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脳は認知を節約する。あなたはなぜ誤解されるのか?

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「ハロー効果」をご存じだろうか。ハローとは「後光」の意であり、文字を美しく書ける人に対して「きっと頭も良いはずだ」などのポジティブな偏見をもってしまう心の働きだ。ヒトの脳は、良くも悪くも誤解しやすい。

誤解を生じさせる心理的メカニズム

だれもわかってくれない』(ハイディ・グラント・ハルバーソン・著/早川書房・刊)によれば、わたしたちの脳は「認知的節約家」であるという。

脳は大量の情報を処理しなければならないため、できるだけ精神的エネルギーを節約します。したがって他者を理解しようとするときも、多くのショートカットや憶測を用いるのです。

(『だれもわかってくれない』から引用)

いかに「ヒトの脳が相手を理解するためのエネルギーをケチる」かといえば、器物損壊事件の被告における「童顔度」を調査した研究結果がある。500件以上を調べたところ、童顔であることが裁判の判決に大きな影響を及ぼしていることがわかったという。

故意の犯行かどうかを争う裁判では、大人びた顔の被告とくらべて、童顔の被告のほうが「無罪」になることが多かった。自動車事故をはじめとする過失を問う裁判では、童顔の被告のほうが有罪になることが多かったという。

研究結果からは「悪意は少ないが、経験不足であり、不注意がちだ」という童顔に対する「認知的な節約」が透けてみえる。やはり、ヒトは「認知的にケチ」なのだ。

誤解されやすい人は「透明性の錯覚」に陥っている

あなたが誤解されるのは、世界中のヒトたちが「認知的節約家」であるせいだ。しかしながら、身に受けた誤解を不本意だと思っているあなたもヒトであり、やはり「認知的な節約」によって自分自身のことを正しく理解していない。

あなたが「自分の気持ちは相手に明確に伝えた」とか「彼は私の考えをわかっているはずだわ」などと思っているとき、ほとんどの場合、あなたの気持ちは伝わっていませんし、彼はまったくわかっていません。

心理学では、これをtransparency illusion(透明性の錯覚)と呼びます。

(『だれもわかってくれない』から引用)

自分が思っている以上に、あなたという人間は周りの人々にとってミステリアスな存在なのだ。肉親や友人や同僚だからといって、あなたのことを理解してくれていると思うのは「透明性の錯覚」にすぎない。

信用してもらいやすくなる3つのコツ

他の人が自分を客観的に見てくれているという思い込み。もう一つは自分が自分自身を見るのと同じように、他の人も見てくれているという思い込みです。

(『だれもわかってくれない』から引用)

このように、わたしたちは「2重の思い込み」をしていることが心理学の研究によって明らかにされている。誤解をまねく「ミステリアス」に感じさせる原因は、たいてい「表情」にある。わたしたちの顔は、思っているよりも表現力に乏しいのだ。

偏見や先入観をあらわす「色眼鏡で見る」という慣用句がある。心理学にも「レンズ」という用語があり、なかでも「信用レンズ」にまつわる研究が興味ぶかい。

ハーバード大学の心理学者であるエイミー・カディーの研究によれば「人が肯定的に見られるか、否定的に見られるか」は「温かみ」と「能力」が大いに関係するという。

能力は個人差があるけれど、人間的な温かみを伝えることならば努力次第で誰でも実現可能のように思える。エイミー先生いわく「相手に関心を払う」「共感を示す」「こちらが先に相手を信用する」という3つのことに注意すれば、相手の「信用レンズ」にかなう人物として映ることができるらしい。

誤解をとくために必要なたった1つのこと

なにか失敗をしたとき、会社の上司に悪い印象を与えてしまうことがある。たとえば「遅刻」だ。そのような時にも、容赦なく「認知的な節約」が発動する。瞬時に「ダメなやつ」という烙印が押されてしまい、しばらくのあいだ「悪い心証」が維持される。誤解されてしまう。

あなたなら、どのように挽回するだろうか。「2度と遅刻しない」ではダメだ。「遅刻社員」「信頼がおけない」という誤解を解くためには、相手に対して「圧倒的な量の証拠」を示さなければならない。

具体的には、遅刻してしまった次の日から「かならず1時間前に出社する」ことを7日間続けてみることだ。まずはこれで上司の注意をひくことができる。次の7日間さらに7日間……というように「1時間前出社」を続けてみせれば、たとえ厳しい上司であっても前向きに感じてくれるはずだ。あとは2度と遅刻さえしなければ、挽回できるのではないだろうか。

(文:忌川タツヤ)

だれもわかってくれない

著者:ハイディ・グラント・ハルバーソン・著、高橋由紀子・訳
出版社:早川書房
そんなつもりで言ったわけじゃないのに、勝手にそうだと決めつけられる。自分では笑顔でいるつもりでも、だれも話しかけてくれない。後日、人に言われて初めて気づく。どうやら怒っていると思われていた……。こういった「誤解」は、オフィスでも、学校でも、家庭でも、老若男女関係なく、つねに起こる問題だ。ところが近年、その仕組みは科学的にかなり解明され、予測することが可能になっていている。モチベーションと目標達成分野の第一人者で、コロンビア大学ビジネススクールで教鞭をとる社会心理学者の著者が、誤解の原因とその解消法について教える実践の書。

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