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10人分払う太客1人と1人分を払う一般客10人、どちらを選ぶべき?

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フリーで活動しているとある舞台役者が、1人の年配女性に惚れ込まれた。彼女は彼の全10公演の舞台のチケットのすべての回、つまり1人で10枚も購入してくれた。心強いファンを得たところまでは良かったが、彼女は次第に劇場帰りの彼を待ち伏せするようになり、「あの女優さんと仲良くしないで」「私以外のお客さんに優しくしないで」などと束縛し始めた。そうこうするうちに他のファンから「あの人なんなの?」とクレームが到来した。劇場周辺での出待ちは禁じられているからである。彼はまだ新人でファンは10人ほどしかいない。さて彼は太客1人と一般客10人と、どちらをより大切にするべきだろうか。

ホームランは不安定

『まんがでわかる指名される技術(1)六本木ホステスから盗んだ、稼ぐための仕事術』(堀江貴文、斎藤由多加・著/ゴマブックス・刊)にも、同様のシーンが出てくる。店の周年記念でホステスの売り上げ額を競わせ、1位を獲ったらボーナスが支給されるというイベントがあった。とあるホステスはドンペリを入れてくれる太客だけに狙いを定め、競争は彼女の圧勝と見られていた。しかしイベント当日に番狂わせが起きた。その太客が体調を崩し、来店できなくなってしまったのだ。結果、売り上げ1位に輝いたのは、どんなお客様にもきめ細かく対応し、一定の来客数を保ち続けていたホステスだった。

本によると、太客だけに頼るタイプは「ホームラン型」。お客様の支払い金額が大きいので華やかで目立つけれど、その人を失うと途端に窮地に陥ってしまうので不安定だ。まんがの中でも「一発大きな成功をすることが重要だという錯覚に陥ってしまいがち」だけれど「本当のプロとは安定して「3割打率」が維持できる人のことです」と語られている。大判振る舞いをする豪勢な人もありがたいけれど、地道にコツコツ通ってくれるお客様の数を増やしてこそ売り上げは安定するからだ。

たった1人のお客様

さて、太客1人と一般客10人との間で板挟みになった新人役者はどうなったかというと、太客1人を選んでしまった。彼の言い分はこうだ。「10人の客に気を使うより、1人の客のごきげんをとっていたほうがラクだし効率的にチケットが売れるから」。かくして気をよくした太客は、全10公演すべてに友達も連れて来るようになったので、合計20枚のチケット購入となり、彼の売り上げは倍増した。周囲からも「すごいお客さんがいるね」と驚かれ、彼は得意満面であった。一方で、元々いた10人の一般ファンの多くは太客に気圧され去っていってしまったが、結果的に売り上げは伸びたわけだから、彼は自分の選択は正しかったと思っていた。

極太客の存在で注目されたからか、彼の元には新たな舞台の出演依頼がいくつかやってきた。しかし、しばらくするとどうも様子が変だということに彼は気づいた。与えられたのはどれもセリフが少なく、重要な役ではなかったからだ。そして彼よりも後にデビューした役者達が、彼よりも先に主演に抜擢されていった。主催者側からすれば、太客に確実にチケットをさばけて重宝するから彼を起用したにすぎず、つまり彼の演技が評価されたわけではなかったらしいのだ。

覆水盆に返らず

焦った彼は演技力で取り戻そうとしたけれど、常に大量買いしてくれる太客がついているわけだから、甘えてしまい、動きにキレが出ない。服や靴やコンビニで使うプリペイドカードまで面倒をみてもらうようになってしまい、ハングリー精神が失われてしまったのだ。そして太客の女性にメールアドレスを教えた途端、毎晩のようにメールが来るようになり、返事をしないと「そんなんじゃもう応援しないから」などと執拗に責められるという。逃げ出したくても、たったひとりのお客様となった彼女を失うわけにはいかないので、耐え続けるしかないそうだ。

『まんがでわかる指名される技術』にもホステスのプライベートに入り込んでくる男性客がいたが、「それを許してしまったのはあなたよ」とホステスがママに叱られていた。こうやって読むと、役者の世界とホステスの世界には共通項があるようだ。もし役者の彼が10人の一般客のほうを選び、真摯に芝居に打ち込んでいれば、今ごろは目覚ましい成長を遂げていたのではないだろうか。

(文・内藤みか)

まんがでわかる指名される技術(1) 六本木ホステスから盗んだ、稼ぐための仕事術

著者:堀江貴文、斎藤由多加
出版社名:ゴマブックス
ベストセラー・ビジネス書早くもまんが化! 本書は『指名される技術』を原案として、それをよりわかりやすくマンガ化したものです。ホステスさんたちがいるクラブ業界は、心が折れそうになる、そんな激しい競争の中でクライアントをリピートさせる高度な技術を数多く持っている人たちがたくさんいる業界であり、そこに学ぶことはとても多いものです。
しかしそれにもかかわらず誰もその価値に全く気づいておらず、ママたちが書く本などは何かと「情熱」とか「真心」といった精神論や美学で片付けられています。この「見向かれぬ価値」に目をつけ、彼女たちの手法を分析しつつできた書籍版『指名される技術』を、よりわかりやすく、まんが化しました。

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