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無線マニアが大注目。いま「中華ハンディ機」が流行している

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トラック運転手だった叔父は、現役時代に無線を愛用していた。車載の無線機を使って他のトラック野郎たちと楽しそうに交信していた。かつてケータイやスマホが無かった時代における「LINE」みたいなものだった。

「無線に萌える」とは、どういうことなのか?

叔父はアマチュア無線免許を保有しているが、わたしは受験も取得もしなかった。気が進まなかったのは、十代のころにはポケベルや携帯電話がすでに普及していたからだ。小型のハンディ無線機ですら大げさに思えた。

ふつうに生活していれば無線機を目にすることはない。だが、ある映画のワンシーンが無線にまつわる郷愁を呼び起こしたことがあった。

映画『機動警察パトレイバー 2 the Movie』の冒頭。女性警察官である「南雲しのぶ」が、パトカーを運転しているときに渋滞に巻きこまれてしまう場面。南雲は、周辺状況を確認するために警察無線で交信をはじめる。

「こちら、警視庁特車2課の南雲警部。応答願います」
「こちらは交機にいまるいち。南雲隊長ですね。研修でお世話になった本橋です。どうぞ」
「任務中失礼します。橋の両岸で通行規制の様ですが状況を説明願えますか」
「ベイブリッジに違法駐車している車に爆弾を仕掛けたと通報がありまして、橋の通過を全面規制。現在処理に向かうところです」
「了解。交信終わり。どうもありがとう」

(『機動警察パトレイバー 2 the Movie』から引用)

わたしはシビれた。10秒ほどの短いやりとりにすぎないが、簡潔でありながらも「研修でお世話になった本橋です」という部分に、国家権力に忠実な代行者たちの会話といえども人間味を感じさせるからだ。萌えを感じた。「交信終わり」といって会話を切りあげるのもカッコイイ。じつをいうと、一時期のわたしは、友人との通話を終えるときに「交信終わり」と告げていた。顔から火が出る。はずかしい。

「中華パッド」ならぬ「中華ハンディ機」が大人気

ラジオライフ』(三才ブックス・刊)は無線にまつわる情報誌だ。おなじ出版社から発行されている『ゲームラボ』にくらべてマニアックなイメージがある。書店で見かけたとき『ゲームラボ』ならば立ち読みしたり買うことがある。『ラジオライフ』は「無線をつかう機会がない自分には読むところがなさそう」と敬遠しがちだった。

最新号やバックナンバーを電子書籍でも購入できるので、ためしに『ラジオライフ 2015年 12月号』を読んでみた。想像していたよりも「無線マニアではない読者」でも楽しめるような特集や連載記事が充実していた。

まず紹介したいのは「中華ハンディ機最新マニュアル」という特集だ。中華ハンディ機は「中国メーカーブランド製の小型無線機(レシーバー)」意味している。

中華パッド(中国メーカーブランド製のタブレット端末)を日本人向けに改造したものなら、わたしも使っている。AndroidとWindows8を搭載した『原道 W7』という中国製タブレットだ。日本語設定に改造済みのものを1万円で購入した。Nexus7のおよそ半額だ。動作は軽快であり、Nexus7よりも使いやすいという購入者さえいる。わたしも『原道 W7』は格安中華パッドの名機だと思う。

アマチュア無線の世界にも「格安中華ハンディ機」の名作がある。BAOFENG(バオフォン)というメーカーのUV-5Rシリーズという機種だ。Amazonにアクセスすれば国内発送で並行輸入品を約4000円で購入できる。ちなみに、国内メーカーの入門機の価格は2~3万円だ。XperiaやiPhoneなどの高級機種と格安スマホの関係に似ている。

ただし中華ハンディ機UV-5Rシリーズは、届いてすぐに使えるわけではない。日本仕様に改造するため、無料配布されているソフトウェアを利用して無線機のプラグラムを書き換える必要があるという。法律で定められているアマチュア局の保証実施者(TSSもしくはJARD)に必要書類を送付する作業をおこなう。もちろん、すべて合法だ。

本書では、カラー19ページにわたって購入ショップから設定や操作方法に至るまで、手順を1コマずつ写したの画像によって丁寧に解説がおこなわれている。ここに書いてあるとおりやれば、インターネットで調べる必要はないかもしれない。

これを読んでアマチュア無線を始めようとは思わないが、スマートフォンやタブレット端末と同様に、中国メーカーブランド製の電子機器が、日本の市場において一定の信頼を得ているという現状を知ることができた。

無線マニアは国家権力の監視者である

月刊誌である『ラジオライフ』は、無線に関係のない連載コラムも面白い。

「新しいアリエナイ理科ノ教科書」は、好評のために単行本化されている人気連載だ。2015年12月号は「身近な酸・アルカリをマスターする」という内容だ。「硫酸」は希硫酸を煮詰めれば生成できる。車載バッテリー(鉛蓄電池)をひっくりかえすと流れ出てくるのが希硫酸だ。硫酸は「不揮発酸」であり、たとえ加熱しても硫酸は蒸発せずに濃縮していく。塩酸は「揮発酸」なので、加熱しても濃縮はできない。もしも濃い塩酸を作りたければ……。ほかにも硝酸・フッ酸・水酸化ナトリウム・水酸化リチウムなどの生成方法が掲載されている。ヤバイ。

「北尾トロの超越大陸」も単行本化されている人気連載だ。以前、当コラム『自作のプロペラ機で空を飛ぶ「ホームビルダー」という趣味がある』でも紹介した。北尾トロさんが、日本のけん玉における最高段位「6段」にのぼりつめた22歳の若者を取材している。いま世界的なけん玉ブームであり、専業プロでも生きていけないことはないが、どうするべきだろうかと卒業後の進路について悩んでいるらしい。

「コンビニの歩き方」は、カラー55ページにわたって大手コンビニの人気商品ランキングやポイントカードの裏ワザなどを特集している。ここだけ日経トレンディの誌面かと見まごうほどの充実ぶりだ。ファミリーマートのおつまみコーナーで買える『うずら燻製』がうまい、という結論には大いに賛同したい。タテ長パッケージの中間あたりに「もうひとつの切れ目」があるので、食べるときに7個入りの玉子が取り出しやすいというデザインの工夫に好感がもてる。

アマチュア無線界隈は、業務無線のデジタル化の影響が大きいという。花形である「警察無線」は高度な暗号化によって過激派や無線マニアたちですら簡単には傍受できないのが現状だ。2016年6月からは「消防無線」のデジタル変調方式への完全移行が決定している。つまり無線マニアたちは、劇パト2における南雲しのぶ警部と交通機動隊員のようなやりとりを傍受できなくなるわけだ。さみしくなる。

無線マニアによる合法的な周波数探索や無線傍受は、考えようによっては「国家権力を監視する役割」を果たしていると思う。わたしはこれからも、なるべく『ラジオライフ』の最新号をチェックしようと思っている。

(文:忌川タツヤ)

【参考リンク】
自作のプロペラ機で空を飛ぶ「ホームビルダー」という趣味がある(http://fum2.jp/4450/)

ラジオライフ 2015年 12月号

著者:三才ブックス
出版社:三才ブックス
第1特集は「コンビニの歩き方 最新版」。コンビニ別に得する活用法を徹底解説! 
第2特集は、マイナンバーと個人情報漏洩の危険性を検証する「ネット探偵」。
第3特集は、「中華ハンディ機の合法運用ガイド」。特別企画「iOS9対応裏プリ大全」も要チェック。アブなくて役立つ(!?)連載も多数アリ。

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