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僕はリアルな「路地裏の少年」だった

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僕は路地裏が好きで、よく写真を撮っている。特に繁華街や下町の路地裏が好きだ。

表通りの喧騒と隣合わせの場所なのに、とても静かな場所。そういう場所に懐かしさを感じているのかもしれない。しかし、僕が路地裏好きなのには、決定的な理由があるのだ。

路地裏生まれ路地裏育ち

僕は、東京都葛飾区、いわゆる下町で生まれ育った。僕が生まれた家は、染色工場から色鮮やかな廃水が流れ込むドブ川の近くにある路地裏の一番奥。いわゆるどん詰まりだ。

その路地裏には5軒の家があった。ドブ川沿いのクルマが1台通れるくらいの道から入って、左に曲がって右に曲がって、行き止まりの左側が僕の家だ。

隣の家との隙間はほぼゼロ。向かいの家とは額をくっつけあっているかのような感じで、玄関を開け放していれば、お互いの居間が丸見えという長屋のような感じ。反対側はアパートが建っているため、あまり陽が当たらない家だった。

僕が生まれた当時は2部屋しかない平屋だったが、その後建て替えて2階建てに。あんな細い路地裏のどん詰まりで、よく家を建て替えたものだと思う。大工さん、偉い。

僕は中学を卒業するまで、路地裏の少年だった。だから、路地裏を見ると郷愁というか、懐かしさというか、物悲しさ(別に当時悲しいことがあったわけではないが……)みたいなものを感じてしまい、ついつい写真に撮ったり、歩いてみたりしてしまうのだ。

横丁で酒を飲む

僕は、横丁で酒を飲むのが好きだ。

新宿、新橋、上野、池袋、北千住……。ちょっとした路地に赤ちょうちんが並んでいる光景を見ると、うれしくなってしまう。

決してきれいな店ではないし、静かでもない。でも、そういうところでウーロンハイを飲みながら串焼きや煮込みを食べていると、なぜか落ち着くのだ。

逆に、小綺麗なバーなどは落ち着かない。自分の居場所ではないと感じてしまうのだろう。

路地裏生まれ路地裏育ちの僕は、雑多な場所が落ち着くのだ。

路地裏の写真は「生活」そのもの

そんな路地裏好きの僕にとって、路地裏の写真集というのはごちそうだ。

東京路地裏横丁』(山口昌弘・著/CCCメディアハウス・刊)は、東京の路地裏や横丁の景観を収めた一冊。モノクロ主体の写真と短歌が並ぶ。

どの横丁も、飲み屋があって人がいる。ただそれだけなのだが「そこに人が生きている」という感じがする。

そして、店の裏側の路地には「生活」がある。人の目にあまり触れることはない場所だからこそ、「リアルな生活」が感じられる。

大量のゴミ袋からは日常のサイクルが、自転車からは人間の息遣いが、店から流れ出る煙からは歴史が。路地裏の写真は、いつまで見ていても飽きない。

最近は仕事が忙しく、あまり写真を撮ってない。今度カメラを持って、あの路地裏に行ってみよう。

陽の当たらないあの路地裏に。

(文:三浦一紀)

東京路地裏横丁

著者:山本昌弘
出版社:CCCメディアハウス
昭和の面影を色濃く残す東京の路地裏・横丁の懐かしい景観を封じ込めた1冊。 新宿ゴールデン街、渋谷のんべい横丁、吉祥寺ハーモニカ横丁、武蔵小山駅前路地裏飲食街、立石呑んべ横丁……おもに戦後生まれたとされる東京の「路地裏」と呼ばれる狭い通路や横丁の飲み屋街。 ノスタルジーを感じずにはいられないこれら路地裏の風景を、約200点ものモノクロ写真と情感あふれる短歌で構成した永久保存版。

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