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子育てに悩んだら、ばあちゃんせんせいに聞け!

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夜泣き、授乳がうまくいかない、抱っこでないと寝ない、ハイハイをしない、離乳食が進まない、なかなか言葉を発しない、子どもの気持ちがわからない、上の子にばかりキツく当たってしまう…子育てにおける悩みは尽きない。それは二人目だって三人目だって、たとえ七人目だって同じこと。

行き詰まって、どうしたらいいかわからなくなったとき、あなたには相談できる人がいますか?

母子手帳や生後○ヶ月健診などの際に答えるアンケートには、「子育てについて気軽に相談できる人はいますか?」という設問が必ずあるけれど、あれってみんなどう答えているんだろう。筆者の場合、とりあえず「はい」に○をして「母」と書いてはいるが、実際のところ遠く離れて住む母親にはなかなか相談できないし、ママ友や子育て支援センターのスタッフさんに愚痴ったり相談したりもするけれど、それにも限度がある。

育児に正しいとか間違いってあるの?なにを信じたらいいの?

そもそも、この世の中には、ありとあらゆる育児論があり、育児本があり、子育て情報で溢れている。その中から、自分に合ったもの、本当に信じられるものを見つけ出すのって、想像以上に困難。育児難民、なんて言葉はないけれど、あれも試してみた、これも試してみた、今度こそ我が子に合うかな、今度こそ信じられるかな…そんな状況下にいる母親たちって、絶対多いと思うわけなのだ。

中には、どうにも怪しい育児法もある。実際、生後間もない赤ちゃんにひねったりもんだりする施術を行っていた団体が、ついに死者を出した…なんていうニュースもあった。傍からみると、何故あんな、医学的根拠もない危険なマッサージを受けさせたんだ!と信じられないが、おそらく悩みの渦中にいる親にとっては、藁にもすがる想いで飛びついた施術法だったのだろう。

親元を離れて嫁いだ場合は特に、近くに身内は誰もいない。本当に困ったとき、相談できる相手がいない。悩みは深くなる。解決できぬまま、育児ノイローゼや産後鬱に陥るケースも決して否定できない。明日は我が身なのだ。

そんな中、素晴らしい本に出会った。御年91歳!日本最高齢の助産師、坂本フジヱさんの『大丈夫やで~ばあちゃん助産師(せんせい)のお産と育児のはなし~』である。数年前、『情熱大陸』でも取り上げられていた方なので、記憶に残っている人も多いのでは。

もっと気楽にすればええんやで

本書には、ばあちゃん先生のあたたかくて優しく、時に厳しい教えがいっぱい。田辺弁の優しい語り口がまた心地良く胸に響いてくる。

妊娠初期は「無茶をしない」「風邪をひかない」「冷やさない」
え?ありきたりな心構え?あなどってたら痛い目にあうで。
(『大丈夫やで』から引用)

妊娠初期は、お腹もまだ目立たないし、なかなかお腹の赤ちゃんを実感できない。けれど、胎盤が安定しておらず、赤ちゃんが小さく抵抗力もないこの時期だからこそ、「当たり前のこと」をないがしろにすると、あっけなくひとつの命を失ってしまうことを自覚しなくてはいけない、と戒める。

赤ちゃんは生まれ時を自分が知ってるもんや。
だから予定日過ぎてもヤキモキせんでええ。
(『大丈夫やで』から引用)

予定日を過ぎてもなかなか陣痛がこないと、周りからの「まだ?」というプレッシャーもあり、どうしてもヤキモキしてしまいがち。でも、ばあちゃん先生はこう教えてくれる。「赤ちゃんは、おなかの中で一生懸命に脳の充実を図り、体も成熟させ、『光り輝く人生を送りたい』と願ったとき、合図を送ってきます。それが陣痛なんです」と。

赤ちゃんが生まれる過程は、信じられんようなことばかり。
だから考えすぎはだめ。自然の力を信じること。
(『大丈夫やで』から引用)

4000人以上の赤ちゃんを取り上げてきたばあちゃん先生も、「赤ちゃんが生まれるのは、何度立ち会っても不思議」と語る。同じ産まれ方はひとつとしてないのだそう。そして、お産の主導権は赤ちゃんが握っていて、絶対に自分が死ぬような産まれ方はしないのだという。「お産は人間の手の届くものではなく、神の領域。神の領域のことを、人間があれこれ考えたり心配したりしても、始まりません。私たちにできるのは、自然の力、赤ちゃんの力を信じることなんです」

授乳って、セックスの意味もあるのと違うかなぁ。
(『大丈夫やで』から引用)

授乳には、赤ちゃんの中の「性の遺伝子」に働きかける役割があると、ばあちゃん先生。赤ちゃんの頃にしっかりと抱きしめてもらい、授乳で満たされた経験をしている子どもは、思春期の、特に男性にみられる異常な性欲に歯止めがきくようになる、と語る。とても、とても深い。

「自分が大事にされている」と子どもが実感するためには
「いま、この瞬間」のタイミングを逃したらダメ。
(『大丈夫やで』から引用)

子どもって、忙しいときにかぎって、「ママ~!」とくっついてくる。そんなときは、洗い物をしてても、洗濯を干していても、「用事より、子ども優先にしてください」とばあちゃん先生は強く語る。いまこの瞬間に応えてあげないと、子どもは納得しない。ほんの一瞬、しっかり子どもと向き合うだけで、その子は「自分は愛されている、大事にされている」と実感できるのだ。これは、とても納得でき、しかも耳が痛いお言葉。日々の態度で示していくことが、何よりも大切なのだなぁ…

情報で頭でっかちになるよりも、目の前の子どもを見つめて

ばあちゃん先生が語ることは、ご本人曰く「本当に当たり前のことばかり」。でも、その当たり前のことが、育児に翻弄されている当事者にはなかなか気付けない。70年間にも渡りお産に接してきたばあちゃん先生だからこそ、語ることができる数々の言葉。きっと、他の誰から言われるよりも、ずっとずっと素直に聞き入れることができるのではないだろうか。産後と育児の話を綴った『大丈夫やで 2』と併せて、我が家のバイブルである。最後に、最も印象に残っているばあちゃん先生の言葉を。

 「手抜きの子育てしなさいね」って、みなさんに言うんです。
しんどさがなければ赤ちゃんをかわいく思えますから。
(『大丈夫やで』から引用)

完璧主義なんて目指さなくていい。理想の子育て?そんなもの、自分とわが子が決めること!明日から、もう少し肩の力を抜いて、子育てを楽しもうと切に思えた。

(文・水谷 花楓)

大丈夫やで~ばあちゃん助産師(せんせい)のお産と育児のはなし~

著者:坂本フジヱ
出版社:産業編集センター
赤ちゃんを信じて、もっと気楽にやればええ。 そしたら万事うまくいくもんや。 多くのメディアで話題の日本最高齢の現役助産師によるメッセージ集。戦後の大混乱の中でも常に平常心を忘れず、小さな命を育むお母さんたちと共に歩み続けて66年。育児を頭で考え、がんじがらめになってしまう人が多い世の中を憂う87才のばあちゃんせんせいが、特に優しく、時に厳しく、「本能でする育児とは」を説く。「生まれ方は生き方」「性は生きることで本能」「伝えたいことは呪文のように唱える」など、経験に裏打ちされた力強い言葉が胸に響く一冊。

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