟奇博物館へようこそ:西洋近代知の暗部をめぐる旅』(加賀野井秀一・著/白水社・刊)もその中の1冊に入る。
他の本と違うのは、あまりにも内容が濃厚で、すさまじいまでに膨大な知識が詰め込まれていることだ。
ボヤボヤしていると、次から次へと襲い来るエピソードや気味の悪い写真にボコボコにされてしまう。
まるで「猟奇世界からの1000本ノック」を受けているようで、息つく暇もない。

警告されていたというのに・・・

わかってはいたのだ。
ひどい目にあうと知ってはいたのだ。
著者・加賀野井秀一もあらかじめ警告を発してくれている。

ここには、あなたをミラビリア(驚異)とクリオシタス(好奇)の世界に誘い込む異形のものどもが、手ぐすねひいて待ち構えております。

(『猟奇博物館へようこそ:西洋近代知の暗部をめぐる旅』より引用)

この言葉に嘘はなかった。
ただし、待ち構えていたというより、食われてしまったかのような衝撃を受けた。
ふと気づくと、えぐい世界に迷い込み、そこから抜け出せなくなった自分がいた。

マダム・タッソー蝋人形館の秘密

扱われている「おぞましいもの」はあまりに多く、紹介しきれないので、一番、「ゲッ」となり、びっくりしたものを挙げておく。
それは、観光名所として知られる「マダム・タッソー蝋人形館」にまつわる物語だ。
「マダム・タッソー蝋人形館」は世界中にあり、歴史的人物やスターなどが、本物そっくりに作られている蝋人形が陳列されていることで知られている。
まるで生きているかのようにリアルな人形たち。
あなたも一度は見たことがあるかもしれない。

今回、驚いたのは、蝋人形のいくつかは、本物の遺体を使って、作られたものだと知ったことだ。
たとえば、フランス革命の時代、ギロチンで処刑されたルイ16世やマリー・アントワネット。
華麗なる王と王妃の蝋人形は、断頭台の下にころがり落ちた本物の生首をかたどって作られたのだそうだ。
そんなことが実際にあったなんて。
知っていましたか?
私は知りませんでした。
全然、知りませんでした。
もっとも、現在、陳列されているアントワネットの首は、本物をかたどって作られたもののレプリカだというが、 それでも、原型はちゃんと存在し、蝋人形館の奥深くしまわれているというから、かえって怖い。

マダム・タッソーという人物

マダム・タッソー(結婚する前の名はマリー・グロシュルツ)は、自らの手で、首を拾い上げ、かたどり、作品としたという。
げっ、そうなの?
そんなことをしていいの?
私は私に問いたくなる。
しかし、いいも悪いもないのだ。
彼女は命令を受けて、アントワネットの蝋人形を作ったのだから。半ば強制的にやらされた蝋人形作りだ。
それでも、マダム・タッソーとなった彼女は、数々の作品を携えてイギリスに渡り、タッソー蝋人形館を始めたというのだから、そのたくましさに言葉を失う。

怖いから見たい、それが人間の好奇心か?

『猟奇博物館へようこそ:西洋近代知の暗部をめぐる旅』には、他にも、数々の猟奇的なオブジェが、みっちりぎっしり並べられ、それにまつわるぞっとするようなエピソードが、これまたみっちりぎっしり、これでもか、これでもかと、続く。
「もう勘弁してよ」と言いながら、あなたはきっと最後まで読んでしまうだろう。見ては駄目よと思いながら、見てしまうに違いない。
たとえば、見世物小屋で働かされていた人魚を。
そして、お腹が裂けて内臓が見える美少女も。
はたまた、日本の小野小町の腐敗屍体像、そうかと思うと、腐らないと言われる聖なる修道女の遺体。
さらには、ドクロのシャンデリアなどなど。
奇形と魔物の世界に足を踏み入れ、ぼんやりしてしまうことだろう。
人間の好奇心のすごさに圧倒されながら・・・。
猟奇世界からの1000本ノック、あなたも受けてみてはいかがでしょう?
ただし、心身共に元気で、好奇心に満ち溢れているときにした方がいいかもしれない。

(三浦暁子)

猟奇博物館にようこそ:西洋近代知の暗部をめぐる旅

著者:加賀野井秀一
出版社:白水社
解剖学ヴィーナス、デカルトの頭蓋骨、腐敗屍体像にカタコンベ、奇形標本……あやしくも美しい、いかがわしくも魅惑的な、あっと驚く異形のコレクション案内。

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