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夫婦円満の秘訣は「上機嫌&ぼちぼちいこか~」だ

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ひな祭りになると、思い出すお顔がある。
おセイさんこと作家の田辺聖子さんと、カモカのおっちゃんとして有名だったご主人・川野純夫さんのお二人だ。
カモカのおっちゃんは既に亡くなったけれど、二人のニコニコ顔を思い出すと、お内裏さまとおひな様のようで、桃の花を捧げ、「白酒はいかがでしょう?」と、勧めたくなる。
ひな祭りのほんわかとした雰囲気とご夫妻のイメージが重なって見えるのだ。

住み歩いてこそ人生

私は転勤族の娘で、あちこち住み歩いて育った。
今は神戸に住んで30年になるが、ここに落ち着くまでは、静岡、東京、埼玉、宮城、北海道、神奈川、愛知と、移動を繰り返してきた。
神戸に越してくるときなど、運送会社の人に「うちでアルバイトしませんか?」と、誘われるほど、引っ越しを楽しんでいた。
新しい土地に住むのが好きなのだ。

関西は未知の土地

ただし、30年前、関西に住むことになったときは、珍しく不安だった。
周囲の友人たちが「大丈夫?やっていける?」と、真剣な顔で心配するからだ。
彼女たちいわく、関西人は顔は笑っていても、関西弁を話さず、阪神タイガースを応援しない私のような関東女を受け入れてはくれないというのだ。
確かに私は、関西弁を話せない。東北弁と駿河弁が混じった関東弁を話し、好きな球団は巨人だ。
大丈夫だろうか?
いや、大丈夫なはずがない。

関西ゆかりの二人の作家

神戸に引っ越してくると、不安は現実になった。
知り合いもなく寂しくて、たまらなかった。
どうしていいかわからず、ベランダに出て、ぼーーっと時を過ごしてばかりいたが、ふと、「そうだ、関西にゆかりのある作家の本を読めばいいのだ」と、思い当たった。これまでも、新しい土地に移る度に、そうやって乗り切ってきたではないか。
最初に、はまったのが谷崎潤一郎の『細雪』だ。私が住んでいる町に谷崎がかつて暮らした家がそのまま残っていたので、一方的に親しみを感じていた。
次に読んだのが『ジョゼと虎と魚たち』である。大阪に生まれ、神戸で結婚生活を送り、伊丹で暮らしている作家・田辺聖子の小説だ。
これは読まずにはいられない。

おセイさんとカモカのおっちゃん

関西になじみたいと願って、関西出身の作家の作品を選んだはずだったが、読み始めると、そんなことはどうでもよくなった。あまりにも面白くて、自分がどこにいるか忘れそうだった。
田辺聖子はすごい。本当に面白い。頭ではなく、体が笑う。
小説だけではない。ご主人とのかけ合いを描いた「カモカのおっちゃん」シリーズも秀逸で、関西で暮らすことに怯え、妙に肩に力が入っていた自分をなんて馬鹿なんだろうと思った。
そして、夫婦といえば、カモカのおっちゃんとおセイさんを連想するようになった。

毎日を笑いで満たすために

とはいえ、現実の生活は、おそらくは修羅場の連続だったろう。
売れっ子作家と開業医の夫婦である。二人とも目が回るほど忙しい。
おまけに、亡くなった前の奥様がのこしたお子さんと夫の家族も一緒に暮らす大家族だ。食事ひとつとっても、毎回、大騒ぎだろう。
それなのに、二人の表情は明るい。
どうなっているのだろうか。
関西人だから?
いいえ、違う。そんなはずがない。
そもそもカモカのおっちゃんは奄美大島の出身で、関西人ではない。

いつも上機嫌を目指そう

男と女は、ぼちぼち』(田辺聖子・編著/朝日新聞出版・刊)を読むと、「ああ、こうやって、夫婦は笑って暮らしたのか」と、納得する。
田辺聖子が魅力的な七人の方たちをお相手に行った対談に加え、「日本人の恋愛美学」について語った講座を収録したものだが、まるで宝の山のように珠玉の言葉が満載だ。

だけど、夫婦を円満にやっていこうと思ったら、いつも自分が上機嫌でいることが必要ね。人間の核というか、芯の強さみたいなもの。それを私は精神的腕力と思っているの。上機嫌というのは、赤の他人同士が一緒に暮らしていく上で、大変な宝物になると思いますよ
(『男と女は、ぼちぼち』より抜粋)

そうだ!そうなのだ!!
夫婦が現実に負けず、わははと笑っているためには、つらいときも上機嫌でいることが大事なのだ。

ぼちぼちいこうか~~

新しい土地へ引っ越し、しょんぼりしているあなた。
職場の移動で、慣れない仕事にまいってるあなた。
なぜだかわからないけど、イライラしてしまうあなた。
夫婦で仲良く笑っていたいのに、うまくいかず泣きたい気分のあなた。
田辺聖子の『男と女は、ぼちぼち』を抱きしめ、ぼちぼち毎日をやり過ごしましょう。
私もそうします。

(文・三浦暁子)

男と女は、ぼちぼち

著者:田辺聖子
出版社:朝日新聞出版
男も女も年寄りも人間は可愛げが大事。笑わせたり心を和ませたり、相手に届く言葉を多く持っている人こそが大人だと著者は言う。人生に行き詰まった時「こうあるべき」ではなく、「まぁそんなこともあるな」と思えるかどうか。生きるヒント満載の田辺語録集。

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