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ヤバい! 電車の中で赤ちゃんが泣き止まない!

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「夕方のクソ混んでる電車にベビーカー押して乗ってくんな!しかも子ども泣かせるな!」

とある掲示板で見つけた書き込みだ。寄せられるだろうレスの内容をはじめ、さまざまな可能性をまったく考えていないアグレッシブな意見なので、えらい勢いで叩かれていたことは言うまでもない。そりゃそうだ。ママだってわざわざ混む時間を狙って乗ったわけがないし、場の空気を読んで泣く、泣かないを決める赤ちゃんなんていないんだから。

あえて言うほどのことか?

そんなに怒っちゃったのは、たとえば乗って来る時にベビーカーがぶつかったから?  それとも信じられないくらい邪魔だったから? あるいは赤ちゃんの泣き声がうるさかったから?  まあ、全部当てはまるだろう。ただ、思うのだ。わざわざ掲示板に書いて世間の反応を問うほどのことか?
ベビーカーに関して言えば、2014年3月の時点で、国土交通省が電車やバスの中でベビーカーはたたまなくてもOKという公式見解を出している。それに、泣き止まない赤ちゃんに対しても、わざわざ書き込みというひと手間をかけて毒づくより、はるかにベターな方法があるはずだ。

魔法の手を持つ小児科医

カリフォルニア州サンタモニカにあるパシフィック・オーシャン・ペディアトリクスという小児病院に勤務するロバート・ハミルトン医師は、以下のような段取りで、数秒あれば赤ちゃんを泣き止ませてしまう。

1. 赤ちゃんの両腕を腕組みのような形にして胸の前でクロスさせる
2. 両腕をその形にキープして自分の腕を添え、手で赤ちゃんのあごを支えながら、利き手で赤ちゃんのお尻を持ちあげる
3. 45度の角度を意識して体全体を優しく揺らす

このテクは、生後2~3ヵ月までの新生児に対して最も効果があるようだ。これで泣き止まなかったら、赤ちゃんはものすごくお腹がすいているか、病気かのどちらかだという。実にざっくりした判断基準ではあるが、専門家が言うことなので、信じるしかない。

レジ袋のがさがさ音とヘビメタのギターソロ

とは言え、電車の中で泣いている他人の赤ちゃんを抱き上げ、ハミルトン・テクニックを実践するわけにはいかない。そこで、いろいろ調べてみた。
簡単なのはどこのスーパーでも手に入るレジ袋。目の前でガサガサやると、どうしても泣き止まなかった赤ちゃんが涼しげな表情になってしまう。あちこちのサイトで、実例映像が次々とアップされている。
「タケモトピアノ」のCMは有名だが、意外にもヘビメタとかハードロックも効果があるらしい。特にいいのは、たとえばエディ・ヴァン・ヘイレンがやっていたようなライトハンド奏法(タッピング)だという。こちらも検証映像が多数アップされている。
筆者と同じマンションに住んでいる若いママは、彼女のお父さんが大好きなディープ・パープルの『ハイウェイ・スター』とか、レインボーの『ロング・リブ・ロックンロール』のギターソロがいいと言っていた。

泣いてる見知らぬ赤ちゃんとの向き合い方

具体的な方法論を確認したところで、たまたま電車で一緒になった赤ちゃんと自分という関係性を俯瞰してみたい。
〝10秒子育て〟という言葉をご存じだろうか。こども未来財団という団体が提唱している「身近な子育て応援活動」ポスターのキャッチコピーだ。子ども連れのママに席を譲るとか、泣いている子どもを一緒にあやすとか、ベビーカーでの乗り降りを助けてくれた、みたいな実例も紹介されている。これくらいのことは誰でもすると思うのだが、冒頭で紹介したようなタイプの人も、いまだに歴然として存在する。

日本は子ども社会か

この間の飲み会で、知り合いが「日本は絶対に子ども社会だ!」と主張していた。家のカレーの味が子供向けになっているのが気に入らないらしい。彼の論拠の強弱・正否はともかく、日本子ども社会説は根強い。そして、カレーの味みたいな、ごくごく小さな憤怒が積もり積もって公共交通システムでのベビーカー問題にもつながるんじゃないだろうか。
日本社会の対極に位置するのが、フランスのようだ。フランス、大人社会というキーワードで検索をかけると、かなりのヒットがある。一連の流れで見つけた『フランス人は子どもにふりまわされない』(パメラ・ドラッカーマン・著/CCCメディアハウス・刊)という本を読んでみた。書き手は、フランスで3人の子育てをしたアメリカ人女性ジャーナリストだ。
泣いている赤ちゃんに対する姿勢として、次のような文章がある。

フランスの専門家はよく、少し乱暴に泣きっぱなしにする方法を提案する。赤ちゃんを長時間泣かせっぱなしにするのである。そしてこれについても赤ちゃんに話すこと。普通は数日で成功するそうだ。
『フランス人は子どもにふりまわされない』より引用

泣きっぱなしにする、というチョイスは筆者の中にはなかった。この部分だけを切り取って両国の比較をしようとは思わない。それに、この原稿で書いたことはママたちにとってはごく当たり前のことだろう。
ただ、かなり疎い子育てというジャンルの本『フランス人は子どもにふりまわされない』を読んで、〝10秒子育て〟と自分との距離感を新たにしたことは確かだ。
次に電車に乗る時はバッグの中にレジ袋を準備して、iPhoneにはタケモトピアノのCM、それに『ハイウェイ・スター』と『ロング・リブ・ロックンロール』のビデオをしっかり入れ、赤ちゃんが泣きだすのを待つくらいの勢いで臨もうと思っている。

(文:宇佐和通)

 

フランス人は子どもにふりまわされない

著者:パメラ・ドラッカーマン
出版社:CCCメディアハウス
フランス人に学ぶ、ママの100の心得。 パリ在住のアメリカ人ジャーナリスト、パメラ・ドラッカーマンの世界的大ベストセラー本『フランスの子どもは夜泣きをしない パリ発「子育て」の秘密』のエッセンシャル版。

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