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エサを与えないほうが殺処分が減る!

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2005年(平成17年)におけるネコの殺処分数は、およそ22万頭だった(環境省調べ)。

それから約10年をかけて、各地の行政やボランティアたちの取り組みによって2014年(平成26年)の殺処分数は、およそ8万頭まで減少している。

猫の殺処分数の1/4(約2万頭)は、飼い主などによる行政施設への持ちこみ。

猫の殺処分数の3/4(約6万頭)は、野良猫を収容したもの。

殺処分される野良猫のうち75%が子猫だという。4頭中3頭という大きな割合であり、1年間で約4万5千頭の子猫が殺処分されている。

現在の日本において、ノラに生まれてしまった子猫の多くが殺処分される運命にある。無用の殺生を避けるためには、野良猫を繁殖させない取り組みが必要だ。

野良猫にエサを与えてはいけない理由

住民による過剰なエサやりは、野良猫に繁殖するためのエネルギーを与えてしまう。妊娠や出産には多くのエネルギーが必要なので、エサを与えなければ子猫を産むまでには至らない。

殺処分の悲劇が発生するメカニズムは、以下のとおり。

野良猫にエサをやる

あてにして毎日やってくる

栄養状態が良くなる

繁殖できるようになる

子猫が産まれる

母猫が子猫をつれてくる

エサをやる

子猫が成猫になる

孫猫が産まれる

母猫と子猫と孫猫がやってくる

きりがない! \(^o^)/

メス猫は、生後1年をまたずに妊娠できる。栄養状態が良ければ、猫は年に何回も繁殖できる動物だ。

野良猫が増えれば、糞尿の匂いや鳴き声などのクレームが地域住民から寄せられて、殺処分対象になってしまう。

野良猫にエサを与えているのは誰か?

ねこはすごい』(山根明弘・著/朝日新聞出版・刊)によれば、1日のほとんどを家で過ごすことが多い在宅のお年寄りが、野良猫にエサを与えがちだという。

わたしが街のなかで調査した限りでは、過剰なエサやりをしてしまうのは、ひとり暮らしの方、特に高齢の方が多いように思います。
(中略)
ひとりでテレビを見ながら一日じゅう家のなかで過ごす寂しい毎日。そんな時に、ノラねこがエサを求めて訪ねてくれば、エサをあげてしまうのが普通ではないでしょうか。

(『ねこはすごい』から引用)

孤独なお年寄りでなくても、かわいい野良猫を見つければダメだとわかっていてもエサを与えたくなる。日本で暮らす1億を超える人たち全員に「エサやりの弊害」を呼びかけるのは不可能に近い。

「地域猫活動」の取り組みが成果をあげている

ここまで説明してきたように、悲劇のメカニズムは解明されている。すでに各地の行政や地域ボランティアが対策を講じており、殺処分数は右肩下がりで減少している。

1997年(平成9年)に神奈川県横浜市ではじまった「地域猫活動」という取り組みがある。いまや全国各地に広がっており「一代限りの地域猫が天寿を全うし、その地域での野良猫の数をゼロに近づける」ことを目標としている。

「地域猫活動」は、過剰なエサやりが殺処分につながるという啓蒙活動のほかに、行政や獣医師と協力して、野良猫の不妊去勢措置をボランティアでおこなう。

去勢は、病気を予防したり発情期に関わりがある尿の悪臭を緩和する。いちばんの目的は繁殖能力を奪うためだ。そもそも子猫が産まれなければ、野良猫は自然減する。殺処分しなくて済む。

最近では、野良猫たちのオスやメスとしてのアイデンティティを奪わないためにパイプカット子宮摘出をおこなう事例も増えている。従来の去勢手術とはちがって精巣や卵巣を温存するので、野良猫たちは青春を謳歌できるというわけだ。精子と卵子が出会わないので、いくら交尾しても繁殖には至らない。

処置をおこない「地域猫」として認められれば殺処分対象ではなくなる。すべて人間の都合によるものだが、わたしたちと野良猫が共存していくために考えられた妥協策のひとつだ。

(文:忌川タツヤ)

ねこはすごい

著者:山根明弘
出版社:朝日新聞出版
熊より強い、3メートル以上跳ぶ、人の死を予知、家電も使えるetc.知られざるねこの「強さ」「五感」「観察力」「治癒力」などに迫る。ねこ研究の第一人者が、「猫島」での長年のフィールドワークで得た、ねこの“すごい”生態や行動などの最新情報を紹介。

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