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美食家のフランス人もうなった焼き菓子レシピ

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私の長年のフランス暮らしを支えてくれた本がある。それが『こんがり、焼き菓子のシンプルレシピ』(上田悦子・著/学研プラス・刊)だ。この本は2002年に発刊になったムックの構成やサイズを変更して2015年に再出版されたものだが、私は2002年にパリにたった一軒だけある日本書店でこの本を買い、ずっと使い続けてきたのだ。

手作りに優るものはない

著者でパティシエの上田さんはこう言っている。

私は手作りに優るものはないと信じています。家で簡単に作れておいしくて安全なものは、いつの時代も不変です。

(『こんがり、焼き菓子シンプルレシピ』から引用)

実はこの考え方がフランス人たちもある。彼らにとって最高のおもてなしとは、たとえ狭いアパート暮らしだとしても、自宅に招いて手料理をふるまうことなのだ。
また、ティータイムとか、持ち寄りホームパーティなどに誘われたら、手作りのお菓子を持って行くのがいちばん喜ばれる。
パリには、ケーキやチョコレートの有名店がたくさんあり、日本からもたくさんのパティシエが修行に行く。もちろん、それらの店のお菓子はとてもおいしい。
でも、フランス人の家に招待されたときには、買ったお菓子を手土産にしても、実はあまり喜ばれなかったりする。焼き型に入ったまんまの気取らない手作りのタルトやケーキが、高級菓子店のパッケージより優るというわけだ。買ってきたお菓子を出す人は「ごめんなさい。とても忙しくてお菓子を焼けなかったの、今日はこれで許してね」と、ひとこと言い訳したりしなくてはならないのだ。

誕生日には手作りケーキを

私は38歳のときに渡仏したのだけれど、それまでお菓子を自分で焼いたことはなかった。作るのが面倒だし、自分ではうまく作れないと思い込んでいたのだ。
ところが娘が現地の学校に通うようになったとたんに、お菓子を焼かなければならない状況に追い込まれた。
フランスの学校ではわが子の誕生日に母親(あるいは父親)が手作りのお菓子を焼いて持っていくという習慣がある。誕生日を迎えた本人が先生やクラス全員にケーキやタルトなどをふるまって祝ってもらうのだ。
もちろん買って持って行ってもいいのだけれど、そうすると「○○ちゃんちのママはケーキ買ってきちゃったんだよ」なんてヒソヒソささやかれることになる。

というわけで、私は慌ててパリの日本書店へレシピ本を探しに行った。フランス語のレシピでは間違って読んだら失敗しそうだし、また、日本人からするとフランスのレシピは砂糖とバターの分量が多すぎるように思えたからだ。
日本から空輸された本は送料上乗せ価格なのでとても高く、何冊も買うことはできない。たった一冊、ぜったいに使える一冊を選ばなければならない。そして選んだのが神戸に店を持つ上田悦子さんの『こんがり、焼き菓子シンプルレシピ』だったのだ。
プロセスがすべて写真付きの解説なので、お菓子作り初挑戦の私にも分かりやすく、必要な道具、材料の紹介や失敗せずに焼くコツも親切丁寧に紹介されていて大助かりだった。

ガトー・ショコラに初挑戦

スーパーで材料を買いさっそくガトー・ショコラに挑戦。バターとチョコレートを溶かし、卵白を泡立て、卵黄にグラニュー糖を混ぜ、小麦粉やココアパウダー、生クリームと合わせていき、レシピ通りに丸型に流し入れた。
幸い、フランスではガスレンジでも、電気レンジでもオーブンと一体型になっているのが普通で、わが家で使っていたものもレンジの下側が大型のオーブンになっていたので、ケーキやタルトがふたつくらいは同時に焼けた。
ドキドキしながらオーブンの前に座って待つこと40分、ガトー・ショコラが焼きあがった。型から外して崩れるのがこわいので、冷めてから粉砂糖をふって、そのまま娘の通う学校へ持って行った。
さて、ぶっつけ本番のガトー・ショコラだったが娘も「おいしかったよ」と言ってくれたし、クラスメイトのチビッ子たちからも「セ・テ・ボン」(おいしかった)と言ってもらえ大成功、めでたしめでたし、となったのだ。

手土産にはパウンドケーキを

レシピ本は一品がおいしければ、ほかもすべておいしいものだと思う。次に私が挑戦したのが、混ぜて焼くだけのパウンドケーキのウィークエンド・レーズン。ラム酒に漬けたレーズンを入れたケーキで、焼き上がりにレモン汁と粉砂糖を合わせたアイシングを塗って仕上げる。
自分で焼いて食べてとてもおいしいと思ったので、フランス人の家に招かれるたびにこれを手土産にしていた。美食家のマダムやムッシュも、「セ・トレ・ボン!」(とてもおいしい)と、うなるおいしさで、何人からもレシピを教えてと言われ、仏訳のメモを書いて渡していたくらいだ。

クッキーはティーンたちに大うけ

上田さんのレシピでは、クッキーもらくらく焼けた。チョコとアーモンドをのせたアメリカンクッキーやチョコチップクッキーは、娘が通っていた中学と高校のどちらでも大人気となり、事あるごとに娘とふたりで焼いて持って行ったものだ。

そうしていつの間にか、「お菓子作りが上手だね」なんて言ってもらえるまでなったのだが、それはもちろん私の実力ではなく、上田さんのレシピのおかげなのである。

いつか上田さんのお店、神戸の『ラトリエ・ドゥ・マッサ』、あるいは石垣島の『ミニョン teatime ISHIGAKI』を訪ね、オリジナルの焼き菓子を味わってみたいと思っている。

(文:沼口祐子)

こんがり、焼き菓子のシンプルレシピ

著者:上田悦子
出版社:学研プラス
お菓子の街、神戸の「ティータイム」はお菓子研究家・上田悦子さんの店。
家庭的で優しい味と評判の焼き菓子のレシピを初心者向きに紹介。
混ぜて焼くだけのパウンドケーキ、スコーンとパンケーキ、型のいらないクッキー、失敗なしのレシピばかり50品。

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