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大相撲ニュージェネレーション

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宇良くん――いや、プロの力士で、すでに関取になっているのだから、宇良関だ――というアスリートをご存知だろうか。関西学院大学を卒業後2015年3月場所で初土俵を踏み、5月場所でいきなり全勝優勝を果たし、その後順調に出世して、デビュー後わずか7場所で関取となった。

力士という名のアスリート

公式プロフィールを見ると、身長172センチ、体重113キロとなっている。体重はともかく、身長は高い方とは言えないだろう。
しかし、宇良関の特徴は信じられないくらいの筋力と瞬発力、そして空間認識能力にある。鮮やかな桜色のまわしで出場した2016年5月場所でも、らしさをいかんなく発揮した相撲が2番あった。
まずは4日目。天空海戦で投げの打ち合いになり、自分の方が下にいることがわかったのだろう。踏ん張っている足が土俵から離れる瞬間に飛び跳ねるような動きを見せ、自ら空中で一回転し、頭から落ちるタイミングを遅らせた。取り組み後のインタビューで、そういう動きをすれば勝てるチャンスが高まると思ったので反射的に回転したと語っていた。
10日目の出羽疾風戦では、十両の取り組みで6年ぶりとなる腰投げという決まり手で勝った。相手の左腕をつかんで左脇に挟み込みながら、自分の腰を支点にして相手の体を右にひねり、そのまま土俵下に投げ飛ばした。

技のデパートと、その先輩

体があまり大きくないのに、天性の相撲センスとでも言うべきものを発揮して人気者となった力士といえば、何と言っても舞の海関と智ノ花関だろう。特に、技のデパートなんていうキャッチフレーズが付いた舞の海関は、三所攻めというきわめて珍しい技で3回も勝っている。
舞の海関の大学の先輩である智ノ花関も、居反り(いぞり)というかなり珍しい決まり手で勝ったことがある。ちなみに、冒頭で紹介している宇良関は、アマチュア時代にこの技で有名になった。プロの力士になった宇良関の初の居反りがいつ炸裂するか。相手は誰になるのか。記録に残る一番になることはまちがいないだろう。

宇良関の向こう側に見える栃赤城関

筆者は、野球やサッカーに向けるのと同じくらいの情熱で相撲を見続けている。小学生の頃からだから、40年以上になる。当然ながら、思い入れが強い力士が何人かいる。まず挙げたいのは、70年代後半に活躍した栃赤城関だ。相手に背中につかれて土俵際まで追い込まれても、体を回転させて残し、そこから反撃する。流れの中、体が反応するままちょん掛けとか逆とったり、そして腕捻り(かいなひねり)という珍しい技を繰り出して勝ってしまう。サーカス相撲なんていう形容もされたが、その取り口は見ていて楽しく、相撲ファンの増加に大きく貢献した。上背は181センチなので宇良関より9センチ高いが、体つきといい、取り組み中の動きといい、宇良関には栃赤城関の姿がオーバーラップする。

外国籍力士列伝

史上初の外国籍関取となった高見山関から、小錦関、曙関、そして武蔵丸関と続いたハワイアンブームの系譜が一時代を築き、現在は旭鷲山関に源を発するモンゴリアンウェーブの時代になっている。この二大潮流の陰にも、忘れがたい外国籍力士たちがいる。
まず挙げておきたいのは、しこ名にロマンを感じるアルゼンチン人力士、星誕期(ほしたんご)関と星安出寿(ほしあんです)関だ。どちらも十両上位まで出世して、星誕期さんは日本に帰化してかつてのしこ名を本名にし現在は実業家・タレント・プロレスラーと三つの顔を持っている。星安出寿関は引退後ワールドカップ2002年日韓大会の時にアルゼンチンチームの通訳兼ボディーガードとして来日し、それをきっかけに、今はサッカーを主体にした広告代理店で働いているという。
グルジアとかブルガリア、エストニアなどヨーロッパ出身者は、たとえば大関まで昇進した把瑠都関や琴欧州関がいる。以外に少ないのが北米とイギリスだ。カナダ出身の琴天太(琴天山)は、85年11月場所初土俵、序の口から三段目まですべて7戦全勝優勝で駆け抜けたが、腕の刺青を手術で消すよう要求されたこともあり、結局相撲界に馴染めず廃業した。関取にはなれず、86年に無敗のまま廃業した。
力士生活を8ヵ月で終えた白人力士がもう一人いる。イギリス出身の英ノ国だ。身長193センチ、体重102キロという恵まれた体をしていたが、こちらも相撲界のしきたりや体質に馴染めなかった。ちなみに、同期生のひとりに後に横綱になる武蔵丸関がいて、89年の九州場所で対戦し、負けている。

スー女も必携の一冊

 『大相撲 誰も教えてくれなかった見かた楽しみかた』(工藤隆一・著/河出書房新社・刊)は、取り組みの注目点から始まって具体的なテクニック、さまざまな所作の意味と解説、大前提に戻って相撲界の仕組み、そして力士の一生、生涯収入、力士以外の相撲関係者の仕事など、相撲を見るのに必要と思われる情報をすべて網羅している。最後に収録されている「10の名勝負」には、スポーツ新聞の相撲担当記者ならではの思い入れが感じられる。
国技とか神事とか、重めの言葉で形容されることも多いが、まずは息の長いプロスポーツとして楽しみたい。インターナショナルでスピーディー。ショーマンシップとテクニックを兼ね備えた新世代の力士も多い。この一冊を観戦ガイドに、次に来るスター力士を見つけよう。

【関連URL】
日本相撲協会「ハッキヨイ!せきトリクン」(http://www.sumo.or.jp/sekitorikun/index)

(文:宇佐和通)

大相撲 誰も教えてくれなかった見かた楽しみかた

著者:工藤隆一
出版社:河出書房新社
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