ハウツーが満載のコラム
文字サイズを変更する

10年ぶりに『ひぐらしのなく頃に』をプレイしてみた結果↓↓↓

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

『ひぐらしのなく頃に』というホラー作品がある。原作はアマチュア制作のパソコンゲームでありながら、のちにコミック化、アニメ化、プレイステーション等に移植されて、実写映画化までも果たした超弩級タイトルだ。

アンソロジーコミックを読んで当時の熱狂を思いだした

10周年を記念した刊行された『ひぐらしのなく頃に わんだふる』(ハノカゲ、綾見ちは・著/アース・スター エンターテイメント・刊)を読んだ。もうそんなに年月が経過したのかと驚くとともに、デフォルメされた登場人物たちの楽しそうな様子をなつかしく眺めていると、あのときの熱狂がにわかによみがえってきた。

わたしは、原作であるPC版はもちろんのこと、コンシューマー移植されたPS2版やアニメ版なども楽しんでおり、『ひぐらしのなく頃に』をしゃぶりつくして楽しんだクチだ。さすがに飽きたので、すっかり遠ざかっていたが、このたびアンソロジーコミックに刺激されて、インターネット上で配布されている第1話『ひぐらしのなく頃に 鬼隠し編』をダウンロードしてさっそくプレイしてみた。

公式サイトから無料で1話まるごとを遊べる。(所有していたゲームディスク本体は、年月を経て、どこかへ散逸した)

【参考リンク】
Windows版 ひぐらしのなく頃に 鬼隠し編
https://07th-expansion.net/Soft/Taiken.htm

iOS版 ひぐらしのなく頃に 鬼隠し編
https://itunes.apple.com/jp/app/higurashinonaku-qingni-jp/id366267383?mt=8

Android版 ひぐらしのなく頃に 鬼隠し編
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.seams.whentheycry.ep1&hl=ja

 

ひぐらしをふたたびプレイした感想

第1話にあたる「鬼隠し編」を6時間ほどで読み終えた。年に1度の伝統行事「綿流し」がおこなわれた夜を境にして、転校してきたばかりの主人公が、村人である同級生たちのおそろしい一面を知ることにより孤立化して、徐々に追いつめられていき、ついに結末では「すさまじい惨劇」の犠牲者になってしまう。

非業の死をとげた主人公が残した手紙には、こう書かれていた。

これを読んだあなた。真相を暴いてください。
それだけが 私の望みです。

(『ひぐらしのなく頃に 鬼隠し編』から引用)

まさに「読者への挑戦状」であり、第1話にあたる「鬼隠し編」には真相に至るためのヒントがたくさん詰まっている。

ちなみに『ひぐらしのなく頃に』というノベルゲームは、作者によって「正解率1%」と宣言されている作品だ。第1話だけの情報で謎解きをするのは困難だが、再プレイ後、全8話のプロローグにあたる「鬼隠し編」に真相をほのめかす出来事や記述がしっかりと配置されていることに、あらためて驚かされた。

たとえば「鬼隠し編」冒頭において、主人公は白昼のまどろみのなかで「誰かが謝っている声」を聴く。これはまさに真相の一部そのものであり、かなり大胆なヒント提示だったことがわかる。ほかにも、「鬼隠し編」前半のかなりはやい段階では、真犯人がなにくわぬ顔をして主人公の視界に入っている。解答にあたる第7話や第8話をクリアしたプレイヤーならば「そいつが黒幕だ! 逃げてー!」とモニタ画面に向かって思わずさけんでしまうだろう。

竜騎士07は、稀代のストーリーテラー

『ひぐらしのなく頃に』の作者は、竜騎士07というペンネームの男性だ。当時、公務員として働きながら、年2回のコミックマーケットで『ひぐらし』を1話ずつ発表していった。商業でも専業でもないアマチュア活動でありながら、累計で数十万枚の売り上げを達成している。

2作目である『うみねこのなく頃に』は、「孤島の館」と「密室殺人」というミステリの王道を扱っていると思いきや、フタをあけてみれば、ファンタジーとロジックという相反するものを何層にも重ねあわせた、まさに誰もみたことがないような壮大で純度の高いエンターテインメントに仕上がっている。

熱狂的なファン視点にもとづいた私見を述べさせてもらえるならば、なく頃にシリーズの作者である竜騎士07は、21世紀を代表するストーリーテラーだと思う。そうそうたる日本の物語作家たちを差し置いて、竜騎士07のことを、あえて「日本のスティーヴン・キング」と呼びたいッッッ!

