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『新・牡丹と薔薇』に継承される鶴啓二郎イズム

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「満を持して」という表現は、このためにあるに違いない。2015年11月30日、『新・牡丹と薔薇』というタイトルの昼ドラが始まった。2004年に放送されていた東海テレビ制作の昼ドラ、あの『牡丹と薔薇』のリメイク版だ。ここしばらく、月~金の13時半からは情報バラエティー番組を中心に各局ザッピングしてしのいでいた筆者に、至福の時間が戻ってきた。

東海テレビ昼ドラ:私的系譜の始まり

筆者の東海テレビ昼ドラデビューは、29年前に放送された『愛の嵐』だった。エミリー・ブロンテの『嵐が丘』をベースにしたストーリーが、大正から昭和にかけての時代を背景に綴られる。
話の軸となるのは渡辺裕之さん演じる主人公(川端猛)と田中美佐子さん演じる良家のお嬢様(三枝ひかる)の恋なのだが、事業の失敗がらみの政略結婚、戦死したはずの猛の復活などのサイドストーリーをちりばめながら、どえらいスピードで駆け抜ける。 抜群の疾走感においていかれないために、本放送はもちろん、おさらいのために夜も録画を見ていた。

魅力的な悪役とエキセントリックな小道具

東海テレビ昼ドラシリーズにハマる理由を尋ねられたら、筆者は迷わず「魅力的な悪役とエキセントリックな小道具」と答える。たとえば『愛の嵐』なら、長塚京三さん演じる大河原勇作。2002年の『新・愛の嵐』(要潤さん主演)で同じ役を演じた石原良純さんも、画面からはみ出しそうな存在感だった。『スターウォーズ』で言うならダースベイダーだ。
小道具に関しては、菊池寛の小説をドラマ化した『真珠夫人』(2002年4月1日スタート)浮気を疑う妻が夫に〝たわしコロッケ〟(皿の上にたわしを2つ並べ、キャベツを添えたもの)が登場し、昼ドラの1シーンとは思えない異質感は、ファンサイトでいまだに語り継がれている。
そして、シリーズのおよそすべてのエッセンスが詰め込まれていると言っていいオリジナル版『牡丹と薔薇』にも〝財布ステーキ〟(値札が付いたままの革の長財布を焼いてソースをかけたやつ)というあまりにも飛び道具な料理がフィーチャーされていた。

ミスター昼ドラ

東海テレビの昼ドラは、韓流っぽいと形容されることが多い。しかし筆者はむしろ、アメリカの伝統的ソープオペラ(『ジェネラル・ホスピタル』や『ザ・ヤング・アンド・レストレス』)とか、90年代半ばで言えば『ビバリーヒルズ青春白書』の進行を強く感じる。
一連の作品に関わってきた東海テレビの〝ミスター昼ドラ〟鶴啓二郎さんは、とあるインタビューに答えて次のように語っている。

「表現は『ハッキリ、クッキリ』。月曜から金曜まで放送しているからといって、1日目は『起』、2日目は『承』……という作り方はしません。その日、たまたまチャンネルを合わせた人も『面白い』と思ってもらえるよう、1回ごとにしっかり起承転結を入れます。正味20数分の作品に起承転結を入れるため、無駄をそぎ落とした“むき身”のセリフと見せ場になるんです」
 女性自身『〝ミスター昼ドラ〟が語る「目が離せない」ドラマの作り方』から引用

『新・牡丹と薔薇』の第1週目の放送では、鰐淵春子さん演じる小日向カオルコという濃いキャラが、まず英語で言って、まったく同じ意味の日本語をそのままなぞる独特のセリフ回しに食いついてしまった。
同じインタビューで、鶴さんはこうも語っている。
「ここでは話せないことも、いろいろありましたよ(笑)。でも、脚本家にとっては、これほど〝人間〟を書き尽くせるドラマはないし、俳優にとっても、これほど演じ尽くせるドラマはないんです。みんな書きたい、演じたいという〝業〟がある。こんなにいい現場はないですよ」

もう脚本家にはなれないけれど…

脚本家。なんて素敵な響きなんだろう。
今からでは絶対に間に合わない。でも、どうやったらなれたのかくらいは知っておきたい。そこで、『脚本家になる方法』(福田卓郎・著/青弓社・刊)という本を読んでみることにした。「こうやって脚本は書く」、「脚本家への道」、「私はこうやって脚本家になった」、「脚本家として生活する」といった超実用的な章タイトルが並ぶマニュアルだ。魅力的な悪役やエキセントリックな小道具を思いつくための背景は、こういうことだったんだ。
著者の福田卓郎さんは、まえがきでこうおっしゃっている。

「いつかはドラマを書きたい」とか、「いつかは小説を書きたい」と言っている人があなたのまわりにもいるはずだ。だがその人のいつかはいつまでたっても訪れない。物語を「書きたい」と思うことと「書く」ことは別ものだ。さらに「書く」ことと「書き続ける」ことも別。
『脚本家になる方法』から引用

やはり、筆者は見る側に徹することにする。そして今日も、『新・牡丹と薔薇』に継承されている鶴啓二郎イズムを検証しよう。そういえば、最初の週の放送では、オリジナル版のキャスト(小沢真珠さん、大河内奈々子さん、西村和彦さん、川上麻衣子さん)のカメオ出演にファン心をくすぐられた。こういうところにも、〝イズム〟を感じるのだ。

 

(文:宇佐和通)

脚本家になる方法

著者:福田卓郎
出版社:青弓社
脚本家は、芸術家ではない、職人だ!人の心をとらえて揺さぶる、別世界を組み立てることーそれは孤独な作業でもあり、共同作業でもある。脚本家に必要な素質とは?ジャンルによる発想の違いとは?プロットからシナリオまでのプロセスとは?そしてどうやってデビューし、プロの脚本家として生活していくのか?テレビ・映画・演劇・マンガ・ラジオなど、あらゆるジャンルで活躍する現役脚本家にしか書けない、詳細にして実践的なガイド。脚本家を夢見るのではなく、職業としての脚本家をめざす人のための入門書。

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