ハウツーが満載のコラム
文字サイズを変更する

大リーグの平均的監督像から見る、楽天大久保新監督の資質とは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

2015年から、福岡ソフトバンクホークスに工藤公康、東北楽天ゴールデンイーグルスに大久保博元が新監督に就任する。現役時代の実績では、200勝投手の工藤に軍配が上がるが、監督としてはどうだろうか。そこでこの二人の新監督に注目してみたい。

工藤といえば、西武→ダイエー→巨人→横浜→西武と渡り歩いた左腕投手で、通算224勝の通称“優勝請負人”。2010年に引退するまで29年間現役を務め、その後は解説者として活躍。そして今年から秋山幸二の後を引継ぎ古巣である福岡ソフトバンクホークスの監督に就任する。通算成績224勝142敗3セーブ。ニックネームはカリメロだ。

一方大久保は長打力のある捕手で、西武→巨人で10年現役選手として活動したあと、西武→楽天のコーチを務め、今年から東北楽天ゴールデンイーグルスの監督となる。通算成績は、打率2割4分9厘、ホームラン41本。ニックネームはデーブ大久保。

実績だけを比べると、明らかに工藤のほうが上。しかも工藤は、野球に対してとても真摯な態度で、周囲からの人望も厚い人物だ。 一方大久保は、西武と楽天でコーチを務めており、その手腕は一定の評価を得ている。西武時代に若手選手への暴力問題で解任されたり、プライベートでも女性への暴行事件や、隠し子騒動など、何かと週刊誌をにぎわす話題を振りまいてきたこともあり、楽天監督就任に関しては、内外から批判的な声が上がっていた。

大リーグ監督の条件は“二流選手”?

ここに、ひとつのデータがある。

阪神タイガースの元球団社長である野崎勝義氏が著した「ダメ虎を変えた!ぬるま湯組織に挑んだ、反骨の11年」に、ニューヨーク・タイムズの運動部ロナルド・コベット記者がまとめた「大リーグ監督の条件」という資料の抜粋が記されている。

選手の尊敬を勝ち得る人物であること。監督としての権威を保てる人物であること。選手の扱い方を心得ていること。試合の流れを全体の流れのなかで監督できる人物であることなど、監督としての資質についての記述のあと、記者自身が調査したデータがある。メジャーの平均的な監督像で、26球団時代の過去20年間を調べたものだ。

1.年齢は46.8歳
2.現役選手歴は、マイナーリーグの経験が5年3カ月
3.監督としてマイナーリーグの経験が、これも5年3カ月
4.現役時代のポジションは内野手か捕手
5.打者としての打率は大リーグ時代平均2割6分3厘
6.ホームランは大リーグ通算48本

つまり、選手としては平凡な人材、いわゆる“二流選手”が、大リーグの監督には多いということなのだ。

選手と監督は別の才能が必要

では、なぜ二流選手が監督になることが多いのか。それは、「選手と監督は別物」だからではないだろうか。

超一流選手は、誰よりも卓越したセンスを持ち、人一倍努力をしているはず。プレイに関することであれば誰よりも信頼がおけるはずだ。

しかし、監督は選手とは違う視点が必要な立場。監督は実際にプレイをするわけではない。状況を見て戦略を立て、最適な人材配置をして勝利を呼び込むのが役目だ。

また、シリーズ全体を通した戦略、さらには数年先を見据えたチーム戦略も行わなければならない。そうなると、プレイする能力とは別のマネージング能力のほうが重要になってくるだろう。

「名選手名監督に非ず」とは野球ファンでよく言われることだが、プレイする才能と、人に何かを教える才能、また人を使って結果を残す才能は別物。だからこそ、大リーグでは選手時代の実績よりも、マイナーリーグでの監督経験が豊富な人材が監督として活躍しているのだろう。

大久保新監督は大リーグの監督像に近い!

ここで前出のデータに大久保を照らし合わせてみよう。

1.年齢は46.8歳
1967年2月1日生まれ 48歳

2.現役選手歴は、マイナーリーグの経験が5年3カ月
10年現役生活を送った

3.監督としてマイナーリーグの経験が、これも5年3カ月
西武の一軍・二軍打撃コーチ、楽天の一軍打撃コーチおよび二軍監督

4.現役時代のポジションは内野手か捕手
捕手

5.打者としての打率は大リーグ時代平均2割6分3厘
2割4分9厘

6.ホームランは大リーグ通算48本
41本

どうだろう。大リーグ監督の平均データに近いのではないだろうか。

これだけで、大久保が名監督になると言うつもりはない。しかし、大久保はコーチ時代から若手育成について実績を残しており、個人的には指導者向きの人物なのではないかと思っている。

ただし、トラブルやスキャンダルを起こしやすいという点が気になるところ。その点では、工藤のほうが安心感や信頼感は高いと言える。

もうすぐ各球団が春季キャンプを開始する。そこで、両監督の手腕が発揮されることだろう。いろいろ言われている大久保新監督だが、ここはそのような声を吹き飛ばすくらいの好成績を上げて、“二流選手こそ名監督になり得る”というところを見せてほしいと思っている。

(文:三浦一紀)

ダメ虎を変えた! ぬるま湯組織に挑んだ、反骨の11年

著者:野崎勝義
朝日新聞出版
2000年代、2度のリーグ優勝を果たす常勝軍団に阪神を変えたのは、元球団社長、野?勝義だった。「ダメ虎でも黒字だから良い」というぬるま湯組織をどう改革したのか。野村・星野両監督の下でのチーム再建の実際とは。野球ファン必読の秘話満載で語られる阪神タイガースの再生物語。著者は2004年の1リーグ制移行問題で、巨人に立ち向かい2リーグ制維持に導いた立役者でもある。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事