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数学って、思ってたよりずっとロマンティックだった

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去年より一週遅れで青色申告を終えた。あー、毎年ホントにきつい。数字っていうのは、やっぱり苦手だ。
数字ぎらいが本格的に始まったのは中学1年の数学。最初の授業でやった集合あたりから、もう怪しかった。それ以来大変で、高校に入ると数学も化学も物理もすべて追試が当たり前。高1の時の数学の先生が大っ嫌いなタイプで、とどめを刺された。何度か改善するチャンスはあったのだろう。でも、自分から歩み寄ろうとは決してしなかったので、かなりこじらせてしまった。

秋山先生のナンパ理論

そんな筆者が興味を持った数学ネタが秋山仁先生のナンパ理論だった。バラエティー番組でも何回か紹介された〝数学的に高い確率で効率よく魅力的な女の子をゲットできる〟方法だ。20人の女の子と次々に出会えるが、声をかけるチャンスは1回だけというシチュエーション。この場合、以下の段取りで最良の選択が実現する。
はじめの5人は見送る。6~10人目は、それまでで最高だと思ったら声をかける。11~13人目は、それまで最高あるいは2位までなら声をかける。以降、14~15人目はそれまでの3位以内、16人目はそれまでの4位以内、17人目はそれまでの5位以内、18人目はそれまでの7位以内、19人目はそれまでの10位以内、そして20人目は最後なのでとにかく声をかける。
こうして、最良なら20人中1位、悪くても3位の女の子のナンパに成功するという。ただこの理論、女の子からは絶対に断られないことを仮定しないと成り立たない。そりゃそうだ。

知的生命体が存在する星の数

目線をぐっと上に向け、宇宙に思いを馳せてみる。SETI(地球外知的生命体探査)計画に立ち上げから携わっているアメリカの天文学者フランク・ドレイクは、1961年、銀河系内でコンタクトが可能な地球外文明の数を推し量るための方程式を考案した。知的生命体が築いた文明がある星の数Nは、次のような式で表される。

N=Ns×fp×ne×fl×fi×fc×L

各項目を説明すると、

N=銀河系に存在する高度な文明の数
Ns=地球がある銀河系内で1年間に生まれる恒星(太陽系なら太陽)の数
fp=ひとつの恒星が惑星系を持つ確率
ne=ひとつの恒星系(例えば太陽系)にある生命の存在が可能な惑星の平均数
fl=生命の存在が可能な惑星で、実際に生命体が発生する確率
fi=生命体が知性を持つまで進化する確率
fc=進化した生命が、通信技術を含めた高度な技術文明を発展させる確率
L=確立された技術文明が存続する期間

ドレイク自身が1961年に当てはめた数値は、上から10、0.5、2、1、0.01、0.01、10,000で、Nの値は10だった。地球にコンタクトしてくるだけの技術がある知的生命体が住む惑星は、全宇宙で少なくとも10個あるという仮説が成り立っていたわけだ。
ナンパにしても、知的生命体が存在する可能性がある惑星の数にしても、無機質でドライであるはずの数字から、生きものの営みが感じられる事象を推し量ることができる。ひょっとしたら、数学っていうのは筆者が思うよりずっとロマンティックなものなのかもしれない。

数学は雄弁だ

『とんでもなく役に立つ数学』(西成活裕・著/朝日出版社・刊)の著者、西成活裕さんは、まえがきで次のような文章を綴っている。

残念ながら、数学を嫌いだと言う人がかなりいらっしゃることは事実です。ですがちょっとだけ見方を変えれば、そういう人でもすぐに数学を好きになる可能性はありますし、誰にでも数学的な議論に楽しく参加できる余地はあると、私は思っています。
『とんでもなく役に立つ数学』(西成活裕・著/朝日出版社・刊)より引用

こういう言い方は聞いたことがある。でも、ここから先が違う。

語学で言えば、単語を覚えているだけでは、外国語を話せるようにはなりません。外国人と真のコミュニケーションをするには、異なる文化背景思理解しなければいけない。数学でも、記号は単語のようなもので、確かに必要ですが、その背景にあるアイデアのほうも、同様以上に大事なのです。
『とんでもなく役に立つ数学』(西成活裕・著/朝日出版社・刊)より引用

こういう言葉遣いで説明してくれれば、筆者も納得できるし、興味も湧く。そして西成さんは、〝厳密さを極めていくことで独特の世界観を獲得してきた数学〟の確立された型を少しだけ崩す必要性を説く。数学という学問を現実社会で使えるものにするためだ。
「答えがひとつしかないことが魅力」
数学好きの人は、よくこう言う。ところが、数学嫌いな人間にとっては、そういうきっちきちなところが嫌なのだ。
ちなみにこの本は、高校生くらいの年齢の人たちに数学の魅力を伝えるというフォーマットで書かれている。高校生の頃、こういうゆったりとした構えの人から教えてもらっていれば、色々な意味で可能性が広がったかもしれない。いや、まだ遅すぎるとは限らないぞ。

(文:宇佐和通)

 

とんでもなく役に立つ数学

著者:西成活裕
出版社:朝日出版社
教科書からリアルな世界へ。わかりやすくて、誰でも使える! 数学的思考のエッセンスは、ジャンルを超えて誰にでも楽しめる、そして日々の生活で「使える」ものです。ですが、現状では、まだ数学の力が存分に発揮されているとは言えません。人生に「数学なんかいらないよ」、と思い込んでいる方も多いでしょう。せっかくの数学の知恵を、閉じた世界にしまっておくのはもったいないことです。本書は、「数学で世界をより良くしたい」と本気で考え、実際に取り組んでいる西成活裕先生が、高校生とともに、数学を使って世の中の問題を解決していこうと、アイディアを展開していく4日間の授業を収録したものです。厳密さと、いい加減さの両方を兼ね備えた「血の通った数学」。それは、あなたが問題を抱えて立ち止まってしまったとき、きっと乗り越え方を教えてくれるでしょう。

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