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支払った住民税の元を取りたい→公園の水をタダ飲みしよう!

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公園の水が好きだ。おいしい。しかも無料。ゼロ円。タダで飲めるのが良い。住民税の元を取ったぞー!という勝利感を得たとき、水道水は甘露になる。

わたしの住まいは、白山麓のふもとにある地方都市だ。外出するときには空っぽの水筒を持っていく。公園には水飲み場がある。町中に無料のドリンクバーがあるようなものだ。散歩やジョギングがますます楽しくなる。

日本は、むかしから水に恵まれている国だ。さかのぼること17世紀はじめの東京。すでに江戸の市中には上水道が整備されていた。

おどろくべき江戸時代の水道事情

江戸時代にも、ミネラルウォーターを買う文化があった。「水屋」と呼ばれる職業人がいたからだ。水を売る人であり、売り手がいるということは買い手がいたということだ。郊外──本所や深川あたりの住民たちに需要があったという。

ご存じの方も多いだろうが、江戸時代の初期からすでに上水道設備が整っていた。玉川上水や神田上水と呼ばれていたのがそれで、木樋(もくひ)と呼ばれる水道管が江戸市中まで通っていた。ただし、大川(隅田川)がさえぎっている深川や本所の住民たちは、上水(水道)の恩恵にあずかれなかった。

深川や本所は海に近い土地であり、地下水には塩分がふくまれているため飲み水には適さなかった。生活用水は井戸水、飲料水は水屋から買うというように使い分けていた。その後、1700年代になると亀有上水が整備されて、すこしはマシになったようだ。

長屋のひみつ

テレビドラマの時代劇では、長屋(ながや)をよく見かける。長屋に住んでいるおかみさんたちが、井戸のまわりで野菜を洗っていたり洗濯していたりする。あの井戸は上水の木樋につながっている。水道井戸という。300年以上も前から日本人は都市水道を使っていたことになる。イギリスのロンドンと同時期であり、フランスのパリに100年以上も先駆けていた。

江戸時代の水道料金はいくらだったのか? 長屋に住んでいる人たちの水道代は無料だった。家賃にふくまれていた。

長屋の所有者である「地主」や、地主に雇われた管理人である「大家(おおや)」は、実質的な町役人だった。長屋は現代でいえばアパートやマンションに相当するから、いわば公営団地ということになる。地主や大家は、町奉行所の配下として町の自治を請け負っていた。

当時、江戸市中に家屋を建てたとしても、借り手が支払える家賃が安すぎるために採算が取れなかったという。だから大地主は仕方なく「棟割長屋」を建てた。江戸の住宅対策でもあった。

大家さんの副業とは

長屋の管理をつとめるのは「大家」と呼ばれる人だ。落語でおなじみの「大家さん」は地主から給料をもらっていたが、その金額は微々たるものだった。その代わり、大家には役得があった。長屋における「糞尿の汲み取り権」を与えられていたのだ。年末にまとめて、契約している農家から少なくない金銭が支払われたという。

江戸市中の人々たちが排泄する「糞尿」は、肥料を必要とする農民たちが買い求めた。小松菜が東京都江戸川区小松川の発祥であるように、江戸の中心から2~3km離れたところには広大な農業地帯があり、さまざまな農産物が栽培されていた。食べて、出して、それを肥料にして、作ったものを食べて、また出して……江戸時代にはエコロジーなエコノミーが成り立っていた。

今回のコラムをまとめるにあたって3冊の本を参考にした。『時代考証事典』(稲垣史生・著/新人物往来社・刊)、『大江戸生活事情』(石川英輔・著/講談社・刊)、そして『大江戸食べコロジー』(ラズウェル細木・著/リイド社・刊)だ。3冊とも面白かった。

いちばん最後に挙げた本だけマンガだ。著者は、ラズウェル細木さん。1994年に連載を開始してから30巻以上も続いている『酒のほそ道』でおなじみのグルメ漫画家だ。酒や現代グルメだけでなく江戸の大衆文化にも精通しているので、マンガなのに新書本と同等の知識を得られる。

(文:忌川タツヤ)

大江戸食べコロジー

著者:ラズウェル細木
出版社:リイド社
お江戸の片隅、一般庶民が暮らす長屋に学問で身を立てようと志して引っ越してきた大身旗本の次男坊。何不自由のない暮らしから一変、見るもの聞くこと全てが知らないことだらけの生活に四苦八苦しつつも、身の周りのあらゆるものを上手に活用して無駄を一切出さない究極の“エコロジー生活”に目覚めていく。保存がきいて旨みも凝縮する発酵食品や乾燥食品、ゴミを出さず理に適った流通システムやリサイクルなど、現代人にとっては目からウロコのアイディア満載!

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