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驚愕!!イギリス最大の輸出品って、これなの??

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子供の頃から、イギリスが好きで好きでたまらない。
周囲の友達は、花の都パリに憧れたり、自由の国アメリカはニューヨークでミュージカルを観たいと言っていたが、私はただひたすらにイギリス、それもロンドンに執着した。
もし、重病になり、余命いくばくもないと宣告されたら、痛み止めをたくさんもらい、すぐにロンドンに行くだろう。
そして、1ヶ月間、ロンドンで暮らすのだ。
たとえ、ホテルで横たわっているだけでもいい。
ロンドンの空気を吸っていられれば、満足だ。

イギリス最大の輸出品は英語であるって本当?

いつそうなってもいいように、ロンドンの地下鉄路線図を眺めてばかりいるし、予定もないくせに、しょっちゅうロンドンのホテルの予約状況をチェックしている。
地元っ子しか知らないというロンドンの見所をネットでサーチするのも欠かさない。
しかし、『私の孤独なろんどん』(東耀子・著/パレード・刊)を読み、驚愕した。
私が憧れる「ロンドン」と著者が書く「ろんどん」の間には、大きな隔たりがあると知ったからだ。
何より驚いたのは、次の一節だ。

イギリスには膨大な数の語学学校がある。ブリティッシュ・カウンシルの認定を受けているものだけでも四百校以上ある。イギリス最大の輸出品は英語である、という言い方もあるように、英語教育はイギリスという国にとっても一大産業だ

(『私の孤独なろんどん』より引用)

そうなの?
イギリス最大の売りは英語なの?

輸出、そして、輸入の微妙なバランス

日本の外務省は、「イギリスの一番の輸出品、それは英語です」と発表してはいない。
ホームページを見てみると、イギリスの輸出品とし、まずは原油・石油製品があげられ、次に自動車、医薬品、発電機となっている。
一方、輸入はといえば、やはりまずは原油・石油製品で、自動車、食料品、電気機器だ。
しかし、よく考えてみると、私の周囲には、英語を学ぶためにロンドンに滞在している人があまりにも多い。
貯金を投じてイギリスに行き、かなりの金額を語学学校におさめ、高額なアパート代を払い、毎日を英語を習得するために捧げているけなげな学生たち。彼らは大英博物館に行く暇もないという。
たとえ、正式な統計には現れなくても、ある意味では、イギリスの一番の輸出品は英語なのかもしれない。

追い詰められてロンドンへ

『私の孤独なろんどん』は、31才になった著者・東燿子が、会社を辞め、母親の大反対を押し切って、ロンドンに行き、そこで暮らした経験をまとめたものだ。
彼女は余命を宣告されたわけではない。
しかし、すべてに追いつめられ、生きていく力を失いそうになっていた。
強引に結婚を勧める母親との仲も、険悪な状態に陥っていた。
仕事もプライベートも、両方ともうまくいっていなかったのだ。
一生懸命、働いて、必死で生きているというのに・・・。

たった一人でロンドンへ

その頃の自分について、著者はこう記す。

 三〇歳、女、東京在住。
年収約三〇〇万円、月給から細々と日本育英会の奨学金を返還中。1Kのアパートに一人暮らし、車なし、ペットなし、未婚。それが当時の私のスペックだった。
(『私の孤独なろんどん』より引用)

彼女は結婚が絶対に嫌だというわけではなかった。
ただ、結婚というものに猛烈なプレッシャーを感じ、友人が結婚する度に焦り、不安定になっていく自分が嫌でたまらなかったのだ。
そこで、とにかく会社を辞め、旅立ってしまう。
誰にも見送られず、たった一人で・・・。

ロンドンの現実

ロンドンでの暮らしは、31歳から34歳まで続いた。
最初はホームスティしながら、語学学校の学生として暮らし、やがて、その語学学校で働くようになった。
その間、彼女が経験した数々のことは、ロンドンに憧れてきた私には、厳しく切実な問題として胸に迫るものばかりだ。
たとえば、ホームスティ先の家族がまったく理解できず、悩み、恐怖心さえ感じる日々。
そうかと思うと、バスの中に置いてきてしまった忘れ物をあきらめずにしつこく頑張って探した結果、とうとう見つけ出した冒険談。
エトランゼ同士、不思議な男友達たちとの、デートといえないようなデート。
ガイドブックには載っていない現実がそこにはある。

異なる環境があなたを変える

人間は異なる環境にぶち込まれると、自分でも思いがけない反応をする。
リトマス試験紙が、酸やアルカリによって、色を変えるように、私たちも異なる環境にさらされ、様々な反応をする。
東燿子が過ごした「ろんどん」の日々は、孤独であると同時に、幸福をつかみ取るために歩き続けた長い長い散歩であったと信じたい。

(文・三浦暁子)

私の孤独なろんどん

著者:東燿子
出版社:パレード
三〇歳、女、東京在住。責め立てられるような仕事、結婚を迫る母からの電話。干渉の多い日本の日々捨てて、彼女は憧れの地へ向かう。多様な人種のなかで、孤独と青春を知る。ロンドンの息遣いを書き綴るショートエッセイ集。

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