ハウツーが満載のコラム
文字サイズを変更する

働かずに生きる。それだけが私の望みです

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

不登校・ひきこもり・ニート・SNEP(孤立無業)

いわゆる「人生うまくいってないひと」を見分けるためのラベルだ。犯罪ではないから前科にはならないし戸籍にも載らないので、たんなる「レッテル」にすぎない。

ひとくちに「人生」と言っても様々だ。人が生きる道のひとつに「ひきこもり」があっても良いのではないだろうか。

ひきこもりの日常

警察庁によれば、オレオレ詐欺(振り込め詐欺)の平成26年被害額は約376億円だという。ピンチに陥っている我が子を救いたいという親心につけこむ、きわめて悪質な犯罪だ。

その点、我が子が自宅の部屋でひきこもっている家庭ならば、オレオレ詐欺は成立しない……とも、かぎらない。『安心ひきこもりライフ』の著者である勝山実さんによれば、あやうく父親がカネを振り込みそうになったという。

長年にわたって一日の大半を自室ですごす生活を送っていた勝山さんは、その日たまたま原付免許を取得するために早朝から外出していたのだ。オレオレ電話を受けたとき、いつもいるはずの我が子が部屋にいないので、お父さんは「もしかして、外出先でトラブルにあったのかもしれない」と思ってしまったらしい。さいわい、未遂に終わった。

「ひきこもりなのに外出するのか?」という疑問があるかもしれない。外出するひきこもりだっている。トイレや風呂以外の時間をずっと自室で過ごすという「ひきこもりイメージ」は一部のマスコミによって過大に作りあげられたものにすぎない。

「ひきこもり像」の歴史

「ひきこもり」や「ニート」などのレッテルは、世間の耳目をひくためのセンセーショナルなネタとして、テレビや新聞や出版などのマスコミがさんざん利用してきた歴史がある。

1997年に朝日新聞で『人と生きたい 引きこもる若者たち』という連載が開始される。翌年には『社会的ひきこもり 終わらない思春期』という新書が出版された。精神科医の斉藤環による新書版の解説本であり、当時の帯に印刷されていた「ひきこもりは100万人」という記載は、いままで無関心だった多くの読者の興味をひいたという。

2000年に発生した「西鉄バスジャック事件」の犯人(通称・ネオむぎ茶)は、高校中退後に2年間ほど「自室にこもって2ちゃんねるに熱中していた」時期があったため、事件後には「ひきこもり=犯罪者予備軍」と見なされるようになってしまった。

それから数年間は、ひきこもり否定派と擁護派のあいだで激しい論戦が繰り広げられたことにより、良くも悪くも「ひきこもりバブル」の様相を呈した。この時期に社会復帰を果たすことのできた者もいれば、ひきこもり矯正施設で命を失ってしまった者もいるという。

そして「ひきこもりバブル」にも終わりがおとずれる。それが2004年であり「Not in Education, Employment or Training」つまり「ニート」という新たなレッテルが登場したことによって。勝山さんいわく、そのあとバブルがはじけて「ひきこもり不況」に突入していったという。

理念はおなじ

ニート全盛時代の代表作ともいえる『ニートの歩き方』は、今回紹介した『安心ひきこもりライフ』をアップデートしたような内容だ。著者は現役ニートのphaさんであり、京大卒の人気ブロガーという経歴の持ち主だ。

『ニート』→『ひきこもり』の順に読んだが、ふたりの著者の主張には共通点が多かった。

努力しなければできないことには手を出さない。普通の人があたりまえに、呼吸をするようにやっていることを、死に物狂いの訓練で身につけたところで、生きるのが嫌になるだけです。
(『安心ひきこもりライフ』から引用)

いずれの著者も、現代日本でまかりとおっている労働観や人生観への違和感を表明している。そして、インターネットをはじめとして、家族や国の制度など使えるものはなんでも活用して生きればそれで良いじゃないか、と何度も書いていた。

要するに「働きたくない」「働かずに生きたい」ということなのだが……いまだ人類がいっさいの労働から解放されるきざしは見られない。

(文:忌川タツヤ)

安心ひきこもりライフ

著者:勝山実(著)
出版社:太田出版
ひきこもり歴20年の著者による、全国160万人のひきこもりと、その予備軍のための実践的ひきこもりマニュアル!! 「ひきこもりをいかにして就労させ、社会参加させるか」という従来の問題設定を否定し、まずはひきこもることの後ろめたさを取り除いて、安心してひきこもり生活を楽しむコツを伝授します。計画停電に合わせて寝る超エコ生活、1万円札に緊張する金銭感覚、毎日が屋内退避の安全生活…。人生のあらゆる石ころにつまづいてきたひきこもりだからこそ、見えること、言えることがある??。一生ひきこもってても、働かなくても大丈夫!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事