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〝エクスマ〟は定番みやげから学べ!

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ハワイのお土産の大定番、マカダミアナッツチョコ。これを作っているハワイアンホーストという老舗ブランドをご存じですか? 超有名なので、誰でも一度は見たことがあるはず。独特のロゴマークを配したパッケージはよく知られているが、ここで紹介したいのは、その裏面に印刷されている文章だ。

マモル・タキタニの物語

ちょっと読んでみよう。

マモル・タキタニは、幼い頃から世界一のお菓子屋さんになりたいと思っていました。やがて、自分で生み出した〝魔法のような〟レシピで作ったマカダミアナッツチョコを売り出し、それがマウイ島で大好評になり、ホノルルにも店を出すことになりました。
ホノルルに新店舗を構え、社名をハワイアンホーストに改めて商売を始めると、すぐにオアフ島中で大好評を博しました。
ローカルたちに大好評の〝ハワイらしい〟チョコレートは、旅行者にとってこれ以上ないお土産になりました。ハワイアンホーストを真似て商品を作る会社はとても多かったのですが、マモルのレシピのクオリティを再現できるメーカーはありませんでした。
当社の製品は、生まれた時からレジェンドだったのです。さあ、箱を開けてひとつ口に入れてみてください。世界中で愛されている味を体験し、楽しんでください。

多くの会社がレシピを真似したが、出来上がる商品は単なるチョコレートで覆ったマカダミアナッツでしかなかった。もちろん味は劣る。それに、決定的なちがいがあった。

ユニークなアイデア

文章の隣には、タキタニ夫妻、デリバリー・トラック、そして工場で働く若い女性のレトロな写真が並べられている。誰がどうやって作って、どのようにお客さんに届くか。写真の並びもストーリーになっている。
商品キャラクターにしたハワイの神様ティキとインパクトあるロゴをパッケージ表面に並べ、誰が見てもハワイアンホーストの商品とわかるようにした。裏面には、商品のストーリーを綴った。
そして旅行者が機内持ち込みの手荷物にしやすいよう、丈夫な取っ手が付いた6個入りパックの箱を作った。6個入る箱があるのに、3個しか買わない人はあまりいない。さらに、店頭に試食分を沢山準備しておいてお客さんに配り、ハワイにいるワクワク感の中でチョコレートを食べるという体験を刷り込むためのシチュエーションを作った。こうした立体的なマーケティングで、売り上げはどんどん伸びていった。

エクスマとは何か

『安売りするな!「価値」を売れ!』(藤村正弘・著/実業之日本社・刊)のテーマはエクスペリエンス・マーケティング、略して〝エクスマ〟だ。グッズやサービスを提供するだけではなく、それに付随するエクスペリエンス=体験も一緒に売ることを意味する。極論してしまえば、お客さんが商品を手に取ったり、サービスを受けたりする時点での主役はその場の空気なのだ。
この本に、沖縄県読谷村の名産品紅いもを使った〝紅いもタルト〟というお菓子の話が出てくる。
紅いもタルトは発売と同時に爆発的なヒット商品となったが、こういう商品に類似品はつきものだ。オリジナルと類似品を食べ比べれば違いは歴然だが、類似品しか知らない人は、味を基にして明らかな区別はつけられない。しかも、本家が有名になればなるほど、オリジナルと類似品との混同の度合いが深まってしまう。

商品の差別化を決定づける要素

では、このメーカーはどうしたのか。

そこで、ほかとは違うことは何かと考えました。
開発物語。
沖縄や読谷村に対する社長の思い。
会社のお菓子に対する哲学。
商品や味は真似できますが、これは真似できません。それを機会あるごとに発信していったのです。
商品の箱に入れるしおりとオリジナルの小冊子を新たにつくりました。すでに活用していたホームページやメルマガ、アンケートなどでも発信しました。

『安売りするな!「価値」を売れ!』より引用

これがエクスマ。さらに文章は続く。

味以外の思いやお菓子の哲学、開発物語などを発信することが独自の価値になり、ちがいが際立ち、オリジナルだということが伝わり出したわけです。味や材料へのこだわりだけでは価値は伝わりません。

『安売りするな!「価値」を売れ!』より引用

50年前のエクスマが育み続けるブランドイメージ

ハワイの空気の温かさや風の匂いに直結するマカダミアナッツチョコの商品イメージは、発売以来色褪せることがなかった。お土産を渡す人は自分の楽しいエクスペリエンスを語り、それがお土産を受け取る人にも伝わる。楽しげなイメージはじわじわ広がり、ブランド力がますます強まっていく。ド定番には、ド定番となるべき絶対的な要素がある。
「名物にうまいものなし」なんて言うけど、うまいとかまずいかとかとは別次元で、ワン・アンド・オンリーなストーリーと楽しいエクスペリエンスが伴わない名物なんてありえないのだ。

(文:宇佐和通)

 

安売りするな!「価値」を売れ!

著者:藤村正宏
出版社:実業之日本社
マーケティング書のベストセラーが遂に電子書籍化! 「売れる商品はない。売れる売り方があるだけ」「伝え方ひとつで売上は10倍違う」「商品・サービス・ブランドを独自化すればお客さまに選ばれる」と語る著者の、具体的かつ実践的な手法がギッシリ詰まった1冊。実際のチラシやPOP、ニューズレターも紹介されており、今日からのビジネスに即役立つ。Gunosyに掲載されて大反響を呼んだ「売れるチラシの作り方10の法則」も電子書籍版限定の特別付録として収録! 読まなきゃ損の充実の内容。

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