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テレビの催眠術ショーは「やらせ」とはかぎらない

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催眠術師が暗示をかけることによって、すっぱいはずのレモンが甘いと感じるようになる。そんな光景をテレビ番組の催眠術ショーで見たことがある。にわかには信じられなかった。

あれは「やらせ」なのか。ふつうに考えれば「やらせ」だとしか思えない。生レモンをかじれば耐えられないほど強烈にすっぱいはずだ。聞くところによれば、ミラクルフルーツというくだものを食べたあとには、レモンのようなすっぱいものが甘く感じるそうだ。たとえウソをついてなくても何かの仕掛けがあるのかもしれない。

テレビで若手タレントが催眠術師に暗示をかけられて「レモンが甘い。うそ信じられない!」という反応を見せたとする。そのテレビ出演者はウソを言っているのだろうか。わたしはそうは思わない。催眠術は、必ずしも「やらせ」でないと思う。

グルメ番組の食レポで「この店の味つけは好きではない」とか「まずい」と言わないのと同じだ。テレビ出演者が本当の気持ちを表明していないことを「やらせ」とは言わない。内心の自由であってウソではないからだ。

あえて言うなら「自己保身」と「思いやり」によるものだ。

催眠術と悪い習慣の共通点

あくまでも、催眠状態になってもいいと許可しているのは、催眠にかかったその人自身なのです。

(『自由自在に自分を操る! 1分催眠法』から引用)

催眠術師の暗示をうけて「レモンをまるかじりして甘く感じる」という常識では考えられない発言を自分に許可したのは、テレビ出演者本人だ。

そもそもテレビの催眠術ショーに出演するということは、催眠術を肯定的にあつかおうとする場へ自主的に向かったということだ。担当マネージャーから事前に何かを言い含められていたとしても、これからレギュラー本数を増やしていくためにテレビ局のプロデューサーに顔を売りたいと思っていたとしても、たとえどのような事情があろうとも、生レモンをまるかじりして「酸っぱくありません。甘いです」と断言したのは、そのテレビ出演者本人だ。ウソや「やらせ」だと決めつけることは難しい。

以上のような事情によって、テレビ番組の収録現場が一種の催眠状態におちいりやすいことはたやすく想像できる。催眠状態のもとでは、人間は意思に反した行動をとってしまうことがある。

ついやってしまう悪いくせや習慣をやめられない人がいる。悪癖を治せない人は、もしかすると無意識のうちに催眠状態におちいっているのかもしれない。

たとえば、何度も注意したのに予定の時刻にやってこない人がいる。時間にだらしない人が遅刻を繰り返すのは、遅刻することを「自分に許可」しているからだ。遅刻癖がなおらない人は、どれだけ反省したつもりでも無意識のうちに許可しているから遅刻する。

「遅刻をしたくないけれど遅刻をしてもかまわない」という悪しき催眠状態におちいっているのだ。

ヒトは変わらない生き物である

私たちは「変わりたいけれど、変われない」のではなく、じつは「変わらない」ようにプログラミングされているのです。

だから、変わることが難しいのです

(『自由自在に自分を操る! 1分催眠法』から引用)

わたしたちが悪い習慣から抜け出せないのは、ヒトがそなえている恒常性(ホメオスタシス)の作用によるものだ。

体温を36℃前後に保ったり、血圧や血糖値を保ったりするように、わたしたちの肉体の健康状態は「変わらない」ことによって維持されている。たとえば、血糖値の恒常性に欠かせないインスリンは、すい臓という器官が分泌している。

同じように、わたしたちたちは自我(じが)という精神の働きによって、自分が自分であること(自己同一性)を維持している。

自我(じが)のはたらき

私たちは自我を持っているから、いつも自分らしくいられます。毎日、同じように考え、同じように振る舞うことができます

(『自由自在に自分を操る! 1分催眠法』から引用)

自我そのものは物事の善悪を判断できない。ひたすら「精神の恒常性」を発揮するのみだ。

「精神の恒常性」がもたらす自己同一性とは何か。たとえば、あなたがマリオだとする。誰かに「ねえ、ルイージ」と呼びかけられたとき、「自分はルイージではなく、マリオである。弟ではない。兄である」と判断できれば、あなたは自己同一性を保っている。自我は、あなたがあなたであることを見失わないために欠かせないものだ。

自我がチェックするのは、過去の記憶と同じかどうかだけです。

(『自由自在に自分を操る! 1分催眠法』から引用)

遅刻ばかりしていれば、自我は「自分=遅刻するのがふつうな人」と判定する。時計を見て、たとえ約束の時間に遅れそうであっても、遅刻ばかりしている人の自我は、その情報を重視しない。自我は善悪を判断できないからだ。自己同一性のみを判定する。このような自我のはたらきこそが、悪い習慣を自動的に許可してしまう原因なのだ。

じつは身近な催眠状態

生まれてから今までの記憶は、潜在意識に蓄積されている。自我は、潜在意識内の情報をもとに判定する。悪い習慣を治したければ、いままでの記憶=潜在意識の質を変えればよいことがわかる。

自由自在に自分を操る! 1分催眠法』(矢澤フレイ伸恵・著/すばる舎・刊)の著者が提唱しているのは、手軽な催眠法によって潜在意識を書き換える試みだ。しかも、自分ひとりだけで手軽におこなえる。催眠術は、魔法でも超能力でもなければスピリチュアルでもなく、有効なセルフコントロールの技術だ。

たとえば、朝。

目が覚めた直後は、頭がぼーっとして、しばらくの間、寝ぼけたような状態が続きますね。

これもじつは催眠状態です。

(『自由自在に自分を操る! 1分催眠法』から引用)

ほかにも、通勤電車のなかで過去のことを思い出してるとき、休日の予定を立てているとき、本や映画などに夢中になっているときなど、空想や感情移入も一種の催眠状態であるという。

遅刻癖を治せない人の場合、会議や商談に遅刻して怒られたときのイヤな記憶や、このままでは勤め先をクビになるかもしれない不安などが、自我を通して潜在意識に蓄積されていく。すると、あなたの自我はあなたのことを「遅刻したあとのことばかり考えている=遅刻することが好きな人」だと判定してしまい、ますます遅刻を繰り返すようになっていく。

不健全な催眠状態から脱するには?

悪癖から脱するための第一歩は、ぼーっとしているときにネガティブ(否定的)なことを考えないよう気をつけることだ。

わたしたちは「1日に5万回、心の中でつぶやいている」といわれている。ぼーっとしているときに心のなかでつぶやいたことが、あなたの潜在意識に影響を与えている。気をつけるべきだ。

小さな成功体験を積みかさねることによって、潜在意識を書き換えることが可能だ。遅刻したくないのになぜか遅刻してしまうという人は、どこへ行くときにも到着時刻を定めて行くと良いかもしれない。

近所のコンビニや自動販売機へ向かうときには、制限時間や到着予定時刻を定める。たった数百メートル先でも、予定どおりに目的地に到着したという体験を積みかさねれば、すこしずつ潜在意識の質が変わっていくのではないだろうか。

(文:忌川タツヤ)

自由自在に自分を操る! 1分催眠法

著者:矢澤フレイ伸恵
出版社:すばる舎
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