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ベランダで白昼夢にふける日々

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庭は不思議だ。
何もかも持っているお金持ちも、その日暮らしの庶民も、皆が庭を欲しがり、それぞれの方法で庭を持つ、もしくは持とうとする。
かのマリー・アントワネットも、ベルサイユ宮殿にプチ・トリアノンという名の庭を持った。贅沢の限りを尽くしたと言われるアントワネットだが、プチ・トリアノンでは村の女に扮して楽しんだと伝えられる。
一方、粗末な庭に、驚くほど豪華な薔薇の花を咲かせる人もいる。

下宿を飾るサボテンの花

私の場合、庭というにはあまりにもささやかだが、おままごとのような植木鉢を買って楽しんだことがある。大学に入学し、下宿するや、鉢植えを買いにいった。
本当はミモザかテッセンの花が好きなのだが、4畳半ひとまの部屋にはそぐわないし、手入れする自信もなかったので、サボテンにした。「ほったらかしにしていても大丈夫ですよ」の言葉に押されたのだ。
ただし、植木鉢は無理をして高いものにした。煉瓦色をした洒落た形で、私は「パリっぽい」と、大満足だった。
パリに行ったこともないくせに、サボテン鉢を飾った部屋にいると、パリジェンヌのような新生活が始まると確信できた。
サボテンは綺麗な花をつけた。殺風景な部屋に灯を灯すかのようなボタン色の花だった。
私はサボテンを眺めながら、濃いめのコーヒーをすすった。
大人になった喜びで胸が震え、煙草を吸ってみようかなと思ったりした。

私のプチ・トリアノン

庭が無くても、人は生きていける。
それなのに、猫の額ほどのベランダでもガーデニングを楽しむ。
手すりの向こう側へ張り出したゼラニウムやチューリップが、「ほら、ここが私のプチ・トリアノンよ」と、ハミングしながら、自己主張しているようなベランダを見たこともある。
たとえ小さな庭でも、王妃でなくても、私たちはマリー・アントワネットのような気分にひたることができるのだ。

センスが大事

ガーデニングに一番、必要なのはセンスだろう。
絵を描くように、庭に美を主張させたい。たとえ、狭いベランダでも、個性的な、唯一無二の庭にすることができる。
ナチュラルガーデニング2016』(ナチュラルライフ編集部・著/学研プラス・刊)には、ファッション雑誌さながらの「今が旬」のガーデニングのためのグッズが満載されている。
陽あたりが悪くても、工夫次第で、そこにあなただけの世界を演出できる。
「庭を作るぞ!」と意気込まず、ブティックのディスプレイを作る要領で楽しく飾り付ければ、それでいいのだろう。

祖父が示したガーデニング

たとえば、棚を使って、奥行きを出すのもいい。
アンティークの小物を惜しむことなく使うのも素敵だ。
そういえば、祖父の庭には、骨董の壺が放り出すように置いてあった。
韓国で買って来た白い壺だが、何を思ったのか、縁側の近くに植えたあじさいの木の下に、ごろりところがして楽しんでいたのだ。
「もったいないじゃない、割れたらどうするの?」と、驚いたが、「土でできたものが土にかえるのだから、割れてもそれでいいじゃないか?」などと言っていた。
今、思うと、明治生まれの祖父は、ナチュラルガーデニングの元祖みたいな人だった。
あじさいが花をつけると、紫色の花の下で、壺は白く光っていたという。
梅雨の時期には、あじさいの花をつたった水が壺に流れ込む。
冬になると、枯れ木のような枝の下で、壺は存在を主張するかのように光ったことだろう。
やがて壺は孫である私たち夫婦のものになり、今は床の間に置いてある。

うちのベランダといったら

私は庭が好きだが、結婚するや、植木鉢さえ置かない生活が始まった。
旅行が多かったし、子供ができると、ベランダは洗濯物でいっぱいになった。庭どころではなかったのだ。
最近になってようやく、神戸の家に落ち着いて暮らす日が増えたので、殺風景なベランダを何とかしたいという思い始めた。
ところが、なにぶん、久々でどうやったらかっこいい庭ができるかわからない。
我が家のベランダは、防水加工のためにグレーの塗料が塗ってあり、洗濯物が翻り、エアコンの室外機がぶんぶん回る生活感あふれる、いや、あふれすぎる場所となっている。
ここに私のプチ・トリアノンを作ることができるのだろうか?

ナチュラル・ガーデニング、3つのキーワード

『ナチュラルガーデニング2016』によると、庭づくりを充実させるには、3つのキーワードがあるという。
まず、第1のポイントは、「囲う」。空間を囲うことによって、見た目がアップし、ガーデニングの可能性が広がるのだそうだ。
次に、第2のポイントは「吊るす」。いわゆるハンギングである。外国のリゾートホテルなどで、ハンギングのテクニックが使われているのを見た方も多いだろう。プラントハンガーなどを使えば、かなりかっこいいベランダに生まれ変わる。
第3は「積む、重ねる」。ベランダが狭いと嘆く前に、木箱をなどを使って棚を作って、面積を増やせばいい。日陰にも強い植物を植えたら、狭さも吹っ飛ぶ庭となる。

もし、私だったら

もし、私がベランダにナチュラルガーデンを作るとしたらどうするか、考えてみた。
『ナチュラルガーデニング2016』を見ていて思いついたのだが、私は「2つの楽しみ」を表す庭にしたい。
私が暮らしている神戸の街は、北は山がせまり、南側は海が開けている地形である。
神戸の人たちは駅の出口をいうとき「北口」「南口」という代わりに、山側、海側と呼ぶことが多い。
我が家も北側は山に抱かれ、南には海が見える。
そこで、ベランダの南側には、東南アジアで買って来た貝を配し、蛸壺のような素焼きの鉢に海辺を思わせる植物を植えたい。
そして、北側には、山を感じさせる少し大きめの樹木を置き、題して「山海のガーデン」のような庭にして、山と海を両方楽しめるようにしたいのだ。

思いはつきない

今日も私はベランダの真ん中に立ち、「ここをこうして、あそこをこうしたら、どうかな」と、一人で妄想に耽っている。
出来ることなら、祖父から譲り受けた骨董の壺も、この際、土は無理だが、ベランダに置いて、雨や風にさらしてやったらどうかな?などと考えている。
その際には、やはり傍らにはあじさいを植えなければなるまい。
ガーデニングは実際にやるのはもちろんのこと、考えているだけで充分に楽しいものだ。

(三浦暁子)

ナチュラルガーデニング2016

著者:ナチュラルライフ編集部
出版社:学研プラス
庭も部屋のように飾りたい、と考える人のための庭づくりの本。戸建の庭はもちろん、ベランダや玄関前の小さなスペースでも楽しめるヒントが満載。植物と雑貨と組み合わせアイディアをはじめ、手をかけなくても育つ丈夫な植物カタログも。

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