ハウツーが満載のコラム
文字サイズを変更する

これはヤバい! ドーピング検査とテロ対策の共通点とは

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

ドーピング検査の結果が正しいとはかぎらない。最新の検査機器を使ったとしても、多くの違反者を見逃しているという。

「ドーピング検査」や「ウソ発見器」について、興味ぶかいエピソードを紹介する。

ドーピングとは?

運動能力を向上させるために薬物(化学物質)をつかうこと。公正な競技結果を得るために、ドーピングは多くのスポーツ大会で禁止されている。

出場する選手は、事前通告なしのドーピング検査に応じる義務がある。血液検査や、立ち会いのもと排尿してそれを提出しなければいけない。不正防止のため、陰部を隠せないという。

もしも筋肉増強剤や禁止されている化学物質が検出されたら、その選手は失格になる。ドーピング発覚によって金メダリストなどの一流選手がスポーツ界を追放された例は枚挙にいとまがない。

実際には、160回のドーピング検査をパスして平然としていたインチキ一流スポーツ選手もいれば、たった1回の誤った陽性反応で選手生命を絶たれてしまった者もいる。

いまのところ、ドーピングを見分けるために100%確実といえる証拠は「選手の自白」しかない。

ドーピングの実際

ヤバい統計学』よると、実際のドーピング検査で陽性反応を示すのは「選手全体の1%」だという。「がん」や「インフルエンザ」などの検査とは異なり、すべての禁止薬物やドーピング手法を検出できないためだ。

米国メジャーリーグの出場選手を約700人と見積もったとして、1%つまり7人しかドーピングをしていないことになる。いかにも少なすぎる。

わかりやすくするため、あるスポーツ大会に出場する選手「1000人」のうち10%がドーピングしていると仮定する。

ドーピング選手 100人
ドーピングなし 900人

現代のドーピング検査では、上記100人のうち陽性反応を示すのは約10人にすぎない。のこり約90人の検査結果は「陰性反応」を示す。全選手の10%がドーピングをおこなっているのは言い過ぎだとして、たとえ2%でも5%であったとしても、本来ドーピングをしている選手を見逃してしまうことにかわりはない。

判定のジレンマ

アメリカの『PCASS(信頼性予備評価スクリーニングシステム)』という装置が、たびたび社会問題になっている。

『PCASS』は、おもに軍やCIAや警察捜査で使われている高性能なウソ発見器だ。
ウソ発見器の精度を上げると「ウソつき」が増えてしまう。つまり、犯人でない人物を犯人扱いしてしまい冤罪事件が増える。

陽性反応 = 疑わしい
陰性反応 = 疑わしくない(潔白)

『PCASS』は、アメリカ軍でも使われている。たとえば、中東の米軍駐留基地で働く現地スタッフを採用するときに、応募者が「武装勢力と関わりがないか」を徹底的に調べる。

ウソ発見器にもドーピング検査とおなじような「誤った陰性反応」があり、『PCASS』の検査をパスしてしまった武装勢力関係者(テロリスト)は、のちに米軍の情報を盗んだり国連の関連施設で自爆テロを成功させた。

インチキスポーツ選手にせよテロリストにせよ、すべてを見破るのは現代のテクノロジーではむずかしく、その何倍もの不届き者たちを見逃している。

解決のカギは「体感時間」

ヤバい統計学』では、ほかにも興味ぶかいエピソードを読むことができる。

交通渋滞を解消するために、いちばん有効なのはどんな施策か?
単純なものならば「道路を拡張して車線を増やす」という方法がある。本書内では「道路の合流地点に信号を設置して1分に1台ずつ通行させる」事例が紹介されている。ランプメータリングという方式で、日本でもたまに見かける。

興味ぶかいのは、その後におこなった追跡調査のほうだ。

交通量調査や統計上では「交通渋滞が軽減した」にもかかわらず、「道路利用者の不満が増えていた」。困難な問題を解決するためには、統計を分析するだけではなく「人間の感情」も考慮したほうがうまくいくらしい。

おなじ考え方をもちいて、ディズニーランドの待ち時間を短縮してみせた方法も意外なものであり、目からウロコが落ちた。ポロリ。

(文:忌川タツヤ)

ヤバい統計学

著者:カイザー・ファング(著) 矢羽野薫(著)
出版社:CCCメディアハウス
世の中を知るには、経済学より、まずは統計学です。 ●ディズニーランドの行列をなくす方法は? ●宝くじに当たる確率は実際どのくらい? ●テロ対策とドーピング検査の共通点とは? ディズニーランド、交通渋滞、クレジットカード、感染症、大学入試、災害保険、ドーピング検査、テロ対策、飛行機事故、宝くじ??。 10のエピソードで探求する「統計的思考」の世界。そのウラ側にある数字を知れば、統計学者のように思考し、自分の世界を自分で支配できるようになる。 「簡単に読めて、得るものは大きい」 ??ファリード・ザカリア(CNN情報番組「GPS」司会者) 「素晴らしい本だ。統計の扱い方や、数式で頭を悩ませることなく数字で考える方法を知りたい人、それにロジカルシンキングを身につけられるような本を探している人にはぴったりだろう」 ??ダニエル・フィンケルスタイン(英タイムズ紙編集主幹) 「この本を手にしたとき、これほど夢中になるとは思わなかった。専門知識のない私たちのための、統計分析に関する読みやすく発見に満ちた探求だ」 ??ピーター・クラーク(元ケンブリッジ大学歴史学教授)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事