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友がスピにハマると寂しくなるのはなぜ

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なぜ友がスピリチャルにハマると寂しさを覚えるのか。

一言であらわすなら、それは置いてけぼり感だ。しかし、スピの世界をちょっとは覗き見してみたい。スピな方はどんな毎日を送っているのか知りたい。『ねねさんのスピ生活』(水鳥ねね・著/イースト・プレス・刊)は、そんな霊感も超能力もないわしのようなスピ素人のためのコミックエッセイである。

ここ10年ほど、幼なじみの女友達きゅーちゃんも、スピリチャルにハマっている。昔から占い好きだったが、テレビで「オーラの泉」が始まった頃からスピは本格化。見えない世界を語るきゅーちゃんの巧みな話術のおかげで、さほどスピってもいないど素人の当方もすっかりオーラの虜になった。

そのうち、彼女は「お水とり」と言って、方角の良い土地に旅に行くようになった。やがて占いも、手相などというありがちなものだけではなく、前世は何者だったか、前々世はどこで産まれたか、現世ですべきことは何かなどを“降臨”あるいは透視(?)するハイレベルな場所に行くようになった。「有名な先生のところに行ってきた」と言うので鑑定料金を聞いたらちょっとしたワンルームのひと月分の家賃くらいの金額で、後ろに倒れそうになった。

 わしだってUFOが見たいんだ

きゅーちゃんは、元来オモロ系女子だ。人間の洞察力や観察力にたけ、それをオモロネタに昇華する才能と、自分の冴えないライフをもギャグに出来る懐の広さがあった。飲み会では常に大人気だが合コンではいまひとつウケず、「オモロい女がモテるなんてのは大ウソだ」と憤る顔も面白かった。

そんな彼女が年々スピのステージを上げるにつれて、少しずつ日常の庶民のオモロから遠のいていくような物淋しさを感じた。

「あちらの方(かた)」(守護霊などを差すときにきゅーちゃんが使う言葉)との交信より、目の前のわしとのバカ話に注力して欲しいと思った。

ある日、青果店で野菜を買い込んでいるので煮物でも作るのかと思ったら、「食べるんじゃないよ、エキスだけ」と言う。

え?と思ったら「オカルト(食)だから。気にしないで」。

魔女が大鍋で謎のスープを煮込む姿を想像した。あとで聞くと、その謎のエキスを飲んでいればご飯を食べずとも生きていけるという人体の常識を根底からくつがえす煮込みエキスだった……。

 

きゅーちゃあああああん、地上に戻ってきて〜〜〜!

 

当方にも信じている神様、というかお守りがある。困った時、願い事がある時は、それはもう熱心に全身全霊で拝む。願いが叶った時は、天のご加護をひしひしと感じ、改めて感謝を胸に拝む。拝み倒す。ひょっとしたら、じぶんには念力のようなものが備わってるのかもしれないと期待することだってあった。

しかし、きゅーちゃんが「ついに見ましたよ、UFO」と言った時、とうとう素人と超人のラインが引かれたのだと悟った。きゅーちゃんは、もうわしの手が届かないところに行ってしまったんだ。それはおおいなる寂しさと羨望をともなうほろ苦い感触だった。

「見たよ」ではなく「見ましたよ」と丁寧語で言ったのにも、うっすらと傷ついた。

そんなきゅーちゃんは、ど素人への配慮からか自分からスピワールドについては多くは語らなくなった(啓蒙しないのが彼女の信条だと思われる)。しかしそうなると、かえって今はどんなステージにいるのか気になってくるのが人情だ。それに、何かしら困難な壁にぶつかった時や迷った時に、つい求めたくなるのは心の友きゅーちゃんのアドバイスなのだ。

こないだ、とあることで激しく落ち込み、「もう未来が見えぬ。こんなときはどうすればいいのだ」ときゅーちゃんにメールをしたら、わしのヘコみ理由を「たいしたことねーよ。ありがちありがち」と明るく笑い飛ばしたあとに、宇宙の仕組みを語る海外の幼い子どもの言葉が送られて来た。『人の運命はドラマのシナリオのように大体決まっているんだ。変えることもできるけれどね。(それも含めて)すでに自分が知っていることを、教えてくれるのが人生なのさ』

わし、むちゃくちゃに救われた。

この本の著者ねねさんも、「たとえ守護霊が先導したことでも鵜呑みにする必要はありません。ただ守護霊はあなたに考えるキッカケを投じたいのだと思います」と言う。

わしがこの先、スピ玄人になることはたぶんない。しかし、己が道に迷ったときには、守護霊様とスピ友に鬼交信しようと思う。

 (さくらいよしえ)

ねねさんのスピ生活

著者:水鳥ねね
出版社:イースト・プレス
小さい頃から不思議なものを視たり、感じたりしてきたねねさん。ある日を境に霊感があるからだ!と気づく。ねねさんの体験をもとに、不思議なものたちとの関わり方を学んで行く。

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