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100のアイデアを出すと、見えてくるもの。

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人は100以上のアイデアを出せた時、変わることができるのだそうだ。実際私もそれに挑戦したことがあるのでなんとなくわかる。あらゆる方角からそのことについて考えるので、脳の、普段使っていないところが刺激され、相当な頭の体操にもなったのは間違いない。

豆腐百珍 百番勝負』(花福こざる・著/イースト・プレス・刊)というコミックエッセイには100種類の豆腐料理がでてくる。そこには、ただ作るだけではなく、さまざまな障害を乗り越えていく冒険談が繰り広げられていた。何かを100回やり遂げると、ひとつのドラマが出来上がるのかもしれない。

100個出せますか!?

私が100のアイデア出しを経験したのは20歳の頃。通っていたプランニングセミナーの先生にアイデアを300出せという宿題を与えられた。何のアイデアだったか、地球環境を良くするためには、みたいなものだったと思う。

その時、先生はひとつのテーマのアイデアを300出せる人は少ないとおっしゃった。出せてせいぜい100だろうと。そう言われると、やってやろうじゃん、と闘志が湧いた。できると思った。窓や鉛筆、ノートなど、目に映るあらゆるものをそれに結びつければいいじゃんと短絡的に考えていたのだ。

アイデアの視点

しかし、さくさくと進んだのは、最初の20、30までだった。そこから先は、どれを見ても、出したアイデアと似通ってしまうのだ。新たな切り口や新たな視点がないとどうしてもその先に行けないという行き止まりを味わった。たとえば地球とノートという組み合わせだったら、ノートを使わず電子ノートを使うというエコアイデアは思い浮かぶ。でも、さらにもうひとつ出せと言われたら大変だった。

エコなアイデアばかりでは、いつかは案が尽きる。どうしても視点を、温暖化の進行を遅らせるには、森林をもっと増やすためには、などと、別の方向に持っていく必要がある。しかしついにはその視点のバリエーションまでもが出て来なくなるのだ。

使えるアイデアとは

結局私は100のアイデアを出したところでギブアップした。部屋の中で目に映るものは全部ひとり脳内会議に出したし、視点や方向性についてもいくつも用意したつもりだった。それなのに先生が言った300なんてとても無理だった。それでも先生はよく100出したな、と私を褒めてくださった。100すら出せずに挫折する人が多いのだという。けれど私の気持ちは晴れなかった。それは、私のアイデアがどれもこれもダメすぎたからである。

へたな鉄砲数打ちゃ当たるなんて言葉通り、100個アイデアを出していれば、ひとつくらいは使えるものがあるはず! なんて意気込んでいたというのに……。これは平凡、あれは実現不可能、などと、使えないもののオンパレードだったのだ。あの挫折感、自分の脳みそのボキャブラリーやバリエーションのなさ、それを20歳で知ることができて、良かったと思っている。もっと見聞を広めなければ!と思い知らされたし、実際あちこちに出かけるようになった。

江戸時代のアイデア

『豆腐百珍』は、豆腐料理を100種類集めた江戸時代のベストセラー料理本である。そのすべてを実際に作ってみたのが、本書『豆腐百珍 百番勝負』だ。なぜ豆腐なのか。当時の人気料理は豆腐を使ったものが多く、江戸時代の庶民のメインディッシュでもあったからかもしれない。レシピを見ると時々肉や卵も出てくるが、ほとんどは豆腐にワサビや生姜などの薬味を足したり、味噌などで焼いたりという質素なもの。あれ? さっき似たような料理あったよね? と作っていくうちに漫画家さんは、江戸時代の著者のアイデア出しの苦悩に気づき、そうか、ネタ切れだったのかもね、などと寄り添うようになっていく。

豆腐料理を100種類も作るなんて、大変なことだ。気持ちが萎えそうになる彼女を編集者が、夫が、友達が励まし続け、少しずつ片づけていく。ひとりで作るより友達と作ったほうが、ひとりで食べるよりも友達と食べるほうがいいと気づき始める。アイデア出しも同じだった。友達と頭を付き合わせてそれぞれの案を出し合うと、これは!という案が出てきたりする。次々豆腐料理に挑戦する作者の気持ちが、私がアイデアを出しまくってウンウン唸っていた頃に近くて「わかるわかる!」と思わずうなずいていた。

(文・内藤みか)

豆腐百珍 百番勝負

著者:花福こざる
出版社:イースト・プレス
江戸時代のベストセラー料理本に挑戦!お豆腐料理を100品作って食べまくるマンガ。江戸時代に大ベストセラーとなった、豆腐料理本『豆腐百珍』に、マンガ家花福こざるが挑戦します。原文を読み解きながら、100品の豆腐料理を作っては食べ、作っては食べ…。時に美味しく、時にそうでもない江戸時代の豆腐レシピに、古の食文化の凄さ、日本文化のおもしろさを感じながら、味わいつくしていきます。江戸の料理本、意外と使えて、うんちく満載。この『豆腐百珍百番勝負』もただの食レポコミックエッセイと思う事なかれ、読んで楽しくためになり、夜の献立の参考にもなる、使える面白マンガです。

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