英語の〝最初のひと言〟を出やすくする方法

極端な言い方をします。日本に住んで日本で働いて、興味がまったくなく、仕事との接点もないなら、無理して英語を勉強しようなんていう人はいないはずだ。
ただ、たとえばゴールデンウィークや年末年始に、たとえばハワイに家族で行こうと思ったら、その瞬間から非日常であるはずの英語を無視できなくなる。添乗員さんが完全アテンドしてくれるツアーであっても、24時間一緒にいてくれるわけではない。多かれ少なかれ、英語を媒体として自分から発信しなければならないシーンは必ずある。
英語ができるって、具体的にどういうこと?
英語ができる人とは、どんな人だろうか? 大多数の人たちが思い浮かべるイメージは、英語で書かれた量子力学の専門書をガンガン読み下して理解する人ではなく、いわゆる日常会話を流暢に聞こえる英語でこなす人ではないだろうか。
中学校から正式に始まる日本の英語教育は、これまで読み書きに重きが置かれてきた。実際に使うということを考えると、受験英語の弊害を訴える意見もいまだ根強い。
慣れ親しんだ読み書き中心の枠組みの中で考えるなら、英語ができる人というのは、読み書きに長けている人というイメージに直結してもよさそうなものだが、決してそうではない。英語ができるということのイメージは、書ける・読める<話せる、なのだ。
TOEIC高得点者もペラペラとは限らない?
国内有名企業でも英語力の指標とされているTOEIC。ところが、会話力のバロメーターとしては絶対ではないようだ。以前別のお題のコラムでも触れたが、とある某有名英会話学校で講師をしている友人によれば、かなりのハイスコア―850点以上―を取る人であっても、世間一般のイメージで言う〝ペラペラ〟なレベルに達しているとは言い難いらしい。
TOEICで高得点を取る人は英語を聞き取る能力があるので、耳から入った音を口で再現するというプロセスが苦にならない場合があるという。ただ、TOEICはリスニングパートとリーディングパートだけで成るテストなので、ハイスコア=英語を流暢に話す、とはならない。
小学生はもう始めてるぞ
日常会話重視傾向は、2008年に小学校5、6年生を対象にスタートし、2011年に必修化された公立小学校での英語教育プログラムにも垣間見える。スタート時点での小学校英語教育は、英語に親しみ、外国の言葉や文化に慣れ、積極的に英語を使う姿勢を養うための時間と定義されていた。
今では、一部マスコミで小学校での英語の授業が〝すっかり定着した〟という表現が使われている。さらに、文部科学省が2013年末に新機軸を打ち出した。東京オリンピックが開催される2020年をめどに、英語授業を小学校3年生に前倒しして、5年生からは国語や算数と並べる形で正式な教科になるらしい。
TOEICでも英検でも問われる〝話す力〟
TOEICでも、2016年1月からTOEIC SPEAKING & WRITING TESTが開始されている。TOEICを運営しているETSのウェブサイトを見ると、背景として「職場や日常生活で英語を利用する機会が増えると共に、企業や学校でのスピーキングとライティング能力を測定するニーズが高まった」事実が示されている。
これに先立つこと10年、英語圏への留学希望者を対象とした英語のテストであるTOEFLでも、2006年から開始されたインターネットベースのテストにスピーキングパートが盛り込まれている。日本独自の英語テストである英検でも、2016年からすべての級でスピーキングテストが行われることになった。
日常生活においてさえ英語が必要とされる場面が増えてきているのだ。となれば、筆者が冒頭で述べた極端なもの言いはもろに時代遅れであることになる。いずれにせよ、英語運用力に占めるスピーキングの割合は確実に増している。
日常会話程度の英語の正体
「日常会話程度はできます」ってよく言うけど、そういう英語のレベルはどのくらいなんだろうか。これについても、極端なもの言いをお許しください。食べたいものや行きたい場所、あるいは欲しい服のサイズとか色を伝え、それについて返ってきた答えを完全に理解できるレベル。それでどうだろう? ならば、海外旅行で必要なところを押さえておけば十分なんじゃないんだろうか?
そこで、こんなのはどうでしょうか
『絵で見てパッと言う英会話トレーニング 海外旅行編』(Nobu Yamada・著/学研プラス・刊)は、そういうニーズに対するまさにどんぴしゃなチョイスだ。帯に、〝「発話の回路」を育てる新メソッド〟と記されている。
紙媒体英会話本は字面が多く、読むという作業が多くなりがちだが、この本は絵から語りかけられ、絵に語りかけるというインタラクティブな作りになっている。
各シーンの流れも、飛行機に乗ったところから始まって入国審査をして、タクシーや電車、バスに乗って、レンタカーを借りて、ご飯を食べて…というようにリアルな進行が工夫されている。この本の内容をまるまる覚えてしまえば、海外旅行ならおそらく困ることはない。
シリーズで基礎編も出ているので、併せて使えばボキャブラリーも増えるし、思っていることの伝え方のバリエーションも広がるに違いない。
明確な目的を持って何かをする時には、道具が大切であることを痛感させる一冊。
(文:宇佐和通)


絵で見てパッと言う英会話トレーニング 海外旅行編
著者:Nobu Yamada(著)、Kajio(絵)
出版社:学研プラス
自分でビデオカメラを持っているような一人称視点のイラストを見て、場面に合った簡単な英文をパッと組み立てる実践的トレーニング。文字だけの和文英訳と違い、リアルなイメージを伴ってシミュレーションできる。「発話の回路」を育てる新メソッド。
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