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もしも私が大家になれたなら

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10年ほど前に、大家さんになりかけたことがある。
世田谷に一戸建てを買ったはいいが、2年も経たないうちに離婚してしまったのだ。夫が家を出ていったので、私はひとりで30年近いローンを背負うこととなってしまった。そして私もいろいろ悲しい思い出があるこの家に住み続けるのもつらかった。なので売るか貸すか、迷ったことがある。結局家を手放してしまったけれど、あの時もし人に貸していたらどうなっていたんだろうと、たまに考える。私は大家さんになったほうが、よかったのだろうか。

素人が考える大家さんのメリット

私が家を貸そうかなと思ったのは、家賃がもらえるからだ。月々のローンの金額より、確実に家賃のほうが上回りそうだったから収入としてもプラスになるのではと考えたのである。しかも入居者とのやりとりは、不動産屋さんが代行してくれて、その費用は家賃の5%でいいらしい。自分は95%の取り分をもらいながらすべてを委ね、ただ家賃が振り込まれるのを待てばいいと思っていた。しかし世の中はそんなに甘くはなかった。

家を貸す気になりかけていた私にストップをかけたのは、自宅を建て直し、上の階を人に貸して大家となっていた友人だった。「大家は儲からないよ!修繕費とかがかかって全然残らないんだから」と言われ、気づいた。そうか、賃貸時代はどこかが壊れたら大家さんに言って治してもらっていたけれど、大家になったら今度は修理する側にまわるのか。そして修理代もこちらがもつのかと。ちょっと変わった住宅で窓やバスタブは特注サイズだったし、場合によってはかなりのお金がかかることになる。

大家に降りかかる「もしも」

修繕費の負担のうえ、不動産にはさまざまな出来事が考えられる。時にはその価値が著しく下がるケースもあるだろう。たとえば殺人などの事件が起きてしまったら。家賃を下げざるをえなくなるし、ローンの金額を下回る可能性すらある。それにもし退去されて空き家になったら新しい入居者が来るまで家賃は入ってこない。私はその間、新しく借りたマンションの家賃と家のローンとを二重に払わなくてはならなくなる。それは母子家庭には、あまりにも重すぎる負担である。

結局「もしも」のリスクを背負いきれず、家を売ってしまった。ほとんどがローンだったので、手数料などを払うと、私の手元にはお金は驚くほど残らなかった。結局私は家を売って正解だったのだろうか。ずっと疑問がくすぶっていたので『主婦でも大家さん』(東條さち子・著/朝日新聞出版・刊)という本を読んだ。アパートを経営し始めた女性漫画家・東條さち子さんのコミックエッセイである。彼女は2棟のアパートを何千万ものローンを組んで購入し、大家さんとなった。計算上は受け取る家賃が支払い金額を上回るはずだった。けれど、退去者が出れば見込み収入も減る。さらに退去した部屋のリフォーム代金もかかる。リアルな経営は相当大変そうだった。

大家にかかる意外なお金

面白かったので東條さんの他の著作『大家さん10年目。』『大家さん引退します。』(ともにぶんか社刊)も合わせて読んだ。すると、アパートの家賃収入は、たとえローンでそのほとんどが消えてしまったとしても収入とみなされ、所得税がかかってしまうとある。東條さんの場合は家賃が月額何十万円もあったので、年間にすると相当な額だ。所得税が上がるということは住民税も健康保険税も上がるということだ。さらには物件の固定資産税もかかる。想定外に降り懸かる税金等を、貯金を崩し、時には消費者金融までもを利用して必死に払い続ける姿は、あまりにも壮絶だった。

もし私が一戸建てを貸していても、同様に税金で涙目になったことだろう。そう思うとやはり売って正解だったのかなと思う。けれど、ローンを完済した途端、土地建物という資産はまるまる自分のものとなる。それを売れば相当の収入が予想されるのだから、魅力はある。以前、知り合いの税理士さんが「不動産投資をするのなら一棟買いに」と言っていたのは、この「土地」の魅力のことだろう。でもその利益を手に入れるためには税金などのさまざまな追加経費を乗り越えなくてはならないのだ。

ちなみに作者の東條さん、今は物件の一部を処分し、スリランカでゲストハウスを作ろうとしていて、投資内容がグローバルになっていた! 目先の小さなリスクにとらわれず、スケールの大きい考えかたができる人には、大家業は向いているのかもしれない(ただし日本の人口は減りつつあり、物件も場所によっては余りつつあるようなので、物件選びは慎重に……!)。

(文・内藤みか)

主婦でも大家さん 頭金100万円でアパートまるごと買う方法

著者:東條さち子
出版社:朝日新聞出版
主婦で漫画家の著者が夫と共働きしながらアパート2棟の大家になった経緯を4コマで描いたコミックエッセイ。描き下ろし漫画やコラムも加えて、財テク初心者でもわかりやすい内容に。読んだ翌日からあなたもアパート経営者になれる……かもしれない!

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