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娘に『私、アイドルになりたい!』と言われました…

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アイドル。キラキラした華やかな世界。ニッコリ微笑みかけるだけで、観衆からは割れんばかりの黄色い声援。そんな世界に憧れを抱く子どもは多い。

2014年版の株式会社クラレによる『新小学1年生の「将来就きたい職業」ランキング』では、女の子編の第2位が「芸能人・タレント・歌手」という結果が出た。

数年前から着実にランクアップしてきており、ついに2位まで上り詰めたのだ。これにはやはり、AKB48を筆頭とするアイドルたちの活躍が背景にあるのだろう。かくいう筆者も、幼い頃アイドルになりたかった。親に頼んでプロフィール写真のようなものを撮ってもらい、某芸能事務所に応募した過去がある。

しかしながら、あの頃の自分を含め、若き少女たちはまだ知らない。芸能界が、どれほど特殊な世界で、頂点を極めるのにどれほどの運と才能と努力が必要かということを。

常に大勢の視線に晒される、それが仕事

アイドルに限らず、メディアで活躍する著名人たちは皆、四六時中、周囲からの視線に晒される宿命にある。好感度の高い者ならなおさら、どんなときでも笑顔でにこやかに対応していないと「テレビと違う!感じ悪い!」と言われてしまう始末。一般人なら、単なるママ友同士のちょっとしたイザコザも、こと芸能人となると話が大きくなる。ブログもすぐに炎上する。週刊誌に有る事無い事書き立てられる。おおっぴらにデートにも行けない。

以前、筆者が雑誌の読者モデルたちと仕事をしていたとき、彼女たちの悩みをよく聞いていたのだが、雑誌での露出が増えれば増えるほど、学校で仲間はずれにされたり、イジメに遭う…とほぼ全員が悩んでいた。他よりも目立つ者に対する妬み嫉みは、若いがゆえにストレートで残酷。表舞台に出るということは、華やかなようで、その裏には並々ならぬ苦労が多いのだ。

大多数の中で生き残るには

常に笑顔が求められるアイドルたち。無論、熱烈な支持者たちは「今日の公演は○○、機嫌よかったよね。いつもファンサ(ファンサービス)してくれないのに。ラッキー!」と、その日のゴキゲン具合に関してさえも一喜一憂して夢中になっているものだが、一般的には、やはり無愛想な振る舞いをすると、よくは思われない。アイドル=にこやかに、誰に対しても笑顔で、が基本なのだ。とはいえ、最近では、「塩対応」という言葉が誕生し、ファンに対してツレナイ対応をすることさえもが、キャラクターとして確立したアイドルもいるが。

テレビでは毒舌で有名な女医が、カメラが回っていないところでは、ものすごく低姿勢で礼儀正しい様も実際目にしてきた。常にテンションが高い芸人たちは、往々にして、プライベートでは物静かな人が多いのにも驚く。芸能界で生き残っていくためには、何か目を引くようなキャラクターを作り演じていく必要もあるのだ。

そんな綺羅星のごとく存在する数々のアイドル・著名人たちを、実際に取材し、ライブに潜入し、膨大なインタビュー記事を紐解いて、独自の切り口で一刀両断したコラムがある。辛酸なめ子著『アイドル万華鏡』がそれである。痛烈な毒舌ぶりが、読んでいて実に気持ちいい。各コラムが書かれたのが2004年前後、その後、本書が発刊された2010年に「現在の状況」が加筆されているが、そこからさらに5年が経過しているので、今となってはすっかり名も聞かなくなったアイドルたちも取り上げられている。そこがまた、この世界の儚さを物語っている。

子どもの夢を受け入れるか否かは、あなた次第

ただ、本書を楽しんで読む分には問題ないが、アイドルを志す者が自分のこととして、自分の家族のこととして読むと、また違った複雑な感情が渦巻く。

そういえば、いまや国民的スターの地位に上り詰めた某アイドルグループの家族と親しくしていたことがあるのだが、アイドルを兄に持つその友人は、よく学校でイジメられていたという。兄と仲良くなりたいがため、自分に近づいてくる大勢の女子たちにも辟易していた。自宅の庭に飾ってある置物が盗まれたり、郵便ポストが勝手に開けられていたなんて、日常茶飯事だったと語っていた。ひとたびアイドルになる!と心に誓ったのならば、家族にまで何かしらの犠牲を強いることは、想定内のこととして覚悟しなくてはならない。

さて、かつて某芸能事務所に応募していた筆者の後日談だが、最近父親から衝撃の告白をされた。なんと、一次審査通過の書類が届いていたというのだ。「そうなの???もし、そのまま受け続けてたら、今頃大スターになってたかもね~」などと笑い話で済ませたが、父親もやはり、芸能界に対して不信感を持っていたに違いない。娘をアヤシイ世界に入れてたまるか!と合格通知をもみ消したのだ…確かに、自分の娘が『アイドル万華鏡』のような書に題材として取り上げられたら…親としては気が気じゃない。

我が娘は、いま1歳。もう数年したら『ママ、わたし、アイドルになりたい!』と打ち明けてくる可能性は高い。そのとき、その背中を押して応援してあげられるか、はたまた、あの手この手で諦めさせるか。
本書を読みながら、もうしばし迷うことにする。

(文・水谷 花楓)

アイドル万華鏡

著者:辛酸なめ子
出版社:河出書房新社
光り輝くアイドル界、その裏には不穏な空気が立ち込めています…。日々猛スピードで消費されゆくアイドルたちの生オーラを感じに著者がイベントなどへ潜入を敢行。さらにインタビュー記事などの膨大な資料から、愛してやまないアイドルたちの真の姿に迫った、抱腹絶倒の傑作コラム集。

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