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日本人は無類の銅像好き

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筆者は取材で地方をたびたび訪れるが、地方都市の駅前にはかなりの高確率で存在するものがある。偉人の銅像だ。どんな街にも一体は銅像がある。地元の人であればあるほど、まわりに溶け込んでしまっているためか、意識することは少ないかもしれない。しかし、調べてみると、銅像をたずねて全国行脚をしている“銅像マニア”もいるようだ。 

マニアックな人気がある銅像

銅像界のスーパースターといえば、上野公園の西郷隆盛像や、高知県桂浜の坂本龍馬像などだろう。これらは銅像そのものが観光名所化している。

銅像は意外にマニアックな人気があるようだ。というのも、モチーフになっている人物が実に幅広いためだろう。戦功をあげた武将や、総理大臣になった地元出身の政治家など、誰もが知る歴史的有名人だけとは限らない。地元の人でも知らないような人まで、ありとあらゆる人物が銅像になっている。

銅像はなにぶん目立つ場所にあるので、造形はすこぶる重要だ。上野公園の西郷隆盛像は、実はまったく似ていないらしい(西郷は写真嫌いのため、写真を残さなかったと言われる)のだが、西郷といえば着物に犬を連れているというイメージを多くの日本人が持っている。銅像によって歴史上の人物のイメージが決まることもままあるのだ。

銅像が立っている場所にも理由がある

存在が気になり始めたので、『日本の心は銅像にあった』(丸岡慎弥・著/扶桑社・刊)を読んでみた。銅像鑑賞の第一歩として、まずは「なぜその場所に立っているのか?」と考えてみるのが重要だという。銅像を建立する費用は決して安くはない。そのため、建立に関わった個人や団体はめちゃくちゃ気合を入れるはずなのだ。しぐさや向いている方向などなど、細部に至るまで建立した人の思いが込められている。

たとえば、皇居にある楠木正成の銅像を見てみよう。勇ましくてかっこいいのだが、武士なのになぜ皇居と関連があるのだろうか。それは、正成が後醍醐天皇に忠誠を生涯尽くした“天皇を守る忠義の士”であるため、皇居が建立の地として相応しかったというわけだ。

本著によれば、日本の歴史は銅像を通じて読み解いていくことができるという。確かに、歴史上の主要な人物の多くが銅像になっている。銅像巡りをするだけで、だいぶお勉強ができてしまいそうだ。

日本人は無類の銅像好き

現在は銅像が地域のアイディンティティーを示す、重要な存在になっている。たとえば武田信玄の像は、甲府駅と塩山駅前の目立つ場所にどっしりと置かれている。

山梨県の人は相当に武田信玄ラブのようだ。というか、いくつも同じ人物の銅像を造りまくってしまうことからも、とにかく日本人は銅像が好きなのだということがわかる。

銅像をきっかけに、こんなユニークな研究も生まれている。2003年のイグ・ノーベル化学賞の受賞理由となった「ハトに嫌われた銅像の化学的考察」は、金沢兼六園内にある日本武尊の銅像に鳩が寄り付かないことをヒントに、カラス除けに効果のある合金を開発したというものだ。科学研究の対象になるほど、日本人と銅像の繋がりは深い。

(文:元城健)

日本の心は銅像にあった

著者:丸岡慎弥
出版社:扶桑社
銅像の場所、しぐさ、姿などから見えてくる偉人達のエピソード!銅像になった偉人達25名を収録。 古代・中世編 ◆紫式部―日本人として初めて世界の偉人に選定された文豪 ◆楠木正成―敗戦必至で出陣した忠臣が最後に息子に託したこと……ほか 戦国編 ◆加藤清正―清正が築いた天下の名城は明治時代に難攻不落を証明した ◆長宗我部元親―姫若子から鬼若子へ! 初陣で魅せた本当の強さ……ほか 近世編 ◆真田幸村―徳川家康の脳裏に自害をよぎらせた、徹底抗戦! ◆二宮金次郎―東京駅前で見つけた! 経済と道徳の調和を目指した巨匠……ほか 近現代編 ◆勝海舟―百万人の民を救った江戸城無血開城という決断 ◆大久保利通―近代日本の礎を作った信念の政治家……ほか 海外編 ◆八田與一―台湾人は、戦後の反日の雰囲気でなぜ八田の銅像を守ったのか ◆遠山正瑛―中国政府が建てた日本人の銅像……ほか 銅像が教えてくれる大切なこと。

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