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超敏腕コンサルのマジ懺悔

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経営コンサルタント。ハンパないエキスパート感に満ちた言葉だ。ちょっと縮めて、コンサルなんて言うこともある。
どんな経営理論であっても熟知していて、どんな局面でもすばらしいアイデアやひらめきが降りてきて、傾きかけた会社をいくつも立て直して…。言葉の響きだけでそんな人をイメージしてしまう。
もちろんそういう人もいるだろう。いや、そういう人がほとんどかもしれない。でも、中には経営コンサルタントという役柄を〝演じる〟ことに疲弊し、文字という形で本音をぶちまけてしまう人がいる。そしてその本音は、知識がまったくない人間には自己否定にしか聞こえない。余計なお世話でしょうが、そこまで言っちゃって大丈夫なんですか?

経営コンサルタントという仕事。収入。

私企業や公的組織の経営実態を調べ、問題があれば分析し、改善方法を提案して立て直す。それが経営コンサルタントの基本的な仕事だ。ランクで言うと下からアナリスト、コンサルタント、シニアコンサルタント、マネージャー、シニアマネージャーとなっていて、『平均年収.JP』(http://heikinnenshu.jp)によれば、平均年収は701万円だ。
どうやったらなれるのか。大手や外資のコンサルティング会社を目指すなら、MBA取得が不可欠と言われているようだ。
現行の国家資格で一番近いものを挙げるなら、中小企業診断士だろう。難関として知られる試験は7科目の1次、そして筆記・口述の2次から成る。平成22年から26年のデータで見ると、合格率は4パーセント前後だ。数字だけを軸にすれば、難易度は4~7パーセントの間で変動すると言われている気象予報士と同じくらいだろうか。

経営のフェアリーテール:ハウステンボス再建

コンサルの仕事には、たとえば長崎県佐世保市のハウステンボスのような企業の立て直しも含まれる。総額2000億円以上を投入して建設されたハウステンボスは1992年の開園当時から赤字経営が続き、社長交代劇が繰り返され、2003年には2000億円の負債を抱えて倒産した。大手旅行会社H.I.S.によって買収されたのは、2010年3月だ。
新社長に就任した澤田秀雄氏はH.I.S.の創始者であり、企業立て直しの専門家でも、有名コンサルでもない。でも、わずか1年でハウステンボスを黒字転換させ、さらにその1年後には最終利益額を42億円まで伸ばした。まさにマジック。長期間赤字経営が続いたテーマパークを生き返らせた秘訣は何だったのか。
2016年2月13日に放送された『V字復活! 有吉カンパニー~ホントにあった大逆転リアルストーリー』(RCCテレビ制作)という番組で、澤田社長が社員に対して行った以下のような3つの〝お願い〟が紹介されていた。
・掃除
・あいさつ
・動きを2割早く

アドベンチャーとしての企業再建

澤田氏は、高校卒業後旧西ドイツのマインツ大学に留学し、アルバイトで稼いだお金で世界50カ国以上を旅して回った。H.I.S.の母体となる会社を立ち上げたのは、1980年だ。
『ベンチャー通信 ONLINE』(http://v-tsushin.jp)のインタビューで、小さい頃なりたかったものについて尋ねられ、澤田氏はこう答えている。

「冒険家を夢見ていましたね。あと宇宙飛行士にも憧れていました。何しろ好奇心が強かったから、色々な未知のものに触れたかったのです。事業をやれば忙しいし、お金のために一生懸命に働かなくてはいけない。それよりも冒険していた方が楽しいじゃないですか」

澤田氏にとっては、ハウステンボス再建もアドベンチャーにほかならなかったのだろう。

「ごめんなさい」で始まる企業コンサルティングの話

コンサルティングが本業である人たちの目に、澤田氏の成功はどう映るだろうか。 『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です』 (カレン・フェラン・著、神崎朗子・訳/大和書房・刊は、MIT大学院を卒業後アメリカのトップコンサルティング会社を渡り歩き、世界的大企業でマネージャーとして活躍したゴリゴリの敏腕コンサルタントが記した一冊だ。ところが著者のフェランさんは、「はじめに」の1行目で謝ってしまう。

申し訳なかった。心底、そう思っている。
あのときはよかれと思ってやったことだったと言えば、少しは許してもらえるだろうか。

なぜこうも簡単に謝ってしまうのか? それは、企業にとって最も大切なものが人であり、最も有効なツールが対話であることに気づきながら、それを実践しなかったという後悔にさいなまれているからだ。理論のみでものごとを進めていくコンサルという役柄を演じ続けてきた自分を顧みた上で、フェランさんはコンサルティングという仕事に本当の意味で不可欠な要点を改めて示して見せる。

・とにかく大切なのは直接対話である
・優秀なマネジメントは理屈ではなく人である
・コンサルティングにおいて重要なのは方法論やツールではなく、対話である
・社員同士のさかんな交流

掃除と挨拶を通じて社員との直接対話を深め、そこからハウステンボスを生き返らせた澤田氏の姿がオーバーラップする。実践的コンサルティングの本質は、地味で、泥臭いとさえ言える行いにあるのかもしれない。
それにしても、フェランさん。昔の自分をここまで否定しちゃっていいんですか?

(文:宇佐和通)

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

著者:カレン・フェラン・著、 神崎朗子・訳
出版社:大和書房
前代未聞!気鋭のコンサルが内幕を暴露した全米騒然の問題作!デロイト・ハスキンズ&セルズ、ジェミニ・コンサルティングと、大手コンサルティングファームを渡り歩いてきた実力派コンサルタントが、自らとコンサル業界が犯してきた恐るべき過ちの数々を大暴露。「戦略計画」「最適化プロセス」「業績管理システム」……こうして企業は崩壊する。望ましいコンサルティング業務のあり方、クライアントとコンサルタントの正しい付き合い方を提唱する。

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