今後「なく頃に」ムーブメントを継承する作品は現れるのか?

多くの人たちを楽しませてくれた『ひぐらし』は2006年に完結して、前作のクオリティを凌駕した『うみねこ』は2008年に完結した。以降、竜騎士07は数作品を発表しているものの、かれ本来の持ち味とはかけ離れたものばかりで、わたしを満足させるものではなかった。

ここ数年間におけるわたしの最大の関心事は、ポスト「なく頃にシリーズ」の登場だった。わたしの観測範囲では『ひぐらし』や『うみねこ』と同等のムーブメントはまだ現れていない。だが期待させてくれるものは、いくつもあった。参考までに列挙してみたい。

・『ひまわり』(ぶらんくのーと)

ムーブメントになりそうでならなかったが、ともかく良作だった。

・『収穫の十二月』(talestune)

どちらかといえば『月姫』ムーブメントの派生かもしれない。伝奇サウンドノベルとして屈指の世界観と独自の存在感がある。同人活動からはじまり、コミカライズ版やスマホアプリやニンテンドー3DSアプリなども発売中。新作の発表をひかえており、まだまだ潜在力を秘めている。

・『EDEN-最終戦争少女伝説-』(LAST WHITE)

未完。作者が2012年ごろから音信不通であり、開発は停止している。当時、同人サウンドノベルのなかでも特にオリジナリティが際立っていた。シナリオ・ビジュアル・BGMすべてを1人ですべて制作しているのが特徴であり、作品自体のクオリティはもちろん、東方ProjectのZUNや竜騎士07などの同人ゲーム界隈のスーパースターたちを彷彿とさせるものがあり、作者の「爪白ニワトリ」はクリエイターとしても強いカリスマ性をそなえていた。

・『ChuSingura46+1』(れいんどっぐ)

忠臣蔵の四十七士いわゆる赤穂浪士を「女性化」した、吉良上野介邸討ち入り事件が題材のサウンドノベルだ。たんなるエロゲーかと思いきや、しっかりと時代考証がおこなわれており、大胆な解釈によって画期的な「忠臣蔵」リメイクを果たしている。わたしは第1話をプレイしたとき、

ポスト「なく頃に」キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

などと思わず口に出してしまったほど、この『ChuSingura46+1』には大いに感銘を受けた。作者である「葉山こよーて」は、竜騎士07に匹敵するほどの大風呂敷を広げる能力、つまり構想力や大局観がある。きっといつか「やってくれるのではないか」と、わたしがひそかに期待しているシナリオライターのひとりだ。

・『NOeSIS』(クラシックショコラ)

近年ではいちばん「ポスト竜騎士07」たりうる可能性を秘めているかもしれない。無料プレイのスマホアプリとして数十万ダウンロードの実績があり、商業出版社からノベライズ版やコミカライズ版が続々と発売されている。作者のインタビューを読むかぎり、ゼロ年代の美少女ゲームや「なく頃にシリーズ」が灯したムーブメントの炎を絶やさずに盛り上げていきたいという勇ましい気概を感じさせる。『NOeSIS』シリーズはこれから続編が出るようなので、いまは未知数ながらも完結したのちに評価が定まるのではないだろうか。

【参考リンク】
cutlass「これからのノベルゲーム文化を自分が背負わないで誰が背負うんだ!」(代表作:『NOeSIS~嘘を吐いた記憶の物語~』) - ニコニコチャンネル:ゲーム
http://ch.nicovideo.jp/indies-game/blomaga/ar356279

従来のノベルゲーム界隈に期待しつつも……わたしの感触としては、ポスト竜騎士07・なく頃にムーブメントは、ホラーやミステリの名作を輩出しているツクール(自作ゲーム)界隈から登場するような気がしている。ダークホースとしては、女性向けである乙女ゲーム界隈から……ということもあり得る。

いずれにせよ、わたしのような凡庸なプレーヤの観測範囲はたかが知れている。2000年代後半から2010年代に発表されたアマチュア製の同人サウンドノベルや同人ノベルゲーム、あるいはツクール製ゲームのなかで、みなさんが感嘆した作品があったら、ぜひとも教えていただけないだろうか。

(文:忌川タツヤ)

アース・スターコミックス ひぐらしのなく頃に わんだふる

著者:ハノカゲ(著)
出版社:アース・スターコミックス
祝!ひぐらし10周年で豪華作家大集合!!
恐怖と笑いが混同する新しい雛見沢へようこそ?
表紙はハノカゲが担当。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事