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下を向いて歩けば意外な発見がある

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海外でもヒットした「上を向いて歩こう」は、言わずと知れた坂本九氏の名曲だ。空を見上げれば、晴れ渡る青空、はたまた満天の星空が広がる。美しい大自然が目に飛び込んでくる。気分を晴れやかにしてくれるのだ。

“下”を向いて歩いてみると

“下”を向いて歩くのも、決して悪いことではない。上を向くことが前向きなイメージを持つのに対して、なんとなく落ち込んでいるとか、マイナスなイメージでとらえられることが多いかもしれない。

けれども、地面を注意深く観察すると、いろいろなものがあることに気づく。パッと目に付くのはゴミや石ころ、タイルなどだが、アリンコの集団などの小さな生き物たちの営みが見られることもある。たまに小銭(10円玉など)をゲットできることもある。路上観察の観点から見ると、下を向けば、普段気にも止めないものが印象深く浮かび上がってくるのだ。

下を向いて歩いて、マンホールの面白さに目覚めた人がいる。『マンホール博物館 関東編』(戸山学・著/学研プラス・刊)は、その名の通り、関東各地のマンホールを集めた写真集だ。以前、マンホールの上に紙を敷いて、魚拓ならぬ“マンホール拓”をとっている人を見たことがあるが、意外にもマンホールマニアは多いようだ。

マンホールから地域が見える

マンホールを見ればその土地の名物や風土、文化がわかると筆者は話す。

本著に収録されたマンホールを見てみると、例えば、新選組のふるさとである東京都の日野市には、新選組隊士をキャラクター化したイラストがプリントされたマンホールがある。しかも1枚1枚ポーズが異なるなど、芸が細かい。千葉県木更津市には月夜に踊るタヌキの姿が描かれているが、これは童謡「証城寺の狸ばやし」のモデルになった場所が市内にあるためだ。埼玉県川越市は“小江戸”と呼ばれる風情ある街並みを描いている。

無味乾燥な、いかにもマンホールらしいマンホールは減少し、地域のお祭りや名所をデザインするのが、静かなブームになっているようだ。ひょっとすると、旅先では観光案内所のオネーチャンの話を聞くよりも、マンホールを探してみるほうが、手っ取り早く地域のことを理解できるかもしれない。

工業製品なのに工芸的な魅力

マンホールのデザインは、基本的には円形という制約がある。にもかかわらず、よくこれほど多種多様なデザインをするものだと感心してしまう。

話が逸れるが、最近、日本刀ブームで東京国立博物館を取材した。刀そのものも美しいが、付属品も江戸時代の工芸技術の結晶である。特に目を引いたのが“鍔”だ。円のなかに精緻な文様や四季折々の風物を刻み、なかには蒔絵を施しているものもある。

円はクリエイターを魅了する図形だ。マンホールは工業製品ではあるが、どこか“鍔”に通じるような、工芸的な美しさを感じることができる。ふだん意識されることのないものにも徹底的にこだわりぬくことが、日本文化の奥深さなのかもしれない。

(文:元城健)

マンホール博物館 関東編

著者:戸山学
出版社:学研プラス
●日本が誇る足元カルチャー、マンホールの魅力をギュッと凝縮したビジュアルブックが登場! 東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城、栃木、群馬の関東地方一都六県のマンホール約230個をご紹介。「消火栓のマンホール」などテーマごとにまとめた小特集も充実です!
●マンホールで知る! 地域の魅力花、木、鳥、魚といった自治体のシンボルから、名産、名勝、祭りにキャラクターまで! 各地域ならではのバラエティ豊かなデザインが一挙に楽しめます。
前を向いて歩くのもいいですが、たまには目線を下げてみてはいかがでしょう? 新しい発見があるかもしれませんよ!

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