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世界遺産になっていたかもしれない名古屋城

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今年1月3日に時事通信が配信したニュースによると、数年前から名古屋市の河村たかし市長が「名古屋城天守閣を木造で再建したい」と発言し、議論を呼んでいるそうだ。費用は約400億円にも上るといわれ、目処が立っていない状態である。

名古屋城では現在、本丸御殿の再建が急ピッチで行われている。御殿の総工費だけでも約150億円に達する見込みとされ、天守閣の再建費用を加えると約550億円である。某競技場の建設費よりは安いとはいえ、巨額のハコモノ事業といえるだろう。なぜ、木造にここまでこだわるのだろうか。

戦災で失われた名古屋城

名古屋城は昭和5年、お城ではじめて国宝に指定されている。現在、国宝かつ世界遺産にも登録されている姫路城が国宝に指定されたのは、その翌年のことだ。戦前は名古屋城と姫路城が、日本を代表する城の双璧と言われていた。

ではなぜ名古屋城は世界遺産になっていないのか。昭和20年に、天守閣や本丸御殿をはじめ、ほとんどの建物が戦災で焼失してしまったからだ。筆者は名古屋城を観光に訪れたことがあるが、ガイドスタッフが「もし名古屋城が空襲で焼けていなければ、姫路城より先に世界遺産になっていた」と話していたのが強く印象的だった。

コンクリートでは味気ない?

名古屋城天守閣は昭和34年に鉄筋コンクリートで再建された。外観は忠実に再現されているものの、内部は博物館になっている。エレベーターが設置され、いたって現代的な造りだ。

再建された当時は、名古屋のシンボルが蘇ったとして好評だったそうだ。記念撮影をするのであれば、外観さえしっかりしていれば十分な気はする。ところが、最近は歴女のように城巡りをする人が増え、城に対して人々が“本物志向”を求めるようになっているのだとか。

そして、再建から50年以上経ち、コンクリートの耐用年数の問題が生じている。耐震補強をするか、コンクリートの天守閣を取り壊して木造で建て直すかという問題に直面しているというわけだ。

忠実に再建できる天守閣

オールカラーでわかりやすい! 日本の城』(中山良昭・著/西東社・刊)には、そんな名古屋城を筆頭に、日本各地の名城が網羅されている。本著をめくってみると、戦災で失われた天守閣が多いことに驚いてしまう。和歌山城、大垣城、岡山城、福山城などの天守閣が戦災で焼失してしまった。

いずれも鉄筋コンクリートで再建されているが、名古屋城は他の城にはない強みがある。戦前に天守閣や御殿の実測調査を行っているため、オリジナルのほぼ完璧な図面があることだ。やろうと思えば寸分違わない姿で、木造の天守閣を再建することができてしまうのだ。木造にこだわる理由はここにあるといっていいだろう。

江戸城、小田原城でも再建計画が浮上!

ところで、天守閣を木造で再建する計画があるのは名古屋城だけではない。江戸城のほか、小田原城でも計画があるのだ。

各地にある鉄筋コンクリートの天守閣は、終戦から落ち着き、世の中が徐々に豊かになり始めた昭和30年代に一斉に建てられた。そして、再び、天守閣再建ブームが盛り上がりつつある。とはいえ財政難の時代、果たして天守閣の夢は実現するのだろうか? 今後の行方を見守ってみることにしよう。

(文・元城健)

オールカラーでわかりやすい! 日本の城

著者:中山良昭
出版社:西東社
城のもつ戦略・戦術的要素を交え、日本の城を理解するための基礎知識を紹介。さらに、全国各地に残っている名城を、図面や歴史的役割、城主のことなどを織り交ぜ、多面的に紹介しています。

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