ハウツーが満載のコラム
文字サイズを変更する

孤独死リスクは50歳から急上昇する!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

東京都では毎年6千人が孤独死している(東京都監察医務院調べ)。孤独死の半数を占めているのは50歳以上の男性だ。東京都だけでも毎年3千人の中高年男性が、だれにも気づかれずにひとりで亡くなっている。

孤独死とは何か。東京都監察医務院によれば「一人暮らしの人が自宅で死亡したケースのうち、自殺や病死、そのほか死因がはっきりしない事例」を孤独死と見なすそうだ。

他人ごとではない。これから日本は「超高齢化と多死の時代」をむかえる。今後も拡大を続けるであろう「格差と貧困」によって、多くの中高年たちが、老朽化した賃貸住宅や団地の一室へと追いやられていく。

地縁もない。血縁もない。死んでも誰も気づかない。何ヶ月も発見されないまま。

ひとりで死んでいく男たち

孤独死は、圧倒的に男性のほうが多い。

40代の孤独死(男性328人・女性77人)
50代の孤独死(男性593人・女性87人)
60代の孤独死(男性1212人・女性202人)
70代の孤独死(男性1025人・女性475人)

(平成27年度「一人暮らしの者の死因」東京都監察医務院調べ)

孤独死した人が「亡くなってから発見されるまでの時間」というデータもある。男性は平均12日、女性は平均6日だ。女性の孤独死に比べて、男性の孤独死は発見が遅れる傾向にあるようだ。

人生最期の肩書きは「行旅死亡人」

孤族の国 ひとりがつながる時代へ』(朝日新聞「孤族の国」取材班・著/朝日新聞出版・刊)には、アパートの一室で死亡していたにもかかわらず8ヶ月間も発見されなかったケースが紹介されている。その50代男性は、10年ほど入居していたが偽名だった。隣人やほかの入居者は、亡くなっていることに気づかなかったという。

何ヶ月も誰にも発見されない、孤独な死。団地や古いアパートがその現場となることが多いのは、一戸建てなどに入居できない中高年単身者の受け皿になっているからでもある。

(『孤族の国』から引用)

2010年6月。駐車場に止めてあった軽自動車の中から、死後3ヶ月の遺体が見つかった。神奈川県逗子市の公園の一角で、すぐそばに県立高校や保育所がある場所だ。誰にも気づいてもらえなかった。

車内の遺体はひどく腐乱していたが、DNA鑑定によって身元をつきとめた。秋田県出身の55歳の男性だった。以前はアパートで暮らしていた。しかし借金の取り立てに追われて夜逃げ同然で飛び出した。そのあとはずっと軽自動車に寝泊まりしていたようだ。

司法解剖の結果は病死だった。軽自動車の後部座席でひとりきりの生涯を終えた。身元不明の孤独死は「行旅死亡人(こうりょしぼうにん)」として官報に記載される。

結婚して子供も産んだのに孤独死

からすたちよ、窓辺に集まって騒ぎ立てておくれ
みんなに知らせておくれ
私が腐乱死体になるまえに
みごとに独りになりました
三人も子供を産んだのに

(『孤族の国』から引用)

孤独死は、未婚者だけの問題ではない。奈良県のマンションで暮らす80代女性は「三人も子供を産んだのに」心細くてたまらないという。

夫とは死別。長女は亡くなった。長男と次女とは付きあいが少ない。孤独死をおそれるようになったのは、自宅でひとりのときに転んで脱臼したときだ。こわくなり、119番するときに思わず叫んだ。そのとき「もしかして私、不幸やったのかな」と不安をおぼえたという。三人も子供を産んだのに。

介護離職、親とふたりきりの生活の行きつく先は

残業を終えて帰宅すると、母は出走直前の競走馬のような目をしていた。明け方まで続く徘徊の前兆だ。

「向こうへ行ってろっ」。思わず頭をたたくと、みるみるうちに白髪が鮮血に染まった。急いで病院へ。

「次は通報します」と医師は言った。

(『孤族の国』から引用)

アルツハイマー型認知症のせいで四六時中歩きまわる母とふたりきりで暮らす、50代の未婚男性。

介護をきっかけに退職した。昼間だけデイサービスに預けて、パートタイムやアルバイトの仕事をするつもりでいた。しかし「介護による欠勤」を許してくれる勤め先が見つからない。母の年金だけで暮らすしかなかった。あばれる母とふたりきりの24時間365日。追い詰められて、おもわず手が出てしまった。

核家族化と高齢化の組み合わせは、「ひとり対ひとり」の息が詰まるような状況を作りだす。介護に明け暮れて、看取ったのち、残された者はひとりになる。

孤独死をむかえるのは未婚者や単身世帯とはかぎらない。人生の袋小路に迷いこんでしまわないように、あらかじめ余裕をもって備えておくのはもちろんのこと、不幸や孤独死というのは思いがけず生じるものだからこそ、国家や市民有志によるセーフティーネットの整備が欠かせない。

(文:忌川タツヤ)

孤族の国 ひとりがつながる時代へ

著者:朝日新聞「孤族の国」取材班
出版社:朝日新聞出版
急増する「単身世帯」。いま、恐るべき勢いで社会のかたちが変わっている。高齢になったら、病気になったら、職を失ったら――その先には孤立という罠が待ち受けている。駐車場に止められた車の後部座で発見された55歳の男性、39歳の餓死、中国で婚活・結婚したものの破綻し蓄えを失った男性、震災後に離散した集落、独身無職女性の苦悩など多数の事例から変容する家族と社会のあり方を追ったルポ。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事