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同時多発テロ後のパリ行きたくないの?

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パリへ行く日本人が激減してしまったそうだ。2015年11月13日の同時多発テロ以前は毎年70~80万もの日本人観光客がフランスを旅していたが、今やその姿を見かけることもなくなったとか。2月末に来日したアンヌ・イダルゴパリ市長は「私たちは日本の皆さんが好きです。ぜひ戻ってきてください」とアピールした。

テロに屈せずパリに行こう

パリ市長の日本が好き発言、私はお世辞ではなく本音だと思う。初対面のフランス人がアジアの顔に対してつっけんどんな態度を取っていたのに、こちらが日本人と分かったとたんに態度がコロリと変わって急に愛想がよくなるなんてことは、長くパリに暮らしたけれどしょっちゅうだった。フランスに行けば日本人として損することより、得することのほうが多いはずだから、機会が目の前にあるなら躊躇うことなく出掛けたい。

これからの時代、いつどこでテロが起こるかわからない。世界中のどこにいてもリスクは同じならば、パリ行ってみたら?

日本かぶれのフランス人たち

日本ではフランスが大好きな人を指して「あの人はフランスかぶれ」とか言うが、フランスにも「日本かぶれ」が大勢いるのだ。

印象派の巨匠クロード・モネは日本への憧れがとても強かったのであろうことが、パリ北西80キロのジヴェルニーにあるモネが晩年暮らしたの家を訪ねるとよくわかる。一般公開されているモネの家とアトリエ、庭園のそこかしこにジャポニズムがあふれている。モネの絵画はパリの美術館にあるのでこの家にはないが、彼がコレクションした日本の浮世絵が部屋のあちらこちらに飾られている。壁の色を浮世絵の色調に合わせてあるほどの懲りようだ。

そして庭にあるモネの代表作『睡蓮』を描いた池を見たとき、私は子ども時代に遊んだ神社の池にそっくりだったので驚き、しばし懐かしさに浸ってしまったくらいだ。

モネが日本の橋と呼んだ小さな太鼓橋があって水面には睡蓮がいっぱい。きっとモネは遠い遠い日本の風景や自然に思いを馳せながら絵筆を動かしていたのだろう。

こうしたフランス人の日本文化への憧れは綿々と受け継がれ現在に至っている。盆栽に凝ってる人、鯉に恋してしまった人、折り紙に夢中の人、柔道や合気道を習う人は本国よりずっと多い。中高生は日本のマンガのおかげで日本ファンとなり、日本は行ってみたい国として常に上位にランキングされているそうだ。

人は遠いところに憧れるもの

日本人はフランスに憧れ、フランス人は日本に憧れ、まさに相思相愛というわけだが、どうしてだろう? どちらにも誇れる文化があることが大きいが、両者を隔てる距離、遠さもまたいいのだろうとも思う。もし、パリが東京から2~3時間で行ける場所にあったら、それほど人々の思いは募らなかっただろう。9700kmという遠さ、ちょっくらとは行かれないところにある、それが魅力のひとつと言えなくもない。

パリに行けば人生変わるかも?

さて、『パリ行ったことないの』(山内マリコ・著/CCCメディアハウス・刊)は10代から70代までの、年齢も立場もまったく違う日本女性10人の物語だ。みんな現状がちょっと不満で、人生を変えたいと思っている。まだ、パリには行ったことはないけれど、パリに行けばきっと違う自分に出会えると信じている。

パリへの強い憧れは、それぞれの中に「私だけのパリ」を生む。それに日本では雑誌のパリ特集などで最新情報をキャッチできるので、新しいブティックやカフェ、レストランなどに関しては、パリに住んでるフランス人より日本人観光客、あるいは留学生のほうがずっとパリに詳しいという現象も生まれるのだ。

そんなよく知ってるパリ、私だけのパリをぜひ見に行ってほしいと思う。文中でも、
「わたし、パリにすら行かずに死んでもいいと思ってたの?」
と、
35歳シングルが言えば、
74だからよ、来年は75、再来年は76、いつ死んだっておかしくないのよ? いつ行くの? いまでしょ!」
と、
74歳の未亡人は言っている。

やっぱり、テロを恐れてパリ行かない、なんてもったいない気がする。

(文:沼口祐子)

 

パリ行ったことないの

著者:山内マリコ
出版社:CCCメディアハウス
FIGARO japonの読者だけど、パリに行ったことないの……。『フィガロジャポン』連載の人気連作短編小説に、最終章(第13話)を加筆して書籍化! 地方や郊外に住む「普通の女の子」たちによる、パリへの憧れが紡がれる小説。 大学院まで出たのに思うような職に就けていないあゆこは、2008年のFIGARO japonの映画特集でどうしても見たい映画を見つけた。その映画を見るために、自分の人生を変えるために、パリへの第一歩が「普通の女の子」たちを変える。

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