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うちの犬が「いちばんかわいい!」

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チワワやトイプードルを飼っている人も、ブルドッグやシェパードを飼っている人も、み~んな「うちの犬が世界でいちばんかわいい」と思っている。人間の子どもは成長すれば親元から離れて行くけれど、犬たちはずっと一生飼い主の側を離れず子どものままでいてくれる。だから愛情一直線、親ばかになってしまうのだ。

そんな犬派におすすめなのが『あなたの犬は「天才」だ』(ブライアン・ヘア、ヴァネッサ・ウッズ、古草秀子・著早川書房・刊)。犬の先祖である狼は人間の敵だったのに、家畜化し、さまざまな犬種に進化して愛すべき存在になった話にはフムフム。また、どんな犬種でも人間の合図や言葉を理解し、私たちと協力しあう意欲を持っていることを明らかにする実験やその結果にも納得させられる。

「うちの犬はかわいいだけじゃなくて、天才だったんだ」と気づかせてくれる一冊だ。

ウルトラ・ジュエル誕生エピソード

巷は猫ブームだというが、私は犬派だ。というか、家族の一員に13歳の誕生日を迎えたばかりのメスのラブラドールがいるのだ。家の都合により異国フランスで育つことになった一人っ子の娘に”絶対に裏切らない相棒”を与えてあげたいというのが犬を飼う動機だった。

パリ郊外にあったブリーダーを訪ね、生後2ヶ月の子犬の中から娘が一匹を選ぶと、獣医兼任のムッシュは子犬の耳の裏に6桁のコード番号のタトゥーを施した。そして登録用紙にコード番号、犬の生年月日、犬種、毛の色などを記入し終えると「犬の名前はイニシャルUでつけてください」なんて言うではないか!

娘はジュエルと名付けると決めていて、自分のものとなった子犬を撫でながらすでに「ジュエル」と呼んでいる。さ~て困った。私と夫は顔を見合わせ必死で考え、そしてほぼ同時に叫んだ。「ウルトラ!」と。日本人の我々にはUといったらウルトラマンとその兄弟しか思い浮かばなかったし、ウルトラなら後ろにジュエルをくっつけてもおかしくない。こうしてうちの犬はウルトラ・ジュエル・ヌマグチという本名を持つことになったのだ。

フランスでは犬の戸籍があり、農林省に属する犬の協会が管理しているのだが、あまりに多くの犬が暮らしているので生まれ年でイニシャルを決め情報整理をしているのだという。うちの犬は2003年生まれでUだったのだ。フランス語では名前が付けにくいKWXYZを除いたアルファベットが順番に繰り返される。ちなみに今年2016年にフランスで生まれた犬はみんなMが頭文字で名付けられる。

犬は誰のジェスチャーでも読み取れる

さて、犬は天才だという本の内容に戻ろう。著者の動物学者ブライアン・ヘッズによると犬は初対面の人間の合図も読み取れるらしい。彼が多くの犬で実験したところ、はじめて会う犬でも人間の視線をたどり、指差した方へ向くという結果がでたという。

で、思い出したことがある。セーヌ川に浮かぶサンジェルマン島の公園には無料で入れるドッグランがあったのでうちの犬をよく連れて行った。犬は一匹狼にはなれないらしく、大型犬も小型犬もみんな群れて遊んでいた。私以外の飼い主はほとんどフランス人だったので、人間とは文法も発音もはちゃめちゃなフランス語で必死でコミュニケーションを取っていたが、犬にはフランス語で話しかけてあげることもないので日本語で通していた。

すると不思議、なんと犬には日本語が通じてしまったのだ。犬の名前を呼んで「こっちにおいで」と言えば、ついてくるし、遊んでいたテニスボールがなくなったときには「さあ、みんなでボールを探しに行って」と言ったら、まわりにいた数頭が一斉に走ってボールを探しに向かったのだ。

これに気を良くしたのがフランス人の飼い主たちで「うちの犬は日本語が分かる」とあちこちで自慢しまくっていたらしい。

本当に言葉が通じていたのかどうかは定かではないが、私の視線やジェスチャーを犬たちが読み取っていたことは確かだと思う。

犬は犬より人間が好き

犬は人間と親密な関係を築くが、それは動物の世界では他に類がないものだ。犬は犬どうしよりも人間を好み、人間の子供が両親に見せるような行動をとる。もし「愛」という言葉を「温かい、個人的な愛着、または深い好意」と辞書が定義するなら、犬が私たちに抱いている感情は、まさしく愛である。(『あなたの犬は「天才」だ』から引用)

うちの犬は犬としての自覚に欠けているんじゃないかと思うことがしばしばある。娘とは姉妹同然に育ったので、何事も人間と一緒を好むし、人間みたいなしぐさを見せることもよくある。家族の会話もある程度は理解しているようだ。

現在、私と夫は日本に帰国し、娘と犬だけがパリで暮らしている。出発前に私は言い聞かせてみた。「ジュエル、お前はお姉ちゃんの側にいるためにウチにきたんだよ。だからね、病気になったらだめ、怪我もしちゃだめ。ずっと長生きしてお姉ちゃんを守り抜きなさい。わかった?」するとジュエルはあごをグッと上げて「ワン、ワン、ワン!」と3回大きな声で吠えたから、たぶんそれが返事だと思う。

13歳の老犬になったけれど毎日元気で暮らしている。ウルトラ・ジュエルの名前にふさわしく、ウルトラ級の長寿を祈る日々だ。

(文:沼口祐子)

あなたの犬は「天才」だ

著者:ブライアン・ヘア、ヴァネッサ・ウッズ、古草秀子
出版社:早川書房
ここ一〇年で飛躍的進歩を遂げた学説によれば、やはり犬には天才的な認知能力があるらしい。飼い犬の能力を測定できる大人気サイトの主催者にして動物学者が贈る、NYタイムズ・ベストセラー。いきなりで恐縮ですが、犬って天才です。でも、木の根もとに自分のリードをぐるぐる巻きにして動けなくなるこの子のどこが天才?と思われるかもしれません。要は天才にも向き不向きがあるということで…… ここ10年で飛躍的に発展した犬の認知能力の研究では、犬は人間とコミュニケーションをとる能力が動物のなかでずば抜けているのが最も大きな特性で、言葉を覚える際などに示す推論力が高いこと、問題解決にあたっての柔軟度が大きいこともわかってきました。 本書の著者は自身も大の犬好き。凍えるロシアのサウナで目をまわしながら得たヒントなどをもとに、愛する犬がその能力を獲得した経緯を科学的に追い求めます。その顛末や、認知能力を調べる実験で犬たちが見せる、犬好きならほおを緩めずにはいられない面白い姿が満載の、犬学読本。

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