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コールセンターで働く人はもっと尊重されるべき

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コールセンターは2種類に分けられる。インハウスは、企業の一部門として設置されている社内コールセンターだ。アウトソーサーは、外注請負企業が代わりに業務をおこなっている社外コールセンターのことだ。

インバウンドとは、顧客からの問い合わせに応じる業務のこと。アウトバウンドとは、勧誘や督促や調査のために電話をかける業務のことだ。

当コラムでは、おもにアウトソーサーによるインバウンド業務(外注コールセンターによる問い合わせ窓口)について述べる。

コールセンター業界の市場規模

売上規模は、6千億円から8千億円だと言われている。

業界の労働人口は数十万人から100万人。はっきりしないのは、繁忙期にあわせて雇用人数を調整するので変動が大きいからだ。離職率の高さも要因のひとつだ。

特にインバウンド(問い合わせ窓口)業務は、高ストレス環境だと言われている。日本におけるコールセンターの実態が『ルポ コールセンター 過剰サービス労働の現場から』(仲村和代・著/朝日新聞出版・刊)で紹介されている。

コールセンター業務のくわしい内容

コールセンター内で問い合わせ電話を受け付けるのは「オペレーター」だ。その背後には「スーパーバイザー」と呼ばれる管理職がひかえている。

オペレーターは、スーパーバイザーによって監視されている。いま何件の「待たせている問い合わせ客」がいるか。1件あたりの処理時間をオーバーしていないか。1時間あたりの処理件数をクリアしているか。すべての情報がスーパーバイザーによってモニタリング(監視)されている。オペレーターがトイレに行く回数も例外ではない。

なぜ厳重にモニタリングするかといえば、発注元の企業にわかりやすく示せる数字が「処理件数」であるからだ。外注企業であるアウトソーサーにとっての営業成績を示すものであり、センター内では1件でも多く「処理」することが最優先される。

あるコールセンターの繁忙期には、1日あたり10万件の問い合わせを電話で受け付けるという。オペレーターのノルマは1時間あたり8.5件。1件につき7分以内で処理しなければならない。

1件の処理時間の内訳は「通話5分、保留1分、後処理1分」であり、そのうえ適切な回答や案内をおこなう必要がある。問い合わせ客のあつかいを誤れば2次クレームにつながる。ノルマを達成できないという状況がオペレーターにストレスを与える。

迅速さと正確さを求められるうえに理不尽なクレームの聞き役までおこなう業務内容からもわかるとおり、コールセンター業務は「誰にでも出来るカンタンなお仕事」ではない。本来は、熟練したオペレーション技術と経験を要する専門職なのだ。

コールセンター誘致の実態

コールセンターであれば、建物と通信設備さえあれば、どこでも開設できる。製品を運ぶ必要もないので、都会から離れていることで輸送費や時間がかさむというデメリットがない。

また、ある程度まとまった雇用も見込める。仕事がないため人口が減り、街がすたれていくという悩みを抱える自治体側にとっては、補助金を出してでも来てほしい、いや、来てもらえる可能性がある業種なのだ。

(『ルポ コールセンター 過剰サービス労働の現場から』から引用)

かつて、コールセンター誘致は「特効薬」だった。地方自治体にとっては、税収増・雇用創出・人口維持にまつわる問題を一挙に解決できる。企業にとっては、安い人件費と土地代、そのうえ優遇税制と補助金によって他社との競争力を確保できた。

現在では、コールセンター誘致に「多額の補助金は当たりまえ」の状況だという。言い換えれば「補助金だけではコールセンター進出の決定打にならない」ということだ。

「ワイロを寄越せ」という話ではない。先に述べたように、コールセンターのオペレーターは専門職だ。頭数をそろえるだけでは意味がない。企業誘致をのぞむ自治体に求められているのは、コールセンター向けの人材育成を含めたさらなる政策だ。

かつて地方の工業高校は、自動車産業向けに人材供給源としての役割を果たした。長期的な税収増や雇用創出のためにコールセンターを誘致したければ、教育機関や専門学校に「コールセンター科」あるいは「テレマーケティング科」を新設して、専門技能をそなえた人材を育てる態勢を整備するくらいの意気込みがなければ、これからのコールセンター誘致合戦には勝てない。

勝ち組企業のインハウス事例

コールセンター業務は、顧客のニーズをとらえる最前線だ。現状のような「尻ぬぐい係」あるいは「非正規労働者の受け皿」と見なして軽んじるべきではない。

(1)購入した製品やサービスの問題を解決したいお客。(2)潜在的な問題や新商品ニーズを知りたい企業。(3)できるだけ長く働きたい労働者。アウトソーサー(外注コールセンター)がひたすら処理件数を追求することによって、三者それぞれにミスマッチが発生しているのが現状だ。誰の得にもならない。

本書には、増収増益を続けている食品大手カルビーのインハウス(社内コールセンター)事例が紹介されている。外注コールセンターではなく「問い合わせ電話を本社で受け付けている」という当たり前の状況が、問い合わせ客に安心感を与えるのだという。正規雇用・ノルマなし・トイレ休憩が自由な職場環境は、オペレーターの受け答えの質にも大きく影響しているようだ。

(文:忌川タツヤ)

ルポ コールセンター 過剰サービス労働の現場から

著者:仲村和代
出版社:朝日新聞出版
「ぶっ殺す」「言い訳なんか聞きたくないわよっ!」「だからお前は電話番といわれるんじゃ、ぼけ」──追いつめられた人が、またほかの誰かを追いつめる場所“コールセンター”。「1年間の離職率9割」を生む過剰サービス社会の見えざる実態に、朝日新聞記者が迫る。

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