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知られざる「頭髪」三国志。キミの毛は生き残ることができるか?

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「髪はオンナの命」と言うけれど、男性にとっても「頭髪」は命の次に大切なものだ。満足できる髪のボリュームを確保するためならば、オトコたちは多額の出費もいとわない。

我が国の頭髪産業は、カツラ市場と植毛・育毛・発毛市場をあわせれば2000億円規模だ。映画館の年間興行収入と肩をならべる。特に男性にとって「頭髪のなりゆき」は、ハリウッド映画やジブリアニメにも匹敵するエンタメ性をそなえている。

ハゲの定義

ひとくちに「ハゲ」と言っても、いろいろある。病気やストレスによって毛髪を失う人もいるからだ。

これ以降「ハゲ」と記している場合、加齢によって頭髪の面積が少なくなる「男性型脱毛症」のみを指している。ツルピカすなわちスキンヘッドも含まない。あらかじめお断りしておく。

カツラーの本音

最近はずいぶん「良く」なっている。信頼のおけるメーカーの高品質カツラならば「ムレる、ズレる、バレる」ことが極力少なくなっているらしい。

ぼくらはみんなハゲている』(太田出版)によれば、カツラ利用者のなかにはカミングアウトの機会をうかがっている者が少なくないという。「隠したいけれど、隠したくない」という複雑な心境だ。なぜか?

ひとつは、隠し事をしている後ろめたさに耐えられないから。
もうひとつは、カツラー(カツラ利用者)同士で情報交換をおこなうためだ。

髪ングアウト倶楽部

これだけネットショッピングが発達しているのに、「カツラの有用な情報」を探すのは容易ではない。ハゲ具合には個人差がある。ゆえにオーダーメイド品であるから価格.comやAmazonでは取り扱っておらず、集合知によるカスタマーレビューが機能していない。

そのうえ現代のカツラは精巧なので、カツラーですら他のカツラーを見破るのは難しい。購入や買い替えにあたって、参考にすべき材料が少なすぎるのだ。

髪ングアウト倶楽部は、カツラーが集うサークルだ。50名ほどの会員がいるという。休日に集まって、ボウリング大会などを楽しむかたわらで、互いのカツラをレビューしあう。家族や同僚などにカミングアウトするための心構えなどを学ぶこともできる。

頭髪産業の三国志

『アデランス』と『アートネイチャー』。カツラの代名詞ともいえる有名企業の創業者が、おなじ企業の出身であることをご存じだろうか?

その名は『ボア・シャポー』。日本ではじめて女性用カツラを売りだした会社であり、日本の頭髪産業の祖ともいえる存在だ。吉永小百合を起用した大々的な広告戦略や訴訟上等のセールス手法など、元祖『ボア・シャポー』が築きあげたノウハウを踏襲して、アデランス、アートネイチャーいずれも東証一部上場企業にまでのぼりつめた。

日本の頭髪企業の多くが『ボア・シャポー』出身者によって創業されたともいわれている。
そんな状況に一石を投じたのが『リーブ21』だ。独自の発毛研究をおこなっていたクリーニング業者━━テレビCMでもおなじみの岡村社長によって1993年に本格スタートした。

当時、「カツラ」企業であるアデランスとアートネイチャーが頭髪市場を寡占しているなか、独自の発毛技術だけを頼りに100億円企業へと成長を遂げる。リーブ21は頭髪産業における第三極として頭角をあらわしていった。三国志でたとえるなら、いわば蜀漢だ。

ハゲの願い

ぼくらはみんなハゲている』は、フジテレビの深夜に放送されたドキュメンタリー番組をきっかけに出版された本だ。著者の藤田慎一さんがディレクターを勤めたその番組は、放送当時、少なくない反響があったという。

藤田さんが番組ディレクターに選ばれたのは「ハゲていた」からだ。カツラ使用者や薄毛の人から本音を聞きだすためには、取材するほうもハゲている必要がある。

その原則にしたがって「スタッフは、ハゲにしか頼まない」という徹底ぶりだ。(女性スタッフについては、円形脱毛症の経験者を起用した)

藤田ディレクターの徹底した方針が功を奏したのか、ドキュメンタリー番組『ぼくらはみんなハゲている』は好評を得て、あらためて本にまとめた同名の著書も充実した1冊に仕上がっている。

特に、テレビ・新聞・出版業界ではタブーである「頭髪産業にまつわるトラブルや訴訟」について多くのページを割いている。300万円も費やしたのに発毛しない、植毛施術で傷が残った、かぶったら蒸れて余計にハゲた……など、頭髪ビジネスの闇が告発されている点にも注目したい。

(文:忌川タツヤ)

ぼくらはみんなハゲている

著者:藤田慎一(著)
出版社:太田出版
神はなぜハゲを創り給うたか!? モテるハゲ、モテないハゲからカツラメーカーの実態まで、現代日本最大のタブー(かもしれない)「ハゲ問題」を、自らもハゲゆく著者が追う、新世代ルポルタージュ。フジテレビ系ドキュメント番組『NONFIX』シリーズでオンエアされ「勇気づけられた」「なんでこんなものをわざわざ放送するのか」と、賛否両論の大反響を呼んだ同名番組に、大幅な追加取材をくわえて待望の書籍化。そして、電子書籍化

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