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小説家になるには“体力”が必要だ!

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今から10年ほど前、フリーライターの僕におもしろい仕事がやってきた。それは「小説家のサポートをしてくれませんか?」というもの。

僕はこの仕事を始めてから、仕事の内容は選ばないようにしていた。ファッション、アマチュア無線、パソコン、建築、写真、野菜、グラフィック、音楽、車、携帯電話、各種参考書……。依頼があった仕事はなんでもやっていた。

「小説家のサポート」という仕事

しかし、「小説家のサポート」というのは初めてのこと。いったいどんなものなのかまったくわからず、とりあえずその小説家の方とお会いすることにした。

その小説家の方の名前は、仮にAさんとしておこう。Aさんは、ミステリー作家で、50歳を過ぎてから小説執筆を開始。そしていくつかのコンテストで優秀賞を取ったあと、有名なミステリー文学賞の新人賞を受賞してデビュー。今は次回作を執筆中ということであった。

僕が依頼されたのは、小説内で使われるパソコンを使ったトリックについてアドバイスをしてほしいということと、舞台となるインターネットのサービスについて教えてほしいということだった。

そのときは、僕が知っていることを聞かれるままに答えただけだったのだが、その後も電話で何度か長いやりとりをし、トリックの具体的なアイデアやディティールをアドバイスし、最終的には原稿の素読みまで行った。小説家という職業に触れることができて、とても貴重な経験ができたと思っている。

文章を書くための“体力づくり”が重要

何がなんでも新人賞獲らせます!』(鈴木輝一郎・著/河出書房新社・刊)は、ミステリー&歴史小説家である著者が、新人賞を取るためのノウハウを伝授する書籍だ。

著者が主催する小説講座では、まず自分で締め切りを設定して原稿用紙5枚の小説を書かせる。「締め切りを守ること」と「5枚書くこと」が重要なので、中身は一切問わない。「あいうえおかきくけこ」でもいい。

そして、それができるようになったら、次は書く枚数を50枚にする。それができたら300枚というように、どんどん書く枚数を増やしていく。

これは、いわば「体力づくり」だ。長い文章を書くというのは、とても体力がいる。この体力というのは、肉体的なものももちろんだが、精神的な“体力”(ちょっと矛盾している表現だが)も指しているのだろう。

マラソンをするのならば、42.195kmを走りきれるだけの体力が必要。サッカーをするなら90分フィールドを駆け回れる体力が必要。小説を書くのなら、原稿用紙300枚以上書ける体力が必要。その体力がなければ、スタートラインにも立てないということだ。

ストーリーの組み立て方や、キャラクター設定などは、その体力が付いてからのお話。まずは「書いて書いて」体力を付ける。スポーツで言えば「走り込み」を充分に行うようなものだ。

新人賞受賞の壁はおそろしく高い

本書によると、新人賞の受賞倍率は1%未満ということ。東京大学の合格率が約30%。小説家への壁というのは、実はおそろしく高い。

そして、新人賞を受賞してからコンスタントに作品を世に出せる人は、そのなかのまたほんの一握り。

先述のAさんに「三浦さんも小説書いてみたらどうですか?」と言われたこともあったが、そのときは「いやいや、僕なんて……」と返事をした。

でも、最近では「何か書きたいことができたら書いてみようかな」というくらいの気持ちになっている。まあ、そうそう小説書きたいという気持ちにはならないのだが……。

仮にそんなときがきたら、本書に書かれていることを思い出し、小説を書くための“体力”を付けていくことから始めようと思う。

(文:三浦一紀)

何がなんでも新人賞獲らせます!

著者:鈴木輝一郎
出版社:河出書房新社
カウンター読書法、複式履歴書法、ストーリー作成技法…。独自の小説講座から、多数の新人作家を輩出してきた著者が明かす、作家志望者必読の書!

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