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〝とうらぶ〟が引っ張るクールジャパンの最新局面

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Kashuu Kiyomitsu、Yamanbagiti Kunihiro、 Mutsunokami Yoshiyuki、Kasen Kanesada、 Hachisuka Kotetsu…。
今最もホットと言われている、とあるアメリカのサイトで拾った文字列だ。一部の人にとっては、とてつもなくクールに響く言葉らしい。 漢字に戻して記すと、加州清光、山姥切国広、陸奥守吉行、歌仙兼定、そして蜂須賀虎徹となる。多くのアメリカ人を惹きつけるこのサイトは、DMMが提供するオンラインゲーム『刀剣乱舞』(通称〝とうらぶ〟)のファンが集う場所で、冒頭で並べたのはユーザーが選ぶスターターキャラのベスト5だ。

『刀剣乱舞』の世界観

『刀剣乱舞』の世界観について記しておこう。プレイヤーが「審神者」(さにわ)となって付喪神(つくもがみ)「刀剣男士」を出現させ、育成していく。イケメンに擬人化された刀を集めて白刃隊(はくじんたい)というグループを結成し、戦を勝ち抜いてマップを攻略していく。この過程で「鍛刀」(仲間を増やす)、「刀装」と「錬結」(刀剣男士の強化)といったキャッチーな響きの作業を経て、オリジナルの白刃隊の能力を高めていく。
目的は歴史の改変を目論む「歴史修正主義者」を叩きつぶすこと。 基本的性質はストラテジーゲームだが、先に触れた「鍛刀」、「刀装」、「錬結」という過程で育成ゲームとしての魅力が最大限に表現される。

とうらぶLOVE

イケメンに擬人化された刀剣を育成していくゲームのコアなユーザー層は、当然のことながら女性が中心となる。
2015年1月のサービス開始直後にユーザーが50万人を突破し、登録が一時中止になった。「女性ユーザーが選ぶ2015年イチオシゲームリスト」にも選ばれ、10月には早くも『ミュージカル刀剣乱舞』のトライアル公演が実施された。
正式リリースから10ヵ月で二次的なエンタテインメントコンテンツが制作されたゲームは稀有だ。とうらぶLove、な女子たちはあっという間に一大勢力となった。

育成シミュレーションゲームの系譜をざっと見る

きわめてざっくり言ってしまう。育成シミュレーションゲームは、90年代初頭の『プリンセスメーカー』や『卒業』あたりのPC版から始まり、筆者も大好きだった競走馬育成シミュレーション『ダービースタリオン』シリーズはファミコンからスーパーファミコン、そしてプレイステーションからニンテンドー3DSとプラットフォームを変えて愛されてきた。
マニアックな男性ユーザーが登場キャラと結婚式まで挙げ、海外でも話題になった恋愛シミュレーション『ラブプラス』が、最近のスマホゲームの『アイドルマスター』や『ラブライブ』などの音ゲー要素を盛り込んだ系統のゲームの源流になったという見方もある。 もちろんこれ以外にも紹介したいタイトルがあるが、文字数の関係でできません。ご容赦ください。

刀剣女子というトレンド

刀をイケメンに擬人化するというアイデアは、現実世界でも新しいトレンドを生み出した。2015年3月あたりから日本各地にある博物館の刀剣展示コーナーで若い女性の姿が目立つようになった。2016年1月に福岡市博物館で行われた国宝刀剣「圧切長谷部」(へしきりはせべ)の展示には女性客が押し寄せ、数時間待ちの行列ができる日もあったという。同博物館では毎年同じ展示を行ってきたが、来館者の急増が目立ち始めたのは、『刀剣乱舞』のサービス開始後だ。
スポットライトを浴びて美しくきらめく刃を見つめ、高解像度のデジタル写真に収める彼女たちは、刀剣女子と呼ばれるようになった。

ゲームキャラからリアルな刀剣へ

こうしたトレンドにどストライクと思われる図鑑が、『-日本の美-日本刀』(稲田和彦・監修/学研プラス・刊)だ。〇〇女子、と形容される人たちの最新トライブである刀剣女子たちも無視できない一冊に違いない。見開きページも盛り込まれていて、図鑑というより写真集というイメージでとらえられるような感じがする。英文も併記された文字情報も充実。
クールジャパンという言葉でくくられる事象はさまざまある。筆者の感覚としては、次々と増える事象がより細分化され、かつ深みを増している気がする。そんな中で、『刀剣乱舞』が生み出した新しいトレンドが世界的な広がりを見せていることは間違いない。
国宝級の刀剣を展示している博物館に外国からのお客さんが長い行列を作る光景も、そう遠くない未来に現実のものとなるだろう。日本刀トレーディングカードもすでに何種類か製作されていて、コレクターの間でさかんに取引されているらしい。
とうらぶという言葉をマクラに、刀についてちょっと語れたりすると、これから先しばらくは思わぬ方面からリスペクトを集められるかもしれませんよ。

(文:宇佐和通)

日本の美 日本刀

監修:稲田和彦
出版社:学研プラス
なぜ、こんなにも美しいのか? 武器でありながら美術品としても愛でられる奇跡を成立させ、武士の魂とまで言わせた日本刀の魅力を、既存の図録集とは一線を画すスタイリッシュで美しいビジュアルと、歴史群像編集部ならではの視点で紹介する。

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