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オタクは「神話」が大好きである

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大ヒットしたエンターテインメント作品は、必ずしも斬新さやオリジナリティが評価されているわけではない。偉大なクリエーターほど模倣するのがうまい。盗んでもOKなものをうまく盗んでアレンジしてみせる。意外に思うかもしれない。

たとえば、『新世紀エヴァンゲリオン』は「使徒」「ロンギヌスの槍」(新約聖書)などのキリスト教ネタが満載だ。『ドラゴンクエスト』は「ロト」(旧約聖書)、『ファイナルファンタジー』は「ギルガメッシュ」(メソポタミア神話)や「オーディン」(北欧神話)を題材にしている。

神話や歴史的題材をうまくアレンジできることが、偉大なクリエーターやヒットメーカーになるための条件だ。先人が残したものを活用することは「巨人の肩の上に乗って進む」ということだ。より遠くを目指すためであってルール違反ではない。

偉大なクリエイターは神話を活用する

旧約聖書に登場するアダムイヴということばの響きは、それだけで原初を連想させる。新約聖書に登場するユダは裏切りを象徴するキーワードだ。

史上最大のベストセラーである『聖書』にまつわる用語が愛されるのは当然として、それに次いで人気があるのは北欧神話だ。ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)の元ネタであり、現代のさまざまなエンタメ作品にも引用されている。

発行部数2000万部の大ヒット漫画『ああっ女神さまっ』(藤島康介・著)は、日本人の男子大学生と若い女性たちの同居生活を描いたラブコメディだ。主人公のもとに押しかけ女房的にやってくるヒロインたち3人の名前は、「ベルダンディー」「ウルド」「スクルド」という。元ネタは、北欧神話に登場する「ノルン三姉妹」だ。

古代イギリスを発祥とするアーサー王伝説(聖杯探索物語)もクリエーターに人気だ。これを題材にした近年のヒット作には『Fate/stay night』(TYPE-MOON・作)がある。原作ゲームの人気だけにとどまらず、ソーシャルゲーム、アニメ、漫画などのメディアミックスによって大成功をおさめた。

『Fate』シリーズのあらすじは、登場人物たちが聖杯戦争と呼ばれるバトルロイヤルでしのぎを削りあうというものだ。主人公をはじめとする魔術師が、神話や伝説上の人物を召喚してバトルする。くわしく書くとネタバレになるのだが、ギリシア神話・北欧神話・ケルト神話・メソポタミア神話・イラン神話のほか、歴史上に実在した軍人や戦士の霊を召喚して戦うこともある。まさに「巨人の肩の上に乗る」ことによって大成功をおさめた事例だ。

さまざまな事例があらわすとおり、あらかじめイメージが定まっている神話や伝説や歴史上のキャラクターを活用することは創作者にとって大きなメリットがある。数百年前に死んでいる人たちならば著作権や肖像権の心配もいらない。

創作の第一歩は「ネーミング」から

小説やマンガを制作するならば、登場キャラクターに名前を付けなければいけない。だが、名付け(ネーミング)というのは実際にやってみると難しいことがわかる。

我が子に名前をつけるとしても、実際の赤ちゃんならば同時に生まれるのはせいぜい2人か3人だ。しかし、エンターテインメント作品を作るときに登場人物が2人や3人では足りない。少なくとも5~10人分のネーミング作業が必要だ。

クリエーターのための 人名ネーミング辞典』(学研辞典編集部・編/学研プラス・刊)には、約3900名の固有名詞が収録されている。職業別に分かれており「軍人/政治家」「皇族・王族/聖人・聖職者」「学者」「作家」「芸術家」「神話・聖書上の人物」の項目から探すことができる。

名字(カタカナ表記)、原名(外国語表記)、生没年、功績や代表作などを50~100文字以内でまとめた解説付き。ネーミングに性別情報は欠かせない。特に表記がなければ男性だ。女性、美女、女優、女神、魔女という表記によって性別がわかるようになっている。

巻末には「50音順索引」が付いているので、「ガ」ではじまる「ガブリエル」以外の人名を探したいとき、「ヴ」で始まるクールな響きの人名を探したいときなどに使える。

優柔不断な人のためには「Yes/Noで選ぶ、名付け決定フローチャート」も収録されている。「時代設定は?」→「ジャンルは?」→「ラノベか一般小説か?」→「貴族か庶民か?」→「正義か悪か?」などにYESとNOで答えていくうちに、イメージにふさわしいと思われる項目へと導いてくれる。

ユニークな収録項目

クリエーターのための 人名ネーミング辞典』は、創作用ネーミングの勘所がよく押さえてあるだけでなく、ギリシア・ローマ神話インド神話のほかに、オセアニア神話中南米神話アフリカ神話などの珍しい固有名詞をいくつも収録している。

アフリカ神話の項目を読んでいたら「ンガイ」という神様を見つけた。マサイ族の守護神だという。ファミコンソフト『熱血高校ドッジボール部』において、アフリカチームに「んじゃも」という選手がいたことを思い出してしまった。アフリカ大陸にあるチャド共和国の首都である「ンジャメナ」が由来だ。

そのほか、欧米に実在した17名の凶悪殺人犯のフルネームを収録している。有名どころを押さえてある。ミステリやホラー、ノワールやダークファンタジーを制作したい人にとって役立つかもしれない。

(文:忌川タツヤ)

クリエーターのための 人名ネーミング辞典

著者:学研辞典編集部(編)
出版社:学研プラス
クリエーターにニーズの高い、人名のネーミングに役立つ便利辞典。世界の歴史上から神話上まで、名づけにぴったりの人名を収録。軍人、聖人、政治家…などテーマごとに、簡潔な説明をつける。カバーには萌え系イラストを採用し、若年層から楽しめる一冊。

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