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自分、DD(誰でも大好き)でいかせていただきます!

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家の近所に、新しいダンススタジオができた。2つの私学の最寄り駅ということも関係しているのか、ジムとかダンススタジオがやたら多いのだ。クラスのラインナップを見てみる。ハウスとかヒップホップは、昔通ってたジムでちょっとかじったからいいか。サルサはちょっと気恥ずかしいな…。
え?! ヲタ芸コース?!  ヲタ芸コースを前面に押し出してくる攻めの姿勢は珍しい。さっそく体験レッスンの予約を入れ、ドンキでサイリウムを買ってきて、その日に備えた。

ヲタ芸クラスに出てみた

そして当日。手続きを済ませてスタジオに入ると、この日の生徒は20代の男女4人グループ、年齢不詳の女性1人、そして、どうやら一番年上の筆者。
インストラクターは、ヲタ芸のイメージとはほど遠いアスリート体型の人だった。軽くストレッチをして、基本動作から始める。
ヲタ芸の構成は、Aメロ、Bメロ、そしてサビが基本形だ。それぞれのパートに技を組み合わせて当てはめていく。技の名前がいちいちカッコいい。ロザリオ、ロマンス、オーバーアクションドルフィン、マトリックス…。そうかと思うと、PPPH(ぱーんぱぱんひゅー)なんていう名前も動きも簡単なものもある。これは、「ぱーんぱぱん」のリズムで手拍子を打って、「ひゅー」で片手を挙げながらジャンプする動き。

DD(誰でも大好き)だっていいじゃん

最初はインストラクターのカウントだけでサイリウムを振る練習をする。それを何回か流して、いよいよ曲を使って実際に〝打つ〟。ヲタ芸は踊るものではなく、打つものなのだ。曲はももいろクローバーZの『行くぜっ!! 怪盗少女』。大好きなももクロで1曲打ち終わり、スタジオを出て、TSUTAYAに寄ってみる。
アイドルグループDVDコーナーで定番のAKBから乃木坂、モー娘。あたりまでさらっと流し、最近注目しているでんぱ組.incや仮面女子をチェックからのBABYMETAL。
鉄道オタクなら乗り鉄とか撮り鉄といった呼び方がある。アイドルというジャンルなら、筆者はいわゆる〝DD=誰でも大好き〟ということになると思う。否定的なニュアンスがとても強い言葉だ。そういえば、ヤンキースの田中投手もネット上でDDっぷりを叩かれていた。とあるインタビューで「全48グループの曲を聞いています」と答える一方、楽天時代もヤンキースに移籍した後も、登場曲はももクロだ。

楽曲もグッズも楽しみたい

DDは、節操のなさが問題だ。そもそも、あまたあるグループは完全に異なるコンセプトの下に結成されている。まずそのあたりを踏まえない限り、アイドルヲタにはなりえない。人前でアイドルについて語ることも控えた方がよさそうだ。
だから筆者は、自らに〝アイドル好き〟というラベルを貼ることにした。好きな楽曲が複数のグループに渡ることも、筆者のDD性に深く関係している。iPhoneのプレイリストにもさまざまなグループの楽曲が同居している。
ヲタ芸には昔から興味があった。技の名前の響きにも惹かれていたし、どのくらい機敏にきれいに動けるのかもどうしても確かめたかった。はっぴとかタオルとかのグッズも可能な限り手に入れて飾っておきたい。アイドル的なものすべてに興味があるのだ。

何の理由もなくハマる。それがアイドル

そんな筆者が『50代からのアイドル入門』(大森望・著/本の雑誌社・刊)を即購入したのは、当たり前すぎな流れである。まず、とても接しやすい言葉でほぐしてくれる。

なんとなく気になるアイドルがいるんだけど、その先の一歩がなかなか踏み出せずにいる、そんなおじさんおばさんのための本があってもいいんじゃないか。というか、あったら読んでみたいんだけど、なかったので自分で書いてみたのがこの本です。

『50代からのアイドル入門』から引用

『WEB本の雑誌』という媒体での連載コラムが原型だが、この連載を始めた時点で、著者の大森さんはアイドルをテーマにした原稿を書いたことは一度もなかったという。
作りとしては、地下アイドル/ライブアイドル/ロコドル等の定義といった基盤部があって、それにハロプロのライブレポートがフィールドワーク的に盛り込まれており、ライブに行く勢いがまだついていない人たちに大きなモチベーションを与えてくれる。アイドルライター歴もアイドルヲタク歴も実質1年という大森さんの発熱量は、きわめて高い。

人を好きになるのに理屈がないように、アイドルを好きになるのにも理屈はない。楽曲だとかビジュアルだとか歌唱力だとかダンスだとかコンセプトだとか、人はあれこれ口にするけど、大体は好きになってからの後付け。ある日突然なんの理由もなくハマり、その瞬間から毎日が変わってしまう。

『50代からのアイドル入門』から引用

何かが変わらなければヲタ芸クラスに参加することもなかっただろう。そして、大森さんが「なんの理由もなく」と表現する部分は、筆者の場合、ももクロのオーバチュア(コンサートの最初にかかる序曲)を聞いた瞬間に感じたあれかもしれない。筆者はこれからも、DDであり続けるし、楽曲もグッズも楽しみまくる。そんな言葉は存在しないが、“トータル・アイドライザー〟なんて呼び方はどうでしょうか?
何より、こういう本を書いてくれる同世代の人がいて、本当に本当によかった。

(文:宇佐和通)

50代からのアイドル入門

著者:大森望
出版社:本の雑誌社
50歳をすぎたある日、突如「ハロプロ」にハマってしまったSF評論家・翻訳家の大森望さんが書き上げた、実用的アイドル入門書。アイドルってこんなに楽しいのか! と現場に駆けつけたくなる一冊です。

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