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結局“安保法案”って必要なの? 不要なの?

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いわゆる「安保法案(「国際平和支援法案」と10の法律改正案を一つにまとめた「平和安全法制整備法案」)」が2015年9月19日未明、参議院本会議で可決され、成立した。それまでテレビ、新聞、ネットなど各メディアで喧々諤々のやり取りがなされていたが、可決後約1か月経って世間の興味を失ったのか、関連する情報を目にする機会は激減した。

しかしこの問題、論点が非常に多岐にわたり、国民の大半がその内容をしっかりと理解していたとはいい難い。また、ほとんどの論点において、賛成派と反対派の意見がことごとくすれ違っていたような印象を受けた。そこでまずは、両派の各論点を非常に簡単かつ乱暴だが下に整理してみた。

反対派
⇔賛成派

戦争反対故反対派「戦争に巻き込まれる!」
⇔戦争反対故賛成派「戦争を防ぐために必要」

徴兵反対派「戦争行きたくない!」
⇔徴兵はない派「現代の戦争で徴兵は非現実的」

個別的自衛権派「集団的自衛権は違憲!」
⇔集団的自衛権派「集団的自衛権は必要」

護憲派「安保法案は違憲!」
⇔解釈改憲派(1)「そもそも自衛隊も違憲」

立憲主義派「まずは改憲から!」
⇔解釈改憲派(2)「喫緊の脅威が迫っている」

親中派「中国と仲良くしよう!」
⇔反中派「中国の脅威に備えよう」

反米派「アメリカのいいなりになるな!」
⇔親米派「日米同盟をより強固に」

頼米派「アメリカが守ってくれる!」
⇔非頼米派「いつまでもアメリカに頼れない」

上記は相互に複雑に絡み合った問題でもあり、それぞれがそれぞれにもっともでもある。これらを包括的にここで説明するには紙幅も筆者の理解も説明能力も足りないので割愛させていただくが、それ以外にも「検討時間が不十分」⇔「もう十分議論した」とか、「民意に沿ってない」⇔「選挙公約に掲げていた」など、とにかく水掛け論にしかならない論点ばかりで多くの議論は空回りしているように見えた。

そこで、なぜいま安保法案が必要なのか(あるいは必要じゃないのか)を考えるために、まずは国防の基礎知識を得るために手に取ってもらいたいのが、ここで紹介する『マンガで読む国防入門』(石破茂、原望・著/インプレス・刊)だ。

本書は、現在は地方創生担当大臣だが、防衛庁長官、防衛大臣と歴任し、“軍事オタク”とも称される石破茂氏が2005年に著した『国防』をもとに、新たに構成し直しマンガ化されたものだ。マンガ家の原望氏が、『国防』の内容をマンガ化しつつ、『国防』を読んだ感想や疑問に対して石破氏が答えていくというつくりになっている。

日本の戦闘機には敵地攻撃能力がない!?

本書では、自衛隊の持つ能力やミサイル迎撃システムなどについて解説すると同時に、マスコミや国民の理解の低さにも触れている。たとえば、自衛隊の主力戦闘機F-15には、敵地攻撃能力がほとんどないといい、仮に敵基地を攻撃するための能力を持たせようとすると、そのための訓練やシステムの導入、運用には10年はかかるという。また、射程500km以上の弾道ミサイルと射程100km程度の地対艦ミサイルの区別が日本人のほとんどは区別できていないともいい、弾道ミサイルは、人工衛星のように発射後エンジンを切り離し慣性で飛行するため、その命中精度は低くなるが、そのような事実を多くの日本人は知らない。

 防衛について実際考える時にはこういう知識が必要なはずです。ところがそれをまったく抜きにしたまま議論が進んでいる。それが今の日本の現実です(『マンガで読む国防入門』より引用)

実際、先般の安保法案の審議においても、ある議員が「弾道ミサイルで原発を狙われたらどうするんですか」という内容の質疑をしていたが、弾道ミサイルの命中精度を知識として持っていれば、このような質問自体が意味をなさないことに気が付くはずだ。

日本の国益を第一に考えることが国際貢献にもつながる

本書は、日本を取り巻く地政学上の問題を取り上げた第1章「今そこにある危機」、2001年9月11日の同時多発テロを受け、これまでやこれからのテロについて書いた第2章「テロを防ぐには」、日本における中東の重要性と日米同盟の意味を説く第3章「イラク戦争とは何だったのか」からなっている。原案となった本の出版が2005年、マンガ化されたのが2007年ということで、尖閣諸島や竹島などがまだ社会問題として顕在化しておらず、第1章では北朝鮮が“仮想敵国”として描かれているが、安保問題や集団的自衛権について基本的な知識を得るための教科書としては十分だろう。

実は私は国際貢献…という言葉があまり好きではありません。それはどこか他人事みたいな響きがあるからですが…自衛隊を派遣するときには やはり日本の国益が第一に考えられるべきだと思います (『マンガで読む国防入門』より引用)

と、本書中で石破は述べている。そう考えると、対中韓・北朝鮮問題、テロリスト対策はもちろん、ほとんどの石油を中東からの輸入に頼っている日本にとって、中東情勢なども“対岸の火事”ではないことが理解できるはずだ。

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。(『日本国憲法 前文』より引用、下線部筆者)

日本の国益を第一に考えることが、実は意外と“国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ”(『日本国憲法 前文』より引用)とする憲法前文の理念の実現にも通じるのかもしれない。いずれにせよ、日本が平和的な国家としてこれからも存続し続けるためには、国防や安全保障の問題とどう対峙していくべきかを国民一人一人が考えていかなければならない時代になったといえるだろう。

(文・芥川順哉)

マンガで読む国防入門

著者:石破茂(著) 原望(著)
出版社:インプレス
憲法第9条とは? 日米安保とは? 集団的自衛権とは? ほんの少しの興味からでも、まずはこのマンガで触れてみてください。
<石破茂氏による「はじめに」より>
防衛庁長官退任後の2005年1月、『国防』と題する本を出版しました。 正直な話、このような硬いテーマの本がそうそう売れるとは思っていませんでした。しかしそれから二年弱の間に、この種のものとしては珍しく五万三千部も出て、まだ絶版になることもなく、少しずつ出続けているそうです。 我々政治家は「国民はどうせ安全保障なんかに興味がない」と思いがちですが、実は国民の皆さんのほうが安全保障に対する意識が高いのではないか、我々がそれに向かって発信する意や力に欠けていることこそが問題なのではないかと思うことがあります。 (中略) 今回、その『国防』をマンガにしてみないか、とうお話があったとき、最初はその内容がまったく想像できませんでした。 しかし、本とはまた別の形で、違った層の国民の皆さんに日本の安全保障の現状と問題点をお伝えすることができるのであれば、という想いで、お引き受けさせていただきました。 原望さんという素晴らしい漫画家さんによって、新たな味付けをされたこのマンガ版『国防』が、皆さんの忙しい日常の中で、ほんの少しでも「日本を守ること」を考えるきっかけとなれば、と考えています。

